てなわけで渋谷まで聴きに行って参りましたよ、「
オールニートニッポン」開局記念の公開生放送。
渋谷駅から宮益坂を5分ほど登った交差点の近くにある「T's SALON」が会場。定員100人ほどのイベントスペースで、片隅にはささやかなバーカウンターがある。この日の来場者はざっと見て50人程度だったが、どういうわけか、イギリスのテレビ局がHDTVカメラで撮影取材に取材にきていたりする盛況。
受付でスタッフの若い女性に「領収書の宛名は『上』で」と頼んだら「うえ」とか平仮名で書かれたし、フロアディレクターらしい男性(大人しい顔つきだったが、髪型は頭頂部に5本ほど角が生えたようなトサカ頭)が放送開始前に「イギリスのテレビ局がカメラで取材に来ていますが、映像に撮られたくない方は今のうちに挙手を」と言ったら、半分くらいの客が神妙な表情で手を挙げた。見た目には特にどうっていうこともないが、やはりどこか浮世離れしたというか、ニューロティックな雰囲気が漂っている。
もっとも、そんなところまで取材に来たほうも大きなことは言えない。客席には「ユニークフェイス」代表の
石井政之さんがいつもと同じポル・ポト派的スカーフ(訊いたところ本当に「メイド・イン・カンボジア」らしい。15年前に名古屋のアジア風雑貨屋でそう言われて買ったんだとか)を首に巻きながら構えていたほか、元『AERA』記者で朝日新聞を40歳で定年退職した
烏賀陽弘道さんのようなフリーランスジャーナリストも顔を見せていた。
石井・烏賀陽の両氏は今後ここでパーソナリティも務められるとの由。それにしても「北斗の拳」を彷彿とさせるバリバリの黒い衣装でキメてきた烏賀陽さんから「俺とか岩本さんとかもニートみたいなもんだよね?」とか付加疑問文で聴かれて即座に頷いていた私も困ったものではあるのだけれども(笑)。ウェブ生中継のスタッフとして急遽はせ参じた白石草さん(
Ourplanet-TV)が、珍しくこの日は少々肩身が狭そうに見えてしまったのは気のせいかな(笑)。
まあでも、確かに初回からイカれた(もちろん褒め言葉)内容の番組ではあった。この日のパーソナリティは、今やすっかり作家として旬の存在になってしまった
雨宮処凛さん。ゲストは2人。ミュージシャンの
AKIRAさんはかつてニューヨークで薬物依存&ホームレス生活を送ったほか、アンディ・ウォーホールからもらった奨学金で世界50ヶ国を放浪。
月乃光司さんは高校時代から対人恐怖症による引きこもり状態(ちなみに上の写真で月乃さんが来ているパジャマは、ひきこもり時代に着っぱなしだったものだとか)、20代半ばからはアルコール依存症に陥り、自殺未遂を繰り返したりした後に精神科病棟に入院して境界性人格障害と診断され――という具合に、どちらもその方面では筋金入りともいうべき凄絶な人生経験の持ち主だ。
私は1年ほど前にも、今回と同じお三方のトークをロフトプラスワンのライブで見たことがあった。だからある意味で「免疫」ができていたようなところがあったのだが、何も知らないまま見に来たりラジオで聞いていた人には結構刺激が強すぎたかもしれない。だって、
「ニューヨークでコカインのバイヤーやりながら自分もヤク中だったんだけど、ほかに『血液を使った書道』ってのもやってたんだよ。で、いつだったか人から『一筆書いてくれ』って頼まれたんで『努力』って書いてやったんだよね。『血の滲む努力』だって(笑)」(AKIRAさん)
――なんてのがまるっきり序の口程度という、とにかく危ない話のオンパレードが2時間に渡って展開されたのであった。他にも「俺は『ひきこもり』じゃなくて『立てこもり』だ!」などと、ニートによる社会変革の可能性をぶち上げた月乃さんに、ネット中継のリスナーからチャットで「協調性のないニートに革命は無理だ」とかいう突っ込みが入ったり(笑)。ただ、雨宮さんの司会の上手さもあってか、一歩間違うとまとまりがつかなくなりそうなテーマでのトークだったのが、なかなかメリハリの利いた展開になっていたように思った。正直、2時間があっと言う間に感じられたくらいだ。
それにしてもAKIRAさんはその歌唱力はもとより、トークのほうでも実に含蓄のある言葉を次々に連発していた。「人生って、トーナメントの試合じゃなくて『敗者復活戦』なんだよね」とか「僕も『平均台から落ちて』みたら『地面』が見えた。だからみんな、どんどん落ちてみたほうがいいよ」等々。たぶん、聴きながら癒されたり元気づけられたりしたという若い人も結構いたことだろう。もっとも「できそこないの社会人」とでも言うべき私のような捻くれた中年男なんぞは、聴きながら「この分かりやすさが、この世の中では危ないんだよな」といった素直でない感想も一方では持ってしまったわけであるが。
最後はAKIRAさんの演奏・歌と月乃さんの絶叫朗読とのジョイントによる「どん底ブラザーズ」のライブで締め。この2人で来年1月には「コラボレーション・ライブ」を開催することも決まっているそうだ。ちなみに会場はどこかと思えば、新宿の――ロフトプラスワンだったりするわけだが(笑)。まあでも、たぶんまた見に行くことになるでしょう。どうかその日まで、Love&Peace!!

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