kamba&waka野郎(記)の雨ガッパコンビで北アルプス主稜線を縦走してきました。
ルート:大喰岳西尾根〜大キレット〜涸沢西尾根
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経験の浅い私にはかなり背伸びの計画で東海の皆にだいぶ心配を掛けました。だから、大キレットに入る時に
・天気が悪ければ行かない
・雪の状態が悪ければ行かない
・wakaが体力的・技術的に無理そうなら行かない
という約束を東海の皆と交わし、何とか山行許可をもらうことができました。
初めてコンビを組むkambaさんともこの山行についての考えのすり合わせ、荷物の軽量化の徹底など万全の準備をし、「結果はどうあれ、とにかく二人で笑顔で下りてきましょう!」と打ち合わせを締めくくり、いざ出発!
1日目
3/13(水) 曇りのち雨
06:00出発
08:00白出沢出合
10:30滝谷出合
11:20槍平
11:40槍平発
12:30大喰岳西尾根取付
14:00 2450M付近 幕営
この日は強い雨が午後から降る予定だったので槍平の小屋で雨をやり過ごそうかと話しながら歩き始める。
でも涸沢西尾根までトレースがあり、さらにここ一週間の春の陽気で雪がしまっていて滝谷出合手前からは沢沿いをずっと歩けた事もあり槍平には予定より早く到着。
槍平で雨雲を見上げるwaka
雨雲もまだ本格的に迫ってきていない感じだったので、少しでも高度を稼ごうと大喰西尾根に取りつく。
尾根もずっとつぼ足でラッセルはほとんどなく、先頭を交代しながらゆっくり高度を上げていく。
当初の予定では森林限界を抜けた2600M付近まで行く予定だったが、ちょうど2450M付近にテント一張り張れるいい場所があったし、予報では風もかなり強くなるみたいなのでこの樹林帯の中で泊まろうという事になった。雪をしっかり深く掘って整地し、風除けもしっかり作って本日行動終了。ちょうど雨もポツポツ降り始めていた。
JETBOIL修理中・・kambaさん誰よりもJETBOILに詳しくなりました
テントの中でさあ一息つこうとkambaさんがJETBOILに火をつけようとしたが、どうも管が詰まっているらしく火がつかない・・!「ちゃんと家で着くか試してきたのに・・!!」と焦ってついに本体を分解し始めるkambaさん。その後なんとか詰まりを解消したが「JETBOIL敗退になるところでした・・」と、その後この山行一番の核心を振り返っていた。。
一騒動終えた後、waka作の豚キムチ鍋ペミカンを食べ、なんやかやと話した後19:00頃には寝袋に入った。風雨はそれほど強くなく、夜には雪に変わっていた。テントは雪に覆われ雪洞状態になり、700gのシュラフに潜った私はぬくぬくだったが夏用シュラフのkambaさんは寒くてモゾモゾしていた。
2日目 3/14(木)快晴
06:00 出発
10:30 大喰岳頂上
12:45 南岳避難小屋
雪も止んでさあ出発〜
朝起きると雪は止んでいた。昨日の雪で15〜20cm程度の積雪。アイゼンをつけて出発するもののズボズボになり、途中からその上にワカンを装着。しかし私のワカンが紐を短くしすぎていてワカンがつけられない!しょうがないので私は後ろからアイゼンで追いかける。樹林帯を抜ける2600m付近までそんな調子だったが、それ以降は雪しまっていて歩きやすくなったし、ペースを合わせる為にもkambaさんもワカンを外す。ちょっと草付き混じりの箇所があったりしたが、特に悪い箇所もなく順調に高度をあげていった。
そして、あれ、上にkambaさんが見えなくなった?と思ったら、ポンと大喰岳頂上の水平な大地に到着していた。
どっかの惑星に着いたみたいだ・・・
そこには信じられない位最高の景色が待っていて、まるで地球じゃないように思えた。
すごくここにいる自分が不思議に感じたり、いま自分がここにいる事に感謝する気持ちでいっぱいにもなったり、とにかく感動して涙が出た。
南岳へ向かうkambaさん(小さいけど真ん中辺にいます;)
昨日の雪で稜線がどうなっているかと心配していたが、どうやら風で雪が飛ばされたらしく、その後南岳への道もラッセルなく快調に進む。絶景を堪能しながらいくつかのアップダウンを越え、南岳避難小屋に到着。今日は明日の核心に備えここで行動終了。ゆっくり休むのだ。
おじゃまいたす!
入口も少し掘ればすぐ開けれた。中にはトイレもついていてテントも張れる。さっそく昨日ぬれそぼったものを乾かそうとテントの中で火を焚き飲み物を飲んだり、小屋にあったカップラーメンを食べたりする。
しかしどうやらkambaさんは高度障害が出たらしく、頭が痛いとぐったり。kambaさんのと私のシュラフと二重にkambaさんを包んでしばし休んでもらう。高度に弱い体質の人は2日間で3000mあげるのはキツいのかもしれない。今回はゆったりした予定でまだよかった。
一方私は小屋の入口からまた景色を眺めながら歯を磨いたり体操したりしながら一人興奮と緊張を落ち着かせようと過ごす。
夕飯を食べ始める時もまだkambaさんは静かで昨日のよくしゃべる様子とは違っていたが、今日のディナーは待ちに待ったkambaさんのカレーペミカンの日なので私は内心はしゃいでいた。ラード1本は入れてないと言っていたが噂どおり真っ白のペミカンに満足し、全部平らげた。
そして翌日私は下痢になったが、あれは余分に食べたカップラーメンのせいかな・・・
やる事もないので、18:30頃には寝始める。
「明日はどんな一日になりますかねぇ・・」
3日目
3/15(金)快晴
06:15 出発
09:00 A沢のコル
15:00 北穂山荘
いよいよ核心の3日目だ!kambaさんもどうやら頭痛が治まったらしく一安心。暗い小屋の中靴を二人とも黙って履き始める。お互い緊張してるのが分かる。
朝日に照らされるキレット
小屋の戸を開けると今日も快晴、風は強いがこれくらいならいける。みんなと約束した条件は今のとこ全部クリアしている!
「じゃあとりあえず最低コルまで行きましょう」
最低コルへの下り。短い足でがんばるwaka野郎・・
南岳を超えて一気に高度を下げキレットの最低鞍部に降りる。雪・岩ミックスのルートだが、はしごや鎖もあってミスは出来ないけど、いつも通り歩けば大丈夫な感じだ。kambaさんも常に私を振り返り様子を伺い、一歩でも悪い箇所があれば私に注意してくれた。
最低鞍部に着いて「どうですか?」と聞かれたが私はこれなら行けると思ったし「むしろちょっと楽しいです」と言った。
「そりゃー頼もしいですね・・でもちょっとでも怖かったり危ないと思ったら言ってください」
「はい!」
というやりとりをして、後はひたすらキレットを進んだ。
岩に書いてある○印に沿っていきます
夏来た時はもっと両側が切れたっていて怖かったが、今の時期は両側雪の斜面になっており、怖いというより「ここ、スキーで滑ったら楽しいんじゃないかな・・」と思えたりして、あまり緊張せずに済んだ。
ロープも出さずにキレットを通過しA沢のコルに到着。
ここらへんが飛騨泣き・・・かな?
ここから北穂までが滑落の事故が多いという今日一の核心部に入る。岩についてるルートの印もあって分かりやすく鎖やハシゴもあって途中までは順調に進むが、途中雪壁が出てきて初めてロープを出す。
南岳を下っている時もすでに太陽で温められ雪が不安定だったので、いくら北面とはいえやっぱりこの陽気では危険なのかもしれない。
北穂への最後のピッチは長い雪壁
kambaさんに従ってキックステップで雪壁を登る。怖くはないが、重い荷物と空気が薄いので数歩登るとゼェゼェする。足もパンパンになる。岩場と雪壁のピッチを数ピッチつなげ、ついに北穂山荘に登り詰めた。特に難しいピッチはなかったけど、ルートの印が途中から判然としなくなり、正しいルートだったかは定かではない。
とにかくヤッターー!!核心を越えた!
「この尾根はどうでしたか?」というkambaさんからの問いに私は「面白かったです!」と答えた。
さて、今日は北穂の冬季小屋泊。ここはキレイでギリギリ2天が張れるスペースもある。トイレはナシ。でも窓から絶景を眺められて大満足だ。
荷物を置いて小屋の上に登ってみるとこれまた絶景。前穂北尾根の立派な姿やもちろん今日歩いてきたキレットも見える。ここに一人立っている事に再び感動してウルウルする。そして富士山が近くに見えたので手を振ってみたりする。オーイ!
今日来たキレットを北穂山荘から振り返る
そして晩は核心越えを祝って・・ドライフーズ丼。。3日目からは軽量食でぺミカンはなし。でも美味しかった。
明日もまだ厳しい箇所があるので気は抜けないと私は早々に19:00頃にはシュラフにもぐる。kambaさんは寝るのが早いとまだラジオを聞いていた。
4日目
3/16(土)快晴
06:00 出発
11:20 涸沢岳
13:00 F沢のコル
15:00 蒲田富士通過分岐
15:30 2400M 樹林帯 幕営
窓から朝焼けの北アルプスを眺めながら出発。今日は上手くいけば涸沢岳を越えて西尾根を下り下山できるはずだ。
涸沢岳へ出発!「今日も気が抜けませんよ・・・!」
涸沢岳までも夏道の印が分からずルートが判然としなくなり、迷いながら夏道を探しながら進む。途中一か所間違えて岩壁に乗り上げて懸垂する場面もあった。他にも迷った人がいるらしく、残置スリングがあった。
悪いとこには鎖があります
雪もより不安定になり、kambaさんがつけたステップに乗り込むといきなり雪が崩れて蟻地獄みたいにはまり込んだりする。それが一番怖かった。
雪壁をリードするkambaさん(小さいけど・・・います;;)
山頂まで悪いトラバースや雪壁など、合計5,6ピッチはロープを出してもらい涸沢岳山頂に着いた。ここが一番風が強く少し休憩してすぐ涸沢岳西尾根に向かう。
涸沢岳山頂より奥穂方面
涸沢岳山頂より前穂北尾根。どっしり。
残る核心は蒲田富士のナイフリッジの通過だ。
蒲田富士へ向かうkambaさん(これなら見えるはず・・!)
F沢のコル手前まで下りていくと、向こうから蒲田富士を登って来る登山者の姿が見えた。土曜日だから誰かに会うと思っていたが、これでここから先はトレースが期待できる。
ちょうど蒲田の核心部分でとすれ違ったので先行者のトレースはあったが「ここまで来て何かあってはもったいないですからね」とそこも1ピッチだけロープを出してもらい、怖い思いをせず全ての核心を無事通過する事ができた。
ナイフリッジを行くkambaさん(最後にやっといい大きさ・・)
あとは樹林帯を下るだけだ。ちょっと休憩してこの後一気に下山するか話しあったが、私がキックステップしすぎで足が痛くなってしまい、集中力も切れ始めて小さなミスが多くなってきたので結局樹林帯でもう一泊することにした。
最後の晩餐はチラシ寿司。もう飲み物も少なく贅沢なものはなかったが不思議と下界で食べたいものを思い浮かべる事はなかった。また19:00頃にはシュラフにもぐり始めたが今日はkambaさんの方が先にイビキをかき始めた。
私は閉まらなくなったテントのジッパーの間から入り込む粉雪を顔に浴びながら、もうシュラフが濡れてもいいんだと思って安心していた。
5日目
3/17(日)快晴
06:00 出発
07:20 涸沢西尾根取付き
09:30 新穂高温泉下山
今日は帰るだけだけど、いつもと全く同じ様に支度。だんだん二人の気が合ってきて今までで一番早く支度ができた。
足の指がまだ痛むのでゆっくり下山開始。昨日すれ違った二人パーティの他にもソロの登山者が2人いて、彼らのつけたガチガチに凍ったトレースを歩く。みんな奥穂を目指すようだけど、今日も快晴なのできっと素晴らしいに違いない。
涸沢西尾根も特に難しいところはなかった。更に黙々と新穂高までの林道を歩き、新穂高の駐車場到着。
もう内腿がつりそうなくらい足が疲れていたが、無事二人共笑顔で下山することが出来た。
というわけで今回は天気に恵まれ、全てのコンディションが良く、無事行って帰ってくることができました。
今までにない緊張感での山行と、色々な雪質の雪稜を体験できたこと、それから山行検討会での皆とのやりとりを始め、kambaさんから学んだ、準備の仕方から実際の判断や行動の仕方など全ての事が私にとって本当に貴重な経験となりました。
今後もっとステップアップして雪稜に挑戦していきたいです、皆さんありがとうございました!