とっくに東京までUターンしてきているのだけど、まずは帰省報告がわりの鉄日記。
東海道本線を旅する「青春18」族にとって、熱海から浜松の少し先あたりまでの静岡県内区間ははっきり言って「鬼門」だ。なぜなら東西に長い静岡県を突っ切るこの区間(約150km)は基本的に各駅停車ばかり。しかも車両も山手線や私鉄や地下鉄を走っているのと同様の通勤電車タイプ(窓に背中を向けて腰掛けるベンチ状の座席のヤツ)で統一されていて、追加料金でゆったり座れるグリーン車は非連結。おまけに短いのだと3両編成なんていうのも走っていたりするため、とにかく混むのである。そんなわけで下手にこの区間を鈍行で乗り通そうとすると、延々2〜3時間ぐらいラッシュアワーの通勤電車に押し込まれるような羽目に陥る(「18」ビギナーの方々はどうか気をつけてください)。
で、毎度この鬼門区間を行ったりきたりしている私が、今回の帰省で使った“裏技”が↓の三島発20時30分発「
ホームライナー浜松5号」。
特急用車両に勤め帰りの通勤客を安い値段で乗せる「ホームライナー」は大都市圏でおなじみの列車だが、実は静岡県内でも結構な本数が走っている。この「浜松5号」に使われているのは、小田急とJR東海が共同で相互乗り入れ運転をしている新宿―沼津間の特急「あさぎり」用のJR車両「371系」。
この車両、個人的に割とお気に入りなのだ。思い切ったデザインもさることながら、乗ってみてもなかなか快適なのだ。まずはご覧の通り窓がやたらデカくて(何だか金魚鉢みたいだ)、下の窓枠が座席の肘掛の下にあったりする。実際、窓側の座席に座ると↓のように足を組んだ膝がホームの乗客からも丸見えになっちゃうほどだ(またしてもの勝手な撮影行為により勤め帰りのおくつろぎのところを肖像権侵害されたお客さん、本当にごめんなさい)。
あと、真ん中に2両ついてる2階建てグリーン車の、車体の屋根から床までつながる大窓も印象的だ。ただし、この列車ではグリーン車の営業は行っていないのだが(子供が1人、しゃがみこんで興味津々に中を覗き込んでいた)。
この371系は本来の使用列車である「あさぎり」でも過去に何度か乗ったことがあるし、普段も新宿の小田急線のホームに停まっているのをよく見かける。ちなみに車庫は静岡市内の、昔私が住んでいたあたりに近い車両基地にあるので、そうした意味からも何となく親近感があったりする。
「ホームライナー浜松5号」は「あさぎり」の運用が終わって車両基地に帰るついでの仕事だが、列車名に「浜松」とある通り、すぐには車庫に戻らず、静岡駅を通り越してわざわざ浜松まで行く(ただし土日は浜松まで行かず静岡止まり)。折り返しのホームライナーとして深夜にやっと基地に戻ってきたかと思えば、翌朝は朝一番の「あさぎり」で新宿に向かうべく7時には出て行くという働き者だ。
しかも371系は基本的にこの7両編成1本しかない系列のため、定期検査で他の車両を代走に出す時以外は毎日毎日、まさにこの写真の車両だけが新宿と浜松の間を行ったりきたりしているのである。なんだか近頃の長距離トラックの運転手ばりの長時間労働であるが、確か製造されてから既に20年近くになるはずだし、あるいはそろそろ廃車の話とかも出てくるのかもしれない。
ともあれ三島から藤枝までは59分で到着。80kmぐらいの区間だから結構早い。座席も凄くゆったりして快適な車両だし、310円のライナー料金を払うだけで乗れるのだからお値ごろである。それにしても、こういう通勤客の帰宅用の電車を帰省列車に使うっていうのも妙なもんだけど、「ホームライナー」なんだからまさに字義通りの使い方ではある。

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