2006/2/25

学校と地域をむすぶ交流会  
2月18日(土)早稲田奉仕園で行われた「第15回学校と地域をむすぶ交流会」に参加しました。今年のテーマは「ヤスクニ・ひのきみ・愛国心」わたくしは1日目のみ参加でしたが、たいへん充実した、内容の濃いプログラムでした。

パート1
●在韓軍人軍属裁判(通称グングン裁判)を支援する会関東事務局・御園生さん

 韓国人にとって靖国合祀は、戦死した人を戦争賛美者とともに祀り、かつ祖国を滅ぼした先兵とともに合祀するもので二重の屈辱である。遺族は、納得がいかないと靖国神社に合祀取り消しを求めたが、「神となると一座に祀られるので、部分的に取り下げることはできない」という理由で拒否された。
 そこで2001年6月252人の原告で日本政府に対し戦後補償裁判を起こした(その後シベリア抑留関係者162人が2003年3月第二次提訴)。「民族的人格権の侵害」を争点にした裁判はこの2月15日に結審し5月25日に判決が出る予定である。
 一方、昨年は戦後60年(解放60年)だったので「証言を映像にして残したい」という思いから日韓共同制作で、ドキュメタリー「あんにょん・サヨナラ」を作った。
 映画は昨年10月完成し、釜山国際映画祭、ソウル独立映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭で高い評価を受け、現在各地で上映中。また西野瑠美子さんなどが推薦しているほか野中広務・元自民党幹事長も推薦している。

●パネルディスカッション 
 李煕子(イ・ヒジャ)さんは「在韓軍人軍属裁判」の原告で、日韓共同ドキュメタリー「あんにょん・サヨナラ」の主人公。
 生後13ヵ月の1944年2月のときに軍属として召集された父と離別。3人の子育てを終えた1989年に行方不明の父の記録探しを始めた。92年に戦病死を確認したが詳しい状況を知りたかったので探索していたところ、日韓両政府とも家族に死亡通知も行わないなか、1959年4月靖国神社に合祀された事実を97年に知った。
 「遺族に死亡通知も行わずに勝手に靖国に合祀するのはあまりにもひどい、許せない」という憤りから運動を始めた。
 来日して靖国に行くと、「民族革新会議」(右翼団体)がピケを張り「汚い朝鮮人は入るな」と、合祀された遺族なのに罵声を浴びせられ、中に入れないという体験もした。いまは韓国でも7つの訴訟を提訴している。
 「かつてはデモをする学生をみて、なぜ勉強しないのだろうと思うような政治に無関心な普通の主婦だった。それが父の記録探しをしているうちに、靖国合祀への憤りがわたしを運動家にした」
 「この15年韓国は(軍事体制から)民主化し、一方日本は右傾化した」
という李さんの言葉が印象的だった。

 大岩さんは教育塔を考える会のメンバー。教育塔とは大阪城公園にそびえる高さ30mのコンクリートの塔。1934年の室戸台風で学校関係でも多くの犠牲者を出したことから帝国教育会が36年に建立したもので、側面に「教育勅語奉読」と「殉職賛美」のレリーフがあり「教育の靖国」とも呼ばれている。
戦後、管理が日教組に移ったが、いまも教育勅語発布記念日の10月30日に塔の前で教育祭を実施している。
 これに対しレリーフ撤去、教育祭の10月30日実施中止を日教組に求める「教育塔を考える会」が1986年に発足した。
 さて2004年8月、「教育塔を考える会」の初代代表で大阪教組・副執行委員長でもあった森明啓教諭はカヌー転覆事故で亡くなった。遺族の同意も得ず、森教諭の所属単組・大阪高教組が合葬に反対するなか10月に合葬され、会ではいまも「合葬取り消し」を要求している。

 土方美雄・小泉靖国参拝違憲訴訟の会・東京
 首相自身が憲法を踏みにじっているということで、全国各地で訴訟が起きている。ただし具体的には損害賠償を求める国賠訴訟をいう形でしか提訴する方法がない。
 その結果、判決文のなかに「首相参拝は違憲」という文言があっても、賠償そのものは却下され敗訴になってしまう。こういう厳しい状況だが裁判は最高裁まで闘う。裁判は裁判として、世間の反対運動を盛り上げることが求められている。

☆英霊の慰霊顕彰を目的にするヤスクニは、戦前の軍国主義や皇国のシンボルである。そして付属施設である軍事博物館・遊就館は、教育基本法改悪後の教育の姿を具体的に見せてくれる。
 こういう意味で現在の日本人にとって重要だが、旧植民地の人をいまも苦しめる存在であることを肉声で聞けた。
 中国や韓国政府が小泉のヤスクニ参拝を非難するのも十分理解できる。


パート2 各地からの報告
 福岡・大阪・愛知の状況のほか、九段中・増田さん、八王子・根津さん、大泉養護・渡辺さん、七生養護・河原井さんから報告があった。
 増田さんからは、研修センターで与えられる不当な課題の実例について説明があった。教育内容そのものを問題にし、しかも事実と異なることの説明を求めたり、戦争の加害者・被害者をはっきりさせる授業に疑問を呈する、現行学習指導要領にも反する課題を、毎日のように求められているとの報告だった。
 根津さんからは、今後も卒入学式で立たない決意をしているが、停職・免職の日を座して待つのではなく、「停職・免職にするな」という署名活動を始めることにした。ついては第一次締め切りを2月末に設定するので協力をお願いしたい、との要請があった。

パート3 広田照幸・東大大学院教育学研究科教授(教育社会学)へのインタビュー
 広田さんは『〈愛国心〉のゆくえ』世織書房 (2005.9.1発刊)の著者である。
略歴:1959年、広島県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。南山大学助教授などを経て、東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は、教育社会学・社会史。著書に、『陸軍将校の教育社会史』(世織書房、サントリー学芸賞受賞)などがある 
●公対私の境界線の変容
 戦後の「公対私」の論点は「過剰な国家権力の私への介入をいかに阻止するか」にあった。ところが近年は、幼児虐待や失業への対策に見られるように、公と私の境界があいまいになり、私の濫用が問題視され、公が私にもっと介入すべきだという論点に変容しつつある。
 ことに進展するグローバリゼーションのなかで、正義を実現する公権力への期待が高まり公の再構築が主張されている。
 こうしたなか教育基本法改正論者は「国を愛する心」や「日本人であることの自覚」など、国民としての同質感や帰属意識の強化という「一つの解答」を用意している。
 これに対抗するときに、グローバリゼーションにより変化する社会を視野に入れず、ただ「復古的」に「抵抗」しても、ビジョンがなく勝ち目は薄い。
このように客観情勢ははかなり厳しい。
●強制により目的を達成できるのか
 「愛国心」教育論者は「あることを教えれば一律に身につく」という平板なモデルに依っているように思える。
 しかし実際には、愛国心教育を行えば、確かに「穏健なナショナリズムを内面化」する生徒も一定数生まれるだろうが、大多数は「儀礼的に同調」するに過ぎず、ある部分は反発・抵抗」し、またある部分は学校でも教えているのだからと「過剰に内面化」し、たとえば右翼テロを引き起こす生徒を育てかねない、つまり生徒の受け止め方はさまざまになるだろう。
●旗・歌を支持する人としない人との分断
 また日の丸・君が代の強制は教員にとって、踏み絵となりターゲットをあぶりだす結果を生む。少数の抵抗者は犠牲となったり排除され、その他の多くの教員は「長いものには巻かれろ」「どうでもいい」と考える無気力な層となり、少数のものは萎縮する。
 これは長期的に考えると、多様な価値観の存在こそ社会の自己革新力を生むという意味での、よい教育効果は生まないし、また優れた新任教員の調達にも失敗する結果となるだろう。
●グローバル化へのオルタナティブなモデル
 ただ、現在支配的なグローバリゼーションへの対応は新自由主義と新保守主義だが、いずれも一国経済体制を続けて覇権を握ろうという戦略である。この戦略に基づく教育をしていると、数十年先に東アジア共同体という横並びの共同体が実現したときには、仲間はずれになり「嫌われ者」になる方向に行きかねない。
 「国への愛着心」の23カ国調査では、移民が多いアメリカやイギリスは19位、22位と下位にあるので「国旗」への忠誠を強化するのは意味がある。しかし日本は2位で、すでに愛着心も一体感もかなり高い。こういう社会でさらに愛着心を高めると、自国中心主義を高め、逆に「足を引っ張る」結果にもなりかねない。
 これに対し、新自由主義や保護主義とは別のモデルもありうる。
たとえば、人権と責任の共有を中心原理とするリベラル国際主義や自治型コミュニティを媒介に人民が統治するラディカル派などである。
 いまはまだ確たるヴィジョンがあるとはいえず、しばらく後退戦を余儀なくされるだろうが、運動や研究の試行錯誤が必要である。

☆昨年12月に星陵会館で聞いた金子勝慶応大学教授の「こういう状況の変化のなかで石原の暴走をくい止めるには、ただ反対するだけだったり、旧来型の議論をするだけでは『狭い部屋で、なぐられっぱなし』になる結果しか生まない。相手より一段高い立場に立って議論すべきである。メディア・リテラシーを身につけ、インターネットを利用し海外のすぐれたメディアの情報を集めて新しい社会のイメージを築くことが望まれる」という講演を思い起こさせる内容でした。
☆広田さんが、国立のピースリボン裁判に、この2月に出した意見書では
1 職務専念義務違反の行動というが、この教師は「卒業していく生徒への教員としてのメッセージを伝えたい」と考えており、むしろ職務の一環である。
2 教員には創意工夫する裁量権がある。このメッセージは子どもたちの動揺を鎮める効果をねらったものであり教育的働きかけを試みたものである。
3 校長は卒業式当日には、警告も取り外しの指示もしていない。5月になって聞取り調査をしている。後日処分をしたのでは、教育現場の存立基盤に深刻な影響を与える。
という論法をとったとのことです。
状況やケースにより、論法は変わってくるとのことでした。


練馬YF

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