2019/5/29

ユネスコ世界記憶遺産になった炭鉱労働者を描いた作兵衛さんの絵  ]U格差社会

 ◆ 滅びたものの記憶 (東京新聞【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)

 地球温暖化の張本人として、石炭はすっかり嫌われものになってしまった。かつては「産業のコメ」とされ、近代産業を牽(けん)引した動力源であり、縁の下の力持ちだった。が、いま日本にある炭鉱は北海道の釧路コールマイン一社だけ。社員は三百人ほど。かつてを知るものは感無量である。

 もう一つの世界ともいうべき、暗闇の坑底での労働の姿と働く人びとの生活を描いたのが、山本作兵衛である。一生に描いた絵は二千点とも言われている。
 真っ暗な坑底で働く人びとは、カンテラのかぼそい光を受けているだけなのだが、それでも豪華絢爛(ごうかけんらん)、まばゆい光を放っている。


 最初この絵をみたとき、そこに脈打っている労働者の自信と衿持(きょうじ)にうたれたのだが、いま東京・東中野で上映されているドキュメンタリー映画『作兵衛さんと日本を掘る』(熊谷博子監督)の卓抜なカメラワークとインタビューで、その独自の世界が再現されている。

 国内ではほぼ絶滅した炭鉱労働者の生と死、喜怒哀楽。それは筑豊にいて書き続けてきた上野英信によって記録された。作兵衛さんの絵はユネスコ世界記憶遺産になったのだが、上野さんの記録もそれと並び立つ。
 先日、子息の上野朱(あかし)、写真家本橋成一との三人で上野英信について語る会があった。産業が消え、人びとが去っても記憶は遺(のこ)される、と痛感させられた。(ルポライター)

『東京新聞』(2019年5月28日【本音のコラム】)

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