行ってきました。代々木体育館のすぐ隣りにある「
SHIBUYA BOXX」で行われた「
the sad sad planet」(通称“
サップラ”)の「
第2回年忘れサップラ大感謝祭ライブ」。
(過去に本ブログ掲載の関連記事は
こちら。下は公演チラシ)
透明感のある美声で朗朗と歌う、まさに天性の歌姫といった印象のボーカリスト「
そよぎ」と、熟練の妙に加えメロディメーカーとしての才覚を感じさせるプレーヤー・
工藤浩二郎。毎週末の黄昏時、雑踏を極める新宿駅前の路上に現れては、道行く人々に向けてのストリート・ライブを地道に行い続けている彼らが、年に数回だけ「屋根の下」で演るワンマン・ライブだ(そのさわりが
ここで映像紹介されているので宜しければ御参照あれ)。
個人的に、この終わりゆく2007(平成19)年における大きなできごとを挙げなさいと言われたなら、間違いなく新宿駅前に出没するこの2人に「つかまった」ことを上位に挙げるだろう。確か梅雨時ぐらいから、日頃よく通りかかる東南口や西口にいる彼らの存在が気になり出し、私には極めて珍しく、ライブ終了後に2人から直接サイン入りCDを買い求めたりするようになっていた。9月半ばには原宿アストロでのワンマン・ライブもあったのだが、この時は間の悪いことに中国への出張とぶつかってしまって未見。そんなわけで、今回の年末ライブは何のしても観にいきたいと思っていたのだ。
会場の「
SHIBUYA BOXX」はNHKホールや渋谷公会堂(CCレモンホール ^_^;)、すぐ隣りの「
SHIBUYA-AX」というメジャー級の大型ライブ施設に囲まれた一角にある仮設の建物。一階のライブスタジオの定員は見たところ150人くらいの感じだったが、この日はここになんと、当日券での立ち見も含めて250人は入ったんじゃないかという大盛況。
客層は見たところ30代を中心に、普段あまりこういうところに来そうもない50〜60代までと幅広く(ただし10代の客はほとんどいなかったかな)、男女比は「6.5:3.5」ぐらいか。悪く見れば「客層に個性がない」とも言えたが、これは要するに、新宿駅前を日常的に歩いている不特定多数が、そのまま会場までやって来ちゃったということなんだろう。マスメディアにはほとんど露出しないものの、こつこつとストリートで活動してきた成果とも言える。
んでライブはまず、そよぎが1人だけでふらりと出てきてソロ(おもちゃのピアノみたいなヤツを弾き語り)の後、マイクの前で何やら紙を取り出したので何だと思ったら「開会宣言」だとか(笑)。
その後に工藤、さらにステージが進むにつれて順次、普段のストリートではお目にかかわれないバンドメンバー(ギターの「4+」、キーボードの「SUNNY」、ドラムスの高嶋伸弥)が順次登壇。今回は「アコースティックライブ」のため編成もシンプルで、最後に登場した高嶋氏などは、床に座って何やら箱みたいなヤツ(何しろ場所が低くて客席からはよく見えなかった)を叩いていた。
ともあれ、そんな感じで全体的に年の瀬にふさわしい、まったりしたムードで進行。途中のMCでは「そよぎ」と工藤が、今回のライブに際してファンから事前に募集した「サップラに聞きたいこと」についてのQ&Aコーナーもあったりした。どこか不思議な浮遊感のあるそよぎの語りと、御国言葉の九州弁で気さくに笑いを振りまく工藤とのやりとりが何だかほのぼのと可笑しい。
ちなみに、この人たちも普段のストリートライブでは、通りがかりのヤクザや止めに入ってくる警察との攻防などがいろいろあるらしくて、その点では私が関わってる方面とも会い通じるものがありそうだ(^_^;。
肝心の曲のほうでは、これも普段のライブではなかなか聴けないサップラ初期のナンバーのほか、カバー曲としてフェアーグラウンド・アトラクションの「ハレルヤ」と、イェン・タウン・バンドの「Swallowtail Butterfly (あいのうた)」(言うまでもなく岩井俊二の映画『スワロウテイル』の主題歌)の2曲も。前者はもちろん私などは知らない曲だが、そよぎが英語で歌うのを聴くのは確かこれが初めて(彼女の歌詞はあくまで日本語中心で、英語のフレーズはほとんど入らない)。後者は原曲のCHARAによる独特のクセのある歌い回しが印象的だが、これをそよぎが見事に自分の歌い方でモノにしており、どちらもなかなか新鮮だった。
再三書いているように透き通った見事な声で魅せてくれるそよぎだが、一方で彼女の歌の根底には、絶えずある種の静かな「痛み」や「怒り」のような何かが滲んでいるような気がする。たぶん、そこが単に「きれいな歌声だねえ」だけで済まされずに、かくも大勢の人たちの心を路上ライブで惹きつけてしまう要素なんではなかろうか。つるんとした美貌(タレントの優香に少し似てるかな)や、ライブでの朗らかな立ち振る舞いの中にも、どこか「壊れた」ものが潜んでいるとでもいうのか……。
そうそう、優香はともかく(笑)、俺の知ってる人の誰かに通じるものを感じるなあ、そよぎって――と以前から常々思っていたのだが、この日のステージを見ながら、それが誰なのかやっと思い当たった。突拍子もないと思われるかもしれないが――
雨宮処凛だ。キャラクターも歌う曲のジャンルも全然違うけど、奥底の部分でもしかしたらこの2人は結構通じるものがあるんじゃないかな…・・・などと思いをめぐらせたのであった。
ライブは全部で15〜16曲ほどを演奏し約2時間で終了。ラストは「空中ブランコ」、アンコールは「陽だまりロンド」という、共にサップラを代表する2曲だった。
それまで座って観ていた観客たちも、そよぎからの「……立ちます?(微笑)」という、はにかむような一言に触発されて全員起立!
「♪もっと漕いで〜、高く高く〜」「♪どれくらい、どれくらい、大好きか〜」などと一緒に歌ったり手を振ったりしながら、朗らかに幸せそうに盛り上がっておったですよ(^-^)
私自身にとってもこの先、2007年のことを思い起こすたびに脳裏に蘇るであろうこの2曲で、今年の最後を締めくくれたということで、それだけでも何だか少し幸せな気分に浸れた次第。
最後は恒例(?)の「重大発表」として次回のワンマンライブ(来年6月8日・渋谷O-WEST)の案内。そして終演後にはさっそくロビー受付で、ライブを終えたばかりの2人が自らチケット販売とサイン入りCDのサービス配布を行っていた。このあたりはいつものストリートと基本的にやることに変わりがない(笑)。
ただ、観客のほうもそのまますぐ帰ったのはごく僅かで、大半が次回チケットの購入のために長い列を作っていたのが印象的だった。
帰り際に「年明けは一発目(最初の週末)から(ストリートを)やるの?」と声をかけると、「まだそこまで全然考えられないです」と工藤が苦笑交じりに言った。まあ、そりゃそうだ。普段から人が休んでる日に限ってわざわざ人前に出てきて歌ってる人たちなんだから、せめて正月ぐらいはゆっくり休んでもらったほうがいいかもしれない。
まあ、来年以降もこの人たちのライブを何度となく見に行くことになると思うし、はたして今後どんなふうな道のりを歩んでいってくれるか楽しみである。そよぎは「目指すは(すぐ横の)SHIBUYA-AXでのライブです!」とMCで目標を語っていたが、案外来年の今頃、それこそ大晦日には通り1本を挟んだ反対側のでっかいホールで歌ってたりするんじゃないか? などど、帰路には師走の夜空を仰ぎながらそんな楽しい空想もしてみたのでした!

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