2020/3/17

組織的に郵便局が行ってきたかんぽ不正営業の経営責任を問う春闘  ]U格差社会
 ◆ ノルマとパワハラが招いたかんぽ不正 (労働情報)
郵政ユニオン副委員長 家門和宏

 「お前は寄生虫だ」と厳しい叱責や、その場で泣き出す女性社員や、それを理由に退職した女性社員もいた。
 昨年12月18日に出された、かんぽ生命保険問題における特別調査委員会の調査報告の中で、営業職場における職場実態が生々しく報告されている。

 ◆ 郵政の信頼が一挙に崩壊

 一昨年4月にNHKの報道番組「クローズアップ現代+」が取り上げたかんぽの不正営業問題。番組に寄せられたのは全国で不正営業を強いられている労働者の切実な声、内部告発であった。
 1871年に郵便事業が創業、1875年郵便貯金、1916年に簡易生命保険事業がはじまり、郵政3事業が国民生活を支える公共事業として、おおよそ150年にわたり営々として築き上げてきた信用・信頼を一挙に崩壊させる今回のかんぽ不正営業問題である。


 一部の報道では、「民営化の不徹底」が今回の事態をひきこ起こしたかのような、論調もあるが、2007年10月1日強行された郵政民営化、分社化の弊害が、郵便局を不正営業に「暴走」させていった要因であることは間違いない。

 12月18日に出された報告では、乗換契約時に不利益がある可能性のある18万3千件の保険契約、15万人を対象に敷いた調査の結果、約4万5千人が契約復元の説明希望があり、約2万6千人に説明がなされたこと。
 そのうち、約1万5千人が復元を希望し、1万4755人の契約が復元されたことが記されている。
 ここに出されている数字は、乗換契約に関してのみの数字であり、満期の再契約や他の契約における、顧客が被った不利益は含まれていない。

 日本郵政の増田社長は、1月31日の記者会見で、約22万件、6万人分の契約について追加調査すると発表した。
 現在、1月1日から3月31日までの3ヵ月間、日本郵便、かんぽ生命は、総務省、金融庁から業務停止命令を受けているが、4月1日までに事態の全容解明は程遠く、業務再開のめどは立っていない。

 ◆ 相継ぐ退職者の実態

 特別報告の中で触れられている、顧客から申告のあった「違反疑い事案」に関与した社員は5797人、かんぽ保険を取り扱う社員全体からすると、年度によるが1・1%から2・4%とまるで極少数の者が行った不正営業、という表現となっている。
 うち、かかわった社員は渉外社員87%、窓口社員13%とほとんどが、渉外社員であるにもかかわらず、かかわった郵便局数、約1800局を全ての郵便局数で割り、全体の9%と表現している。
 渉外社員は、規模の大きな、単独マネジメント局(旧・普通局)にいるわけで、単独マネジメント局内で比率を出さないと実態は見えてこない。

 しかも、前述したとおり、乗換契約にかかるもののみであり、その他22万件の調査はこれからとなっている。
 不正営業を行ってきた社員の中には、すでに退職者が続き、昨年、金融庁が、かかわってきた者の退職を簡単に認めないように、日本郵便、かんぽ生命に要請していたと報道されている。

 ◆ 年寄りを騙すか辞めるか

 顧客に不利益を強いてまで、また、詐欺まがいのウソをついてまで契約をしてきたのか。何が郵便局を暴走させてしまったのか、十分検証することが必要だ。
 職場では、営業成績の低い社員は、低実績者とレッテルを貼られパワハラの横行、定期的に人権をも無視した懲罰研修が繰り返されてきた。

 冬の研修では「低実績者にエアコンはもったいない」と暖房を切られた部屋で研修が行われたり、営業の練習のロールプレイングのセリフを一言一句間違えなく言わないと、繰り返し暗記させられたり、働く者のプライドを失わせる研修が、全国で繰り返されてきた。
 耐え切れず辞めていく社員、病休・休職に追い込まれる社員が増加した。

 一方で、優績者と呼ばれる営業成績の高い社員は、職場でまるで神のように扱われてきた
 給与制度の改定もあり、渉外社員は賃金の12%を拠出して、営業手当とされ、成績に応じて手当を受け取る仕組みが導入された。
 成績が伴わなければ賃下げとなるが、募集成績を上げれば、月80万、中には100万円以上稼ぐ労働者もいた。

 もちろん無茶苦茶な営業もあり、客から苦情が来ても、優績者の問題は会社でもみ消してきたこともある、という。
 このような追い込まれた職場状況の中で、「年寄りを騙すか職場を辞めるか」というような切実な声も出された。
 また、周辺の自治会に「かんぽの強引な勧誘に注意!」と社員の実名入りの回覧が回された、など異常な状況が報告されている。

 ◆ 20春闘で真の改革を

 特別報告がだされ、日本郵便、かんぽ生命の業務停止命令が示された、昨年末、日本郵政・長門社長、日本郵便・横山社長、かんぽ生命・植平社長が辞任を表明、日本郵政・増田社長ら新社長が就任した。
 社長が辞任したから解決する話ではない。

 私たち、郵政ユニオンは、郵便局で働く労働者、労働組合として、今回のかんぽ不正営業問題を正面からとらえ、顧客に不利益を強いてまでも営業成績を追い求める会社の在り方を抜本的に改善しなければならない、と考えている。
 まずは、全容解明と、被害にあわれた方々への謝罪と補償、そして二度と再び繰り返さないための対策、パワハラ、懲罰研修で労働者を追い込んでいった職場を改善しなくてはならない。

 今回の問題は、一部社員が行った不祥事とのレベルではなく、過去の犯罪や事件とは明らかに一線を画す問題であるととらえている。
 組織的に、郵便局が行ってきた不正営業である点である。

 会社の成績とするために乗換時に二重払いをさせる、一定間隔をあけて再契約する、高額の契約を複数結ばせる、様々な営業話法を共有し、不正営業が行われてきた。その多くが、お年寄りに対して行われてきた実態がある。
 まさに、郵便局の信頼の上に行われた不正営業問題であり、経営としての責任が鋭く問われているのである。

 今春闘で、間違っても、かんぽ問題を理由に、賃上げ・一時金の抑制や削減など、あってはならないと考えている。
 郵政ユニオンは、2月7、8日に第8回中央委員会を開催した。
 賃上げ・労働条件改善の闘いと、かんぽ不正営業の経営責任を追及する闘いをむすびつけて、ストライキを構え、20春闘を闘い抜く決意を確認した。

『労働情報』(2020年3月)

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