《発御直後の渡御行列》
門前人的に一番好きな場面が、発御してから門前十字路までの間です。
〈よいやーさ〉と言う、ゆったりとした曲が囃され、神輿担ぎ人は「♪よいや〜さ〜、よいや〜さ〜♪」と囃子に合わせ、大きな声で唄います。
〈しし〉と言う、神輿を揉む勇壮な曲にはすぐには入らず、〈よいやーさ〉が、じっくり聴かせるように繰り返されます。
担ぎ人は〈しし〉が囃されるのを今か今かと待ち構えていますが、それを焦らすように〈よいやーさ〉が続きます。
〈よいやーさ〉は三つの節から出来ています。
三つ目の節が始まると、囃子方も緊張感が増しますが、簡単には〈しし〉には入りません。
門前人は、このゆったりと続く〈よいやーさ〉と、〈しし〉を待つ担ぎ人のテンションが、どんどん高まってくる門前十字路直前の空気感が大好きなのです。
近づく門前十字路…、
よいやーさ三つ目の節が始まる…、
囃子方も「そろそろか?」
担ぎ人も「いよいよか?」
囃子番は拍子木に手をかけません。
緊張感がまた一段と増します。
門前十字路は目前…
よいやーさ三つ目の節…
「次、入るよ〜!」
囃子番が拍子木を小気味良く一つ打ちます。
囃子方は「はッ!」っと声を合わせ、「ダンダンダン、ダンダンダン、ダン、ダン……」と大胴太鼓が低く強く響きます。
「すっとこどっこい、きたこらさっと!」「よーい、よいやーさっと!」
「あんりゃあ、どうしたい!」「あんりゃあ、どうしたい!」
担ぎ人からは大きな掛け声が上がります。
ゆったりと囃される〈よいやーさ〉
緊張感の充満する神輿担ぎ人と囃子方
満を持して囃される〈しし〉
神輿周りで爆発する興奮
祭り一番のカタルシスを感じる場面です。
[四]へ続く…

2