で、「
OurPlanet-TV」の新番組『
ContAct』、どうにか船出まで漕ぎ付けたみたいで何よりです。スタッフのみなさん、本当におつかれさまでした!
結局、ライブ配信については技術的なトラブルなどから今回は上手く行かなかったようなのだけど、原因のほうは既に解明されている模様。これまでもストリーミングのライブ配信は何度もこなしてきたアワプラなので、特に今後が思いやられるとかそういうことはないでしょう。もっとも、ひそかに気にしながら見ていたプロのテレビ局関係者なんぞが「ほーら見ろ、やっぱりトーシロは」とか引きつった冷笑を浮かべてるかもしれんけど、ま、この次に上手くやれば即座にそいつらも黙るんじゃないかと。
ちなみに私は当日夜9時過ぎ、新宿の
放送批評懇談会(『
GALAC』版元)事務局でオンデマンド配信を見ていました。その際、一緒に見ていた某大手ラジオ局の人が「えっ、こんなのができちゃうの!?」とか驚いてたし、そういう意味でのインパクトは結構大きかったんじゃないかと思います。私も思わず「えっへん!」と胸を張りたくなった次第。
実際、何の予備知識も与えないままこの映像を人に見せたら、おそらくこれがボランティアスタッフが中心のNPOインターネット放送局が作ったものだなんて、みんな信じられないんじゃないかな? そのくらいのモノはできていた。
キャスターの緒方朋恵さん(上の写真)もさすが本職だけあって、番組の初回とは思えないくらいメリハリの利いた、すごく見ていて気持ちの良い司会進行ぶりでしたよ。ちなみに私の隣りに見ていた前記ラジオ局の人も「ほんとにボランティアの人?」という感じで見てたもんで「いや、この人はボランティアだけど本職さんです」と、何だか思わずムキになってフォロー。
でも緒方さん、これでファンが増えそうだなあ。いや、それはそれで良いことなんだけど、私も隠れファンだから内心複雑だなあ……などとバカなことを呑気に考えておったりもしたのだけれども。
それはともかく、もちろん細かく見れば気になった部分は多々あった。例えばサンフランシスコからの中継の音声が聴きづらかったとか、肝心のテーマである彼の地の独立系放送局の現状について、もう少し落ち着いてじっくり報じてもらいたかった、とかね。
正直、メインの特集コーナーについてはもっと長い尺をやってくれて良かったような気はしました。その反面、冒頭のニュースフラッシュ部分については、未だ隔週でのパイロット放送である現時点ではコーナーとしてあまり機能してない印象も受けたんだけど、まあ、これは今はまだ仕方がない。また、メニューも少々気負い込みすぎたとの印象もなくはなかった。
例えば「日の丸・君が代」問題に関する東京地裁判決のニュースなどは、ここで報じる意味がないとは言わないけど、既に朝日新聞やその他でも結構取り上げられている話題だし、逆にここで改めて紹介することで「あ、こういうのを持て囃すアカや左翼のメディアなのね」とかいう感じで色目で見たまま離れていく向き(無論、そういう捉え方をするのが正しいとは思わないけど)もあったんじゃないかと思う。だから「スタイルは地上波などのニュース番組と同じだけど、そこで扱っている中身はぜんぜん違う」というあたりを、もっと戦略的に強調できれば良かったんじゃないかな。
ただ、私が指摘するまでもなく、そういった諸々の課題については白石さんたちのほうでもある程度織り込んでいるのかもしれない。そのうえで、敢えて初回もしくはパイロット期間中はあくまで番組としての“型”を世間に対して明示する、つまり「アワプラとしてこういうニュース番組を作りますよ」ということを見た目にも分かりやすく訴えていくことを主眼に据えたんではないかと推察する。
そういう意味ではむしろ、いわゆる「既存メディアに絶望して市民メディアにやってきた」系の方々の中に、もしかしたら否定的な感想を持たれた向きもあるかもしれないですね。すなわち「なんで地上波のニュース番組のスタイルを真似する必要があるんだよ!」と。
ここは今後結構議論になるところかもしれない。というのは、もともとアワプラはテレビ業界の現場で働いていたプロフェッショナルの人たちが「今の営利企業としてのマスメディアの中ではやれない、本来のジャーナリズム的な仕事をできる場を作りたい」といった動機から始めたメディアだったと記憶する。つまり、例えば熊本の「住民ディレクター」たちなどの番組作りの方法論とは自ずと異なるものがそこにはあるわけだ。
そういう考え方の違いはプロの世界にもある。例えば私みたいな活字業界の無手勝流フリーランサーの場合は、アワプラ主催のトークライブなんかでもろくに台本とかを作らず「とにかくアドリブでやりゃいいのよ。インタビューに台本なんかあるか?」とやりたがるわけだけど、白石さんはそれこそ『8時だヨ! 全員集合』ばりの作りこみ主義を絶えずプロとして意識しているようで、そのへんの考え方の違いっていうのが、実は一番おもしろいところだったりするのです。もちろん、そのどちらが良いかというのは一概に結論の出せるものではない。
「視聴者にニュースをわかりやすく見せる」という意味で、既存のニュース番組のスタイルというのはプロのテレビ関係者による長年の試行錯誤を経て熟成されたものであると思うし、それを応用することも間違いではない。もとより、今後「ContAct」が地上波などのニュース番組と同じ土俵(ただし中身は独自路線)で勝負していこうというのであれば、これも一つの方法であるといえるだろう。ただし、本当の意味での、この番組に相応しい“型”というのはこれから見極められていくことになるのだろうし、そこは是非柔軟な姿勢で臨んでもらえたらと思っております。以上、遅まきながらの「第1回目を見ての感想」なのでした。ではでは。
(「
岩本太郎のメディアの夢の島」と同時掲載)

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