けっきょく先週は日曜日から土曜日まで帰宅が全部深夜になってしまった。別に遊び歩いていたわけではなく、既にここに書いたような
デモや
シンポジウムのほかに会合だの打ち合わせだのが連日入った(唯一29日夜だけは「誕生祝いやったげるよ」という妹夫婦の家に呼ばれて3人で食事)ために終電での帰宅が常態化。まあ仕事がら私の場合は夜からの“ミッション”が多いのはいつものことなんだけど、それにしたって“ゴールデンウィーク(GW)”なんだぞ。何とかなんないものかな。
と、いうわけでGWも最終日の6日(火)は、朝に目が醒めるなり「出かけるぞ」と一念発起。
で、どこへ行こうかとあれこれウェブ検索なんぞをしながら思案するうち、新宿を午前中に出る鬼怒川温泉ゆき特急「スペーシアきぬがわ3号」に空席があるのを見つけ、思い立ったら吉日とばかりに、まずは3日前の夜にデモ隊の大騒ぎを見に行ったばかりの新宿へと直行した次第。
「プレカリアートだ何だって騒いでた奴が一夜明けたら鬼怒川へ温泉旅行かよ」などと嘲笑うなかれ。今をときめくダライ・ラマだって、日本に来たら1泊28万円の最高級スイートを宿にしてるっていうじゃありませんか(笑)。
鬼怒川温泉も「
スペーシア」も個人的には十数年ぶりだけど、それにしてもこのムーミン顔の特急電車に新宿駅から乗る日がこようとは。
スペーシアは東武鉄道の日光・鬼怒川方面行きロマンスカーとして「鉄」以外にも知名度の高い列車だが、本来の都心側の始発駅はもちろん東武のターミナル・浅草駅。ところが2年前の春のダイヤ改正から、新たにJRの新宿駅を始発とする系統が1日あたり通常4往復設けられており(ただし、うち2往復は旧国鉄製の中古特急電車を使用)、かねがね一度乗ってみたいと思っていたのだ。
そんなわけで結構わくわくしながら乗り込んで見ると、GW最終日の、しかも国内有数の観光地へ向かう特急にも拘らず車内はガラガラ。もっとも、鬼怒川は朝10時半から日帰りで遊びにいくリゾートではないということなのだろう(実際、着いてみたら帰りの鬼怒川からの浅草・新宿方面行き特急の指定券はとっくに満席で売り切れていた)。
ホームの売店も閉まっていて弁当が買えず「なんか味気ねーなあ」という旅立ちだったが、いざ出発した途端「うおっ、スペーシア、速い!」などと一気に旅モードというか鉄モードへ(笑)。日光や鬼怒川付近の坂道を毎日駆け上がる車両だけにモーターの馬力も強いらしく、普段からこのあたりで乗り慣れている山手線や埼京線の通勤電車よりも断然加速は良いようだ。
それでなくても普段の電車で見慣れた沿線風景が、違う電車から見たらかくも新鮮に見えるのかと思わずにいられなかった。しかもこの日は朝から快晴、それも本当に「雲一つない空」が終日頭上に広がっていたという、首都圏でも珍しい一日だった。沿線の新緑は見事の一言。ちょうど田植えの始まった頃合の田園地帯の眺望が、心を和ませてくれる。
新宿から北へ約50q(時間は40分くらいか)の埼玉県の栗橋駅までは「湘南新宿ライン」と同じJR線を走る。この駅で、浅草から北上してくる東武線と斜めに交差するため、直通運転用の連絡線がここに設けられたのだ。
時刻表では通過駅とされるこの駅に数分停車(ドアは開かないので客は乗り降りできない)する間に、乗務員も交替。さっきまで車内を歩いていたJRの黒い制服の車掌さんが線路の脇を歩いて戻っていく様子を窓越しに見てからほどなく、東武の茶色い制服を来た車掌さんが車内の通路を歩いていった。栗橋駅を出ると、通過する駅の表示類のデザインも一変。どこか大陸を往く国際列車での国境越えを彷彿とさせる旅路だ。
栗橋から少し先、大きく右にカーブして利根川を渡っていくまでの区間は、ちょうど3年前に
ここにも書いたが、宮沢章夫氏主宰「
遊園地再生事業団」の演劇『トーキョー/不在/ハムレット』の舞台となった場所。関東平野のモロにド真ん中にありながら、上の写真のごとく本当にゼロ記号的にガランと視界の開けた一帯だ。ここから列車は関東平野の北辺の先にある鬼怒川温泉に向けてほぼ真っ直ぐに北上。やがて日光の象徴である杉並木や男体山が車窓に現われたら、終着の鬼怒川公園駅はもうすぐだ。
駅前から徒歩5分、「
鬼怒川ライン下り」乗船場の隣りに建つ「
ホテルニュー岡部」は入浴のみで1000円。川に面した大浴場と露天風呂はこれまたガラガラ。ほとんど俺一人の貸切状態じゃないかって感じで、ちょうど昼時の燦々とした陽光(シャワーを浴びたら虹が出た♪)に新緑の薫る川風まで感じながらの、約2時間にわたる入浴三昧!
しかも、この日は結局朝から晩まで天空に雲一つ見えない「五月晴れ」を絵に描いたような快晴だった。会合だ打ち合わせだタカ派放送局やプレカリアートの集会だへの参加に加えて、天気も今いちスッキリしなかったGWの最後に、何て素敵な休日だろうと思う。後は隣りに彼女でもいてくれたら言うことなしなんだが(笑)。
ともあれ短時間で堪能した後、16時前には早くも帰路へ(泣)。前述の通り帰路のスペーシアは全部満席。乗り込んだ浅草行き「区間快速」は超満員で座れず、これは終着まで立ちっ放しかな……とゲンナリしかけたところ、鬼怒川温泉駅から20分ほどの下今市駅にて北千住行きの「臨時快速」に接続。んで、乗り換えたら↓の車両だった。「鉄」ども喜べ!(それとも羨ましいか?)
スペーシアに伍す東武のもうひとつのロマンスカー(群馬県の赤城方面ゆき)「りょうもう」に十数年前まで使われていた「1800系」という、いかにも1960〜70年代的に優雅なデザインを残す電車だ。新型の導入に伴って廃車もしくは改造のうえ他の路線にとばされたのだが、一つだけオリジナルの形態のまま残された編成が、こうして混雑する時期の臨時列車用に今も使われているのだった。ただ、個人的には「もう乗ることもない車両だろう」と思っていたので嬉々として乗り込んでしまいましたですよ。
そんなわけで帰りは東武線経由で、北千住から地下鉄乗り入れ電車に乗り換えて新宿まで。ただし上記の臨時快速は座席指定不要で、今や東武は全線改札にIC対応に切りかえたらしく、私は鬼怒川温泉駅から新宿三丁目駅までSuica1枚(約1500円)で道中大半をらくちんらくちんの座席にほとんどゆったり座りながら帰ってきた次第。結局、温泉代も含めて往復1万円以下で済んだGWの日帰り鬼怒川温泉ツアー報告でした。ではでは〜。

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