撮影の為、恒例の裏穂高へ。
7時半過ぎに新穂高を出発。新緑が眩しくブナ、楓はそろそろ最盛期、ダケカンバ、シラソビレも芽吹き始めている。GW中、双六の小屋は営業していなかった為が、左俣林道は潅木や萌木が道を塞いでいて荒れていた。
林道は例年より残雪が多かったが、秩父沢は例年並。
東尾根は予想通り下部の雪は殆どなかったので大ノマに詰めるか迷ったが、上部はしっかり雪が着いていたので取り付く。
今回、昨年と同じく時期が時期なので6本歯アイゼンにしたのだが、これは少々失敗だった。
下部のブッシュ帯はまだ良かったのだが尾根上に出てからは腐った雪と、露出した地面の段差に手こずり前爪がないことを後悔する。
それでも体力的には余裕があったので、着実にステップを作り、標高2800メートル弱の勾配緩やかな斜面を削って幕営。夕方は高曇りになってしまい撮影はダメ…。
夜はテントの周りを一晩中ライチョウがゲーゲー鳴いていて何度か起こされる。
翌日は春特有の霞がかかっていたが晴れで一応撮影…。
撮影を一段落して荷物をまとめ山頂へ向かうが、直下が巨大な雪庇になっていた。
一応GW中に登ったであろうパーティの雪庇を削った後があったが、ほぼ垂直。
よく考えれば厳冬期に抜戸南稜を登った後、この尾根を下った時はまだ正月明けであった為それほど雪庇は発達しておらず楽に下れたが、そもそも笠主稜線の東面は春には後立山に匹敵する巨大な雪庇のマンション地帯。
ザイルはいらんまでも流石に6本歯アイゼンでは突っ込む気になれず…(山頂まで20メートルもなかったが…)
まあ、前回と同じく撮影目的だったので特に山頂を踏む気もなく、直下の雪を慣らして残りの撮影を済ませる。
双六へ続く稜線は春らしい穏やかな斜陽に照らされていて岩雲雀の鳴き声が気持ち良かった。
下りは腐れ雪と地肌に悩まれて、これまた取り付きまで戻るのに非常に神経と労力を使う。(尾根上は広くて緩やかだが、両端は傾斜がキツいので一旦スリップするとイッてしまう…)。こういう場合はこの時期でも完全冬用の足回りが安心出来るのだが、地肌を歩く距離も長いので足への疲労度負担を考えると季節的に判断が難しい…。
小池新道の入り口辺りで2人の山スキーヤーに出会い、ワサビ平小屋で小屋明けを調査しに来た営業所の人と出会う。長かった雪の時期も終りを告げ、そろそろこの周辺の山域も目を覚ましそうだ。
「陽光の 心愛しき我が峰に 残す雪路と切なさと」
なんて大変な思いをさせられ雪だが、降りてしまうとこんな句も浮かんできてちと名残り惜しい気もする。
毎月通っている山域だが、先月とは異なる新緑の鮮やかさに改めて奥飛騨の四季の変化とその美しさに心打たれる。
帰り際、トンビが目の前に降りてきてしばしの別れを告げてくれる。ここらの山域には毎月行ってるケド、仕事だからということを別にしても飽きるどころか行く度にその美しさと厳しさを心と体で感じ取り、心穏やかになれることがとても幸せ。
次回は夏真っ盛り!(の予定)…。入道雲の下、美しき奥飛騨の里と裏穂高の山並み、そして彩り麗しき花達に早く会いたいものだ。
「人の世に生まれし身すら至極れど 穂の添人に優る悦なし」