さて、やっぱり書いておくことにするか。「
フジサンケイビジネスアイ」で約2年4ヶ月に渡って毎週木曜日に連載していたコラム「
マスメディア構造改革」が1月17日を最後に突然終わった件について。
まずは結論から言えば、ようするに私が書いて送付した原稿の内容に対してビジネスアイの担当者が「待った」を掛けたのだ。その“幻の記事”については
既にこのブログでも紹介したが、若手の弁護士らを中心とする任意団体「ピープルズ・プレス」が「
NPJ」という新たな「市民メディア」を立ち上げ、1月17日に設立記念集会を開催した――というものだ。
私はこの原稿を1月20日(日)の深夜に書き上げ、午前0時すぎにメールで入稿した。すると翌21日(月)の午後1時前に、担当者のNデスク(産経新聞社の経済本部所属)から「いただいた原稿の件でおうかがいしたいことがありまして」と岩本あて(自宅電話および携帯)に着信。
電話に出られなかった岩本が少し遅れてコールバックしたものの「出たり入ったりしていまして」(電話口の女性談)というN氏にはなかなか繋がらず、結局その日の夜10時半頃になってようやく電話で両者の直接対話が実現。
で、そこでN氏から真っ先に言われたのが、
「原稿でお書きになられたサイトを見に行ったんですが、これをやっている方々って、産経新聞とはスタンスが真逆の人たちなんですよね……」
というセリフだったわけだが、これに対して私は
「産経新聞さんにとってはそうでしょうね」
と、ごく簡単に相槌を打った。
もちろん、そんなことは私だって書く前からとっくにわかっていた。それでも何故そういう原稿を書いて送ったかといえば、そもそも「市民メディアの現状レポート」を趣旨とするこの連載において、執筆者である私にとって取材対象となる「市民メディア」の政治的なスタンスなどははっきり言って「どうでもいい」類いの話だったからだ。
実際、これまでに連載で紹介した事例の大半は
熊本の住民ディレクターや「
東京大仏TV」のように政治的なイデオロギーがなんたらかんたらという話とはおよそ縁のないケースだったし、それこそ地方自治体や総務省が熱心に支援している市民メディアやイベントについても、応援する見地から何度となく記事を書いてきた。
そうした流れからすれば、確かに「NPJ」は「左」に偏りすぎていませんかという見方はあるだろう。というか、明らかに「左」だよな(笑)。ただ、ここへ既に転載した“幻の原稿”をお読みいただいてもわかる通り、執筆者である私の主眼はあくまでも「弁護士という人々が独自のメディアを持つようになった」ということのケーススタディの紹介にしかない。
要するに上の「弁護士という人々が独自のメディアを持つようになった」の中の「弁護士」の部分が「右翼」であり「天皇」であり「被差別部落出身者」であり「障害者」であり「創価学会員」であり「オウム信者」であり「オウマー」であり「拉致被害者の会」であり何でありで良いのである。つまりは大手マスメディアがフォローできないでいる人たちの声を代わってフォローしながら世の中に発信していけるメディアがあってほしいな、というのが私の真意。
んで、そのうえで言えば、これまで約2年4ヶ月の連載中、「産経新聞とはスタンスが真逆の人たち」に関する記事など既に何度も書いてきているのだ。にも拘らずこれまで担当者からクレームが来ることなどは絶無。それこそ私自身が関わってきた「
共謀罪TV」について書いて入稿したこともあるが、それでも「ビジネスアイ」側からは何も言われず、編集者が原稿を読んだうえで決めた見出しも添えられた記事が、毎週木曜日にはほぼ原文そのままに掲載されてきたのである。もとより、言うまでもなく私が仕事をしているのは「フジサンケイビジネスアイ」であって「産経新聞」ではない。
「ご存知かどうかわかりませんが」とN氏は察したように言った。「実は昨年11月からフジサンケイビジネスアイは産経新聞の経済本部と編集を一体化させてやっていこうという形になっていまして……」
もちろん、そのことも知っていた。ただし、それは編集サイドから知らされたからではなく(実際その種の案内は外部寄稿者である私には全然来なかった)、去年の11月に交替した担当者が産経新聞経済本部のA氏だったために「おや?」と思い、自分で調べて知ったのである。
ちなみに上記のN氏は今年1月10日付でA氏に替わって私の担当になったばかりの男性で、ここまで入稿時に電話やメールでは何度か連絡をとりあっていたものの、直接会って話をする機会はまだなかった。というか、そもそもこの「マスメディア構造改革」の連載担当者は2年4ヶ月の間とにかくころころとよく替わっていて、前任のA氏にしてもわずか2ヶ月での交替(しかもこの人からは最後までメール連絡のみで電話の1本もかかってこなかったため、男性なのか女性なのかもわからなかった)。
加えて、昨年末のこの連載では「
レイバーネット日本」という、産経にとってはNPJ以上に「真逆」度数の高いメディアを紹介していた事例が既にあったにも拘らず、当時の担当者であり、N氏と同じ産経本体の経済部所属であるA氏からは事前にも事後にも何の注文もなかったのである。
他方、今年に入ってN氏が新たに担当になったことで、「ちょっと変わってきたのかな」と思った部分はあった。というのは、この前週の連載で「
G8メディアネットワーク」について紹介したところ、着任して早々のN氏が「これをやっている人たちはスタンス的にどういう人たちなんでしょうか?」と、訝しげな口調で電話を掛けてきたからだ。この時は私からの説明に対してN氏も納得したらしく、その後は普段通りに原稿が掲載されている。もとより、N氏からはその際、「今後この連載についてはこうしてほしい」といった類の注文は一切もらっていない。
したがって上記のN氏の言い分は「媒体側の一貫した主張」というよりも、単に「担当者が交代したという理由で話が全然変わってしまった」という、サラリーマン社会にはありがちな事務的な脈絡のなさから生じたものに過ぎないのではないか――という印象を、外部執筆者である私としては持たざるを得なかった(まあ、着任早々にたまたまその種のネタが2回続いたのでびっくりしたのかもしれないとは斟酌するが)。
もとより紙面にその記事を載せるか載せないかはあくまでも媒体側の判断することであり、執筆者側に異論があったとしても最終的には先方の決定に従わざるを得ない。とはいえ、その決定を覆す権限はなくとも批判することはあくまで私の自由であるし、最終的に上記の電話でN氏が実質的な「連載打ち切り」を私に告げるに際して展開した論旨は、正直に言って「なんだかなあ(苦笑)」というものでしかなかったのである。そのあたりを書き出すとまたズルズル長くなりそうなので、とりあえず「つづく」にします。ではでは。
(「つづき」は
こちら)

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