「アウェーだ上等!『チャンネル桜』公開シンポジウム報告A」
メディアの話
んで、瞬く間に10日以上経ってしまい、そうこうするうちに四川省での大地震で大勢の方が被害を受けたという最中でもあるため大変心苦しいのですが、ともあれ5月2日(金)の夕刻に行われた「
日本文化チャンネル桜」
公開録画シンポジウム「
胡錦濤訪日、北京オリンピック、東アジア大討論 Part2」についての報告(前回は
こちら)の続きです。
(※なお、このシンポジウムの模様は「チャンネル桜」でとっくに放送されたと思ってたら、実はこれからなんだとか。約2時間半に及んだ討論の模様を
【前半】5月15日(木)20:00〜21:30 【後半】5月16日(金)21:00〜22:00 の2回に分けてノーカットで放送するほか、インターネット放送の「
So-TV」でも配信するそうです)
開演は18:30からだったが、最初の30分は3組のアーチスト(
英霊来世(AreiRaise)、
沙saori織、
扇さや)による「特別ライブ」で、我々パネリスト10人の登壇は19:00から。客席から舞台に向かって一番左に司会者の水島総さん(チャンネル桜 代表)、そこから
青木直人さん(ジャーナリスト)、岩本太郎(フリーライター)、
大高未貴さん(ジャーナリスト)、
斎藤貴男さん(ジャーナリスト)、
坂本衛さん(ジャーナリスト)、
西尾幹二さん評論家)、
西部邁さん (評論家)、
西村幸祐さん(ジャーナリスト)、
西村仁美さん(ルポライター)、
三上治さん(評論家)という具合に、50音順に左→右とならぶ席順。
幕が開くと、客席定員1,112名という
九段会館大ホールは見たところ2割程度の入り。2階席には6人。3階席の客はゼロだった。とはいえ、それでも200人以上は来ていたことになる。最初に水島さんから「まずはみなさんそれぞれの中国に対する見方を、お一人2分ぐらいでお願いします」との注文があり、これも50音順で話し始めることとなったが、さすがにどなたも2分やそこらでまとめるのは難しかったようで、結局10人全員が一通り話し終えたところで開始から既に1時間が経過していた。
ともあれ、まずは各氏の一巡目の報告から以下発言順に紹介していくことにしますが、またこれだけでも長くなりそうだな(汗)。
◆青木直人さん
今回のチベット問題や胡錦濤の訪日は、結論から言えば一つの始まりにすぎません。おそらくこれから先は私たちの想像を絶するような中国の排外主義が始まるのではないでしょうか。中国人の歴史観、中国人のアイデンティティは、日本でいま起きているようなことを「内政干渉」としか受け止めません。
繰り返しますが、これから中国で起こるのは「民主化」ではなく、かつての義和団事件にも見られた排外主義です。長野で中国人たちが起こした動きはその始まりに過ぎないのです。
◆岩本太郎
たぶん私は今日ここに“アウェー”の立場で呼ばれているんですよね。ただ、私自身は別に中国問題の専門家でも何でもなくて、自らの中国体験はというと――青木さんのお話からは次元を下げるようで申し訳ないんですが、今から15年前にバックパッカーとして海外を半年ほどぶらついた中で中国を2ヶ月ぐらいかな、(注:アウェーなせいか少々誇張。実際は1ヵ月半)旅したのが原点です。
で、当時ははっきり言って「この国は滅茶苦茶だ!」って思ったんですよ。実際にインドやアフリカといった海外のもっとスパルタンな地域を旅してきたバックパッカーたちに聞いても「中国は大変だ……。中国を一人でバックパック旅行できるようになったら世界中のどこに行っても通用する」って言ってたくらいで、その後の旅先でもバックパッカーたちと会うたびに中国の悪口で盛り上がってました。
……ただですね、そういう連中の感覚からすると、今の日本のマスメディアやネット上で言われている中国批判の言説には正直「何いってんの?」って感じなんですよね。はっきり言って、ああいう中国批判をいくらやったところであんまり意味はない。「まったく意味がない」とまでは言いませんが、日本人同士が日本の中の日本語メディアで中国批判をどんだけやったところで、そこには自ずと限界があるし、たいして意味はない、ということです。
(※すみませんね、本人のだけ長めで。他の方のぶんも一応最初の発言だけはメモってたんですが、録音まではしてなかったもんで)
◆大高未貴さん
あの世界各地をまわった聖火リレーが、中国の本質を世界に晒したと思います。本当にもう気の毒になっちゃうくらいに、民度の低さを世界中に晒してしまいましたね。
ただ、中国のそうした歪んだナショナリズムを助長させたことについては、はっきり言って日本にも責任があるんじゃないでしょうか。河野洋平のように中国にペコペコしてばかりいる政治家がいるからああいうことになってしまったんじゃないかなと。(会場拍手!)
品格のある日本としては、これからは中国に向かってきちんとモノを申していかなければならないという気がしています。
◆斎藤貴男さん
僕自身はよく“媚中派”などと言われる立場ですが、そのうえで今回の胡錦濤訪日に関して言えば基本的に歓迎しています。首脳同士が会うことで日中友好を語り合えばいいと思うし、そのうえで今度のチベット侵略についても文句を言えばいい。また、僕は今度のことで日本は北京オリンピックをボイコットすればいいと思っていますので、それも中国に対してはっきりそう伝えればいい。
長野の聖火リレーで「警察は中国側ばかりを守った」などと言われていますが、ようするに日本政府が今度の件で守りたいのは、中国に進出している日本企業なんですよ。つまりは権益ですね。そもそも今やオリンピックと政治とは切り離せないし、それ以前に円滑なビジネスを支える信任機関としての政府の役割こそが、外交における一番重要な要素になっている。
ただし、そうした「商売を支える政府」の人々の気持ちを多少でも変えることができれば、チベットへの侵略をやめさせることができるだろうと僕は考えています。昔でいえば軍需産業をどうコントロールするかという話と同じで、それがビジネスに悪影響を及ぼすということになれば、自ずときちんと対応しようという話になるでしょう。そうした意味でも僕は、今後は「東アジア共同体」の構築という理想を掲げながら日中関係を進めていってほしいなと思っています。
◆坂本衛さん
世間では「中国脅威論」や「中国崩壊論」が盛んに出回っていますが、私自身はそのどちらも違うだろうと思っています。それよりも今一番大事なのは「等身大の中国」をとらえることではないでしょうか。
そもそも、まず「中国って何よ?」ってとこから始めなければならない。「中国」という国は「ある」といえばあるし、「ない」といえばない。
(※ここから先の話は上記の坂本さんのサイトの4月20日付にも載ってるので、以下に該当部分から引用)
第一に注意しなければならないのは、中国はデカいということ。人口で日本のざっと10倍。ってことは、高度成長期の日本が東アジアに六つも七つもあるようなもの(一緒に本を作ったとき岡本行夫がそう言ったが、私も同感)。頭のイイ奴も日本の10倍、背高のっぽも日本の10倍、足の速い奴も日本の10倍、頭の悪い奴も日本の10倍いる、と思うのが正解。このパワーはとんでもなく、二十一世紀前半の東アジア情勢は、その中国がどう動くかを軸に展開すると
第二に、そのタイムラグは国や社会のあり方・構造といった側面を見て言っている。中国の進んでいる部分は、むろん日本の先を行っている場合もある。「高層ビルの数」なんて指標では、上海だけで日本全体を上回るんじゃなかったかな。どこまで地震に強いかは別としてね
第三に、30年遅れの中国は、先進国が30〜40年前にやっていたことなら何をやっても許されるわけではない。現在は2008年なんだから当たり前。ただ、中国が遅れていることに、多くの先進国は責任がある。日清戦争に日本が勝った後(1895年)、日露独英仏米は中国(当時は清)の分割・植民地化競争に躍起となった。出遅れたアメリカは門戸開放・機会均等、つまり「俺にもかませろ」と主張した。いちばんうまくやったのが、日露戦争に勝ち、第一次世界大戦で火事場泥棒的に立ち回った日本。ただし、露独英仏米よりも「うまく」やったが、彼らと比べて特段に「悪く」やったわけではない(スペイン・ポルトガル・オランダなどを含め、先進国が世界中でやってきたのと同じことを、後から近場の中国でうまくやっただけ)。だから、日本は分割・植民地化競争について欧米列強に批判されるいわれはない。でも、分割され植民地化された中国は、そりゃ怨《うら》みに思うでしょう。いちばんうまくやり、ある時点から、満州国境を越えて深入りしすぎ、やりすぎた日本が、「右侵略者代表」という形になったわけで(その侵略者ども同士が戦い、英米は中国側に立ったから、侵略者としての色が薄まった。しかし、イギリスが清に仕掛けた1840年前後のアヘン戦争なんて、当時の英野党が「こんな恥さらしな戦争はない」と猛反対した通り、最低下劣な侵略戦争。それを見て日本は、こりゃヤバい、清のようにはなるまい、欧米列強のようになろうと覚醒した。このカッコ内04-21加筆)。だから中国分割・植民地化競争に(程度の差はあれ)参加した先進国は、中国初のオリンピックをブチ壊すようなことはすべきではない(中国批判もほどほどにしておけ)と、私は思います。近代オリンピックの第1回は1896年のアテネ大会。そのとき、自分たちの国がアジアや中国大陸で何をしていたか、先進国の連中は、もっと自省したほうがよい。右代表で、しかも肌の色が同じ日本人は、なおさらです。いち早く開会式不参加を決めたヨーロッパ首脳なんていうのには、私は黄色い肌の連中(私たちを含む)への差別意識を感じます
(※以上、転載ここまで)
――ということで私は、中国では今後あと30〜50年は今起こっているような「せめぎあい」が続くだろうと考えています。
◆西尾幹二さん
毒入りギョーザ事件により、中国という国の実態を日本人は知ることができたと思います。しかしこの事件が大して問題にされなかったこと自体、今の日本の外交感覚を物語っている。中国政府には安全な食品を作る自信がないんですから、日本政府は中国製品に対して輸入禁止という措置をとるべきです。(会場拍手!)
中国には日本で普通に考えられている衛生観念がないことが前提なんだし、そこで作られたものを日本に輸入すること自体が間違っています。人命に対する意識がとても軽い国ですし、ギョーザ事件のような出来事は国内では頻繁に起こっており、年間20万人が被害を受けているとも言われている。
そのような国と安心してつきあっていけると思いますか? 人間の死というものに対して誠に無感覚な思想が蔓延し、他人への情というものがない。中国人には赤穂浪士や三島由紀夫はわからない。自分だけ上手く生き延びればいいという発想で、「平等」という概念もまったくありません。都市労働者と農村の人間とで戸籍が分かれていることもおかしいし、土地も全部共産党の所有になっている。国内で一般市民がデモなどに行ったら、その人のあらゆる経歴が警察にとられちゃうし、そういうことで国民を管理し能率化を図っている社会。だからこそ、そんな中国に利用されないようにしましょう。
(つづく)
追記 このたびの四川省の地震で亡くなられた方々には謹んで哀悼の意を表します。なおかつ被災地にて一命をとりとめられた方々には心よりお見舞いを、そして一日も早く平常の生活を回復されますようお祈り申し上げます。

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