雨が降っている。師走のこの時期には珍しいくらい、きっちりと腰の据わった雨足で、東京は中野にある私のアパートの屋根を、朝に目が醒めてから、深夜のこの時刻(1時すぎ)まで延々と打ち続けている。先刻からは雷も鳴り出した。
子供の頃に住んでいた中部地方の太平洋沿いでは、この時期は雨もほとんど降らず、からりと晴れているのが普通だった。大学時代を過ごした東北地方では、降るとしたら凍てついた雪だった。
そのせいなのか、この時期にこんな雨に見舞われると、何だか不安になってしまう。いや、別に温暖化うんぬんとか言いたいわけではない(そんな理由で雨が降るのなら、それは人類に対する報いということで、今さら私が何を行っても仕方がない)。
「泣いているのか?」
なかなか終わらない原稿を中断し、よろよろオモテに出た昼過ぎ、近所の五叉路で、目の前を駆け抜けていく車がはね飛ばす水しぶきよけつつ、思わず見上げた空に、むなしく呟く。
そういえばこのところ、私のもとには友人たちからいろんなメールが届く。その中身の多くが「泣いている」。怒りや悲しみや憎しみや寂しさや、そんなこんなが今この街には充満し、時折こんな涙雨を降らせているのかもしれない。
だったら、この際どんどん泣いてしまえ。君がむせび泣く空なら、私は静かに見届ける。
でも、そんな私が見上げて泣くなら、無情に乾いた青い空。子供の頃、静岡の校庭でひとり見上げた、宇宙まで届きそうな紺碧の空だ。あの空なら、涙が頬を伝う前に、入り乱れた思いを、滅びていく惑星から失われゆく大気のごとくに上げていってしまう。
――ってバカなことを書いてたら……雨、やんだな(笑)。
明日には仕事、たぶん一段落すると思います。メールのお返事、それまで待ってね。

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