当ブログの運営者は工藤英勝です 近代仏教史家で、とくに近代仏教と東アジアとの関係論に関心があります このブログではとくに朝鮮と日本宗教にかかわる問題とくに植民地布教についての資料とデータを提供いたします 大きな歴史認識や歴史解釈ではなく、諸事象と人間がどう動いていたのかを解析していきたいと思います 資料やデータにかかわる具体的なお尋ねには回答いたします

2018/11/3  22:30

決定版「人権標語」  差別と人権

決定版「人権標語」


毎年12月初旬は「人権週間」です

今年もポスターやパンフレットに人権標語が載ることでしょう

一月早いですが、簡明素朴で親しまれてきた決定版「人権標語」を紹介しましょう


自分がしてほしくないことは
他者にもしてはいけない



作者はあの『寛容論』で有名なヴォルテールVoltaireです
フランスの言論人・哲学者で近代人権思想の提唱者のひとりです

これ以上の適任者はいません
あまりに簡単なので標語としていかがかと疑う人もいるかもしれません

人権(human rights)思想のエッセンスがつまった東洋思想にも広がりをもつ優れものです!
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2018/11/1  5:00

「自由」 の再定義に向けて  差別と人権

自由 freedom,liberty の再定義に向けて

特別公開論文「人権思想へのカタバシス」を書いていて、「1.欠陥理論としての人権思想」の中でも若干ふれておいたが、人権思想の十八番である「自由」という概念とそこから派生したさまざまな社会的観念じたいが問題なのではないかと思いつめるようになった。

人権思想の中核をなす「自由」に疑いの目を向けるとは、たいへん不謹慎なことではあるが、目の前の社会現象を説明も説得もできない自分の理論的白痴さにいささか辟易してきたというのが正直なところである。

いわゆる在日外国人(それも東アジア)らにたいする身の毛のよだつようなヘイトスピーチ hate speech ヘイトクライム hate crime を報道を通して見聞するにつけ、なんとも嫌な時代になったのだと失望するが、それにつけてもヘイトスピーチに嬉々として参加している彼ら彼女らに向けた有効な説得もできない自分にも嫌気が指している。

しかし、発想を逆転させて、次のような否定しがたい思念が湧き起ってきた。

「もしかしたら、彼女ら彼らは、自由を謳歌し満喫しているのかもしれない!」

という突拍子もない考えだ。

もっともこのような臆見にたいしては、巷間ではすでに、

「人を誹謗し差別する自由は存在しない! 存在させてはいけない! 法規制に値する!」

という定番の模範解答が用意されているのであるが、これじたいひとつのトートロジー(悪循環)や自己欺瞞の域を出でないのではないかと疑いの眼を向けるようになった。

そもそも、ヘイトスピーチに嬉々として興ずる(ただし、彼ら彼女らは「ヘイトスピーチ」を自認はしていない)人々は、自分たちの言動を誹謗中傷の差別言動とは同定せず、自称左翼らが金科玉条としている「思想信条の自由」「表現の自由」「言論の自由」と何が違うのか? と反論するであろう。

左翼流「自由」が大嫌いの、彼女ら彼らが対抗言説の要として持ち出したのは、なんと同じ「自由」の観念なのだ。たしかに「自由」という概念じたいには、制限・留保条件は附帯されていないから、相手が嫌がる言動を行使する「自由」は原則禁止されていない。彼ら彼女らが採った戦略は、左翼らが十八番としてきたイデオロギーを逆手にとって、対抗言説をアッピールするということであった。

ヘイトスピーチとされるデモをする人々も、それに抗議するデモを行なう人々も、「自由」を求めての大衆行動なのであった。自由を希求するという点においてはまったく同じでありながら、なぜにいがみ合わなければならないのか?

「自由」は人類にとって至高の価値とされてきたが、この「自由」じたいに陥穽があるのだ。

ここで、あらためて「自由」の観念については、原理的な考察と再定義が必要となったのである。


1 自由とそれにもとづく闘争が、かえって、さらなる抑圧やテロリズムの横行をもたらしたことは歴史上枚挙に暇がない

2 従来、かかる不本意な現象は、自由の闘争に抗する保守勢力によってもたらされたと考えられてきた。しかし、このような見解は当たらない

3 自由freedom;libertyには、潜在的に他者を排除しようとする欲望desireが蠢いている。いやそればかりか、他者排除の欲望は、自由の心性の一部をも構成している

4 従来の「自由」は他者危害原則にもとづいて、他者からの侵害や干渉を極力排除する傾向にあるが、この原理を撤廃し更新するべきだ

  @ 私にはXをする〈しない〉当然の権利がある

  A 私がXをする〈しない〉ことに、他者が干渉することは不当・不正だ

  B 他者は絶えず私の権利行使〈不行使〉の潜在的な脅威となっている

  C そんな他者がいなければ、無制限の自由が可能だ

  D 他者の干渉と脅威を予防的に隔離するにしくはない

  E 逆に、他者がいなければ、人権と自由そのものが実現不可能だ〈無制限の自由は逆に選択肢のない不自由と束縛そのものだ〉

  F 他者との違和感や干渉との緊張関係を通してのみ、自由と人権は実現可能となる

G 敵対的な他者と無条件なかかわりあいが、無限の自由の地平を開く可能性がある



  ※ Ronald Dworkin  : Taking Rights Seriously 1977
   ※ 大澤真幸 : 生きるための自由論 2010

5 ただし、自由の内容がどうあろうと、どのような言論や表現の自由があろうと、人が実効支配している身体・人格・生活の占有possession領域に対して、不任意な実力行使(暴力)は許されない。これは実定法規制以前の自然法の指し示す当為である

6 他人の権利を侵害せず、自分の権利(占有possession)を守る実力行使は許される

  ※Hugo Grotius
   ※木庭顕『憲法9条へのカタバシス』2018
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2018/10/30  4:00

人権思想へのカタバシス 補遺♯3  特別公開論文

●人権思想へのカタバシス 補遺♯3
人権思想の宗教への倫理的効用



宗教教団とそこに所属する職業宗教者は、世俗社会からは聖別され権威化される。この聖別と権威化への営みは、必然的に独善的な閉鎖空間を現出する。聖なる教団と宗教者といえども、その実際の担い手は、欲望を抑えがたい生身の人に過ぎないから、さまざまな罪過を犯しても不思議ではない。世俗社会であれば、人の過ちは日常茶飯であるから、それを組織的に隠蔽したり、無関係なことがらにすり替えたりはあまりしない。しかしながら、教団と宗教者は、聖別された至高の権威であるが故に、罪過はその軽重にかかわらず、あってはならないことになる。教団は自らの神聖な権威を傷つけないために、罪過の事実を伏せたり、宗教的な詐術で正当化したりすることが往々にして起きる

そのような宗教教団とそこに所属する職業宗教者たちの不正や不品行を抑止し、宗教的に更生させるため、宗教の神聖性や権威に取り込まれない外なる倫理規範が必要となる。その倫理規範の基準点は、いまのところ基本的人権 fundamental human rights しか存在しない。人権思想のもとでは、俗人か聖別された宗教者かという資格は、顧慮されず、ただ「自分にしてもらいたいように人に対してせよ」という黄金律または「自分がしてほしくないことは他者にもしてはいけない」という銀色律に照らして正邪の判定を受ける。そのような意味でも、宗教にとって人権思想は相対立する世俗倫理ではなく、逆に宗教性を下支えする土台ともなりうるのだ

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タグ: 人権 宗教

2018/10/26  5:00

人権思想へのカタバシス 補遺♯2  特別公開論文

●人権思想へのカタバシス 補遺♯2

差別discrimination 定義

差別とは、単にある事物を他と区別し、新たな差異を設ける思考と行為を指し、人の意識活動全般と重なる

不当だとされる差別discriminationとは、社会的な属性attributionや個人的な性向inclinationの多様性を、単純な善悪・優劣・正邪または浄穢などの画一的な価値観に短絡させる先入観とそこから発生するさまざまな侵害行為と不利益を指す

不当な差別は、人の先入観がつくりあげた虚構であるが、一旦定着した差別意識は、社会的拘束力を周辺におよぼし、人格否定や人間性の抹消を経て、暴行violenceや絶滅行為genocideへ突き進む傾向がある
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タグ: 差別 属性 性向

2018/10/25  7:00

人権思想へのカタバシス 補遺 ♯1  特別公開論文

●人権思想へのカタバシス 補遺 ♯1

占有possessio,possession侵害例外条件

1 本人がその行為に限り、許可を与えている場合
例:本人が依頼または許可している医療行為等

2 緊急避難措置の場合
例:本人の生命等の死活を左右する明らかな危険が及んでいるか、あるいは差し迫った状況

3 その他 その行為に限り本人が明確に許可あるいは承認している場合 たとえ公共の利益であると判断されても、不任意の占有possessioの侵害は原則禁止

4 留保事項 その行為に限り、本人が許可または承諾している場合でも、他者の占有を侵害し、他者の意志と自由を毀損する虞ある場合には、その判断は留保される
例:安楽死介助 嘱託殺人
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タグ: 占有 possession



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