みんなに「今回の合宿ではレベルアップしたクライミングを」と言ってきた都合上、私も多少は難しいのをってことで、「春一番」をやってみる事にしました。最高グレードはベルジュエールと同じで11bですが、5.11台が2ピッチあるのと、もう一つのピッチには5.11aPD (PD:プロテクションディフィカルト)が付いてて、ベルジュエールより明らかにワンランク上のルートと言うことです。私にとっても新しい領域。ある意味で「達磨バム」や「アレアレア」といった十一面の高難度マルチへの入口的なルートという位置づけかもしれません。
そして今日のパートナーは・・・。

○○さん!赤井さん!(本名:iwa)
結果的に今回は、11aPDのピッチで私が激落ちして敗退。ベルジュエールに転進したものの、チムニーのピッチがべたべたに濡れていてまたもや敗退と、結局のところ壁の上に立つことは出来ませんでしたが、二人ともしっかり満足し、同時に、安全上の問題や、次に向けての戦略など、反省することもたくさんあり、学ぶことの多かった登攀でした。以下、ピッチごとの記録です。
1ピッチ目(5.11b):iwaリードでスタート。核心部出だしのハング越えでラインを間違えてしまい、それでも頑張って進んでいったが、そのうち叫びながらふってきました。
正しいラインに修正して、その後上部のスラブでもテンション。でも次回は何とかなりそうな感じです。私も一応ちゃんとムーブしながらフォロー。アップなしでいきなりなのでこれが物凄くパンプします。UPP(腕パンパン)状態でビレイ点へ。
2ピッチ目(5.9+):UPPのままで私がリード。相変わらず難しいスラブのトラバースから微妙なコーナー。5.9+なんてみみっちいことは言わずに、10aにしてほしい、10aに!
そのまま次のピッチもつなげて、大きなテラスのコーナーの木の根っこまで。
3ピッチ目:iwaリード。木の根っこをつかんでワイドっぽいところを登り、右に回りこみながらクラックぞいにスラブを登っていく。ここは数少ない簡単なピッチで気が楽なのだが、こんなところで「難しさがちょうど良い」などと言って喜んでるようでは、この先の難しいピッチは厳しいだろう。(私です。)春一番のハンドクラックの基部に、カムとナッツでビレイ点を作る。
4ピッチ目(5.10a):引き続きiwaが行く。

かっこいいハンドクラック。
下の方はちょっと濡れてたが、とくに問題なし。上の方のコーナーっぽくなってるところの処理がちょっと難しい感じで、やっぱり叫んで越えていった。このクラックのあと、本当は泥の詰まったコーナーのワイドクラックを登って白熊の頭に出るのだが、そこには行かずにもっと左から直接白熊のコルにでた。
5ピッチ目(5.11aPD):白熊のコルからしばらく眺めていたが、PDとは言っても所詮は11aなんで、何とかなるだろうという結論(?)に達してスタート。しばらくは簡単なワイドぽい所を気楽に登っていくが、あっという間にPDの下に着いてしまった。ここでアンダーのフレークにカムを2箇所固め取りして、深呼吸したら発進! 結構な全力ムーブで2mほど進んで、フレーク内に怪しいエイリアンをセット。そしてさらに上のフレークに行くが、若干ぬめる感じで思ったより掛りが良くなく、それで無理に足を上げていく途中で手が抜けてしまい落ちた。先ほどのエイリアンは社交辞令程度の抵抗は見せたものの、あっけなく抜けてしまい、ビューーンと落ちる。さらにこのときiwaが少しロープを流してしまったようで、隣の壁で一部始終を見ていたせんさんによると、「身長の5個分は落ちてた」ということであった。9mぐらいか?
表面上はこのときはまだそれほど戦意を喪失しておらず、もう一回行く。今度は前よりちょっと上にエイリアンをセット。そして前より少し上のホールドを持ってみるが、やっぱりそんなに良くない。体の中では先ほどの恐怖が脈打っている。今の私にこのまま進む力も勇気もないことを悟り、そっとエイリアンにテンションした。 が、また抜けた。ビューーン。
これで完全に戦意喪失。最後のカムまでごぼうで戻り、カムを回収しながらクライムダウン。十一面岩高難度マルチの入口で、門前払いを食らいました。
核心のPDピッチ (写真悪くてすいません;;)
このあとはベルジュエールに転進。
ベルジュエール5ピッチ目(5.9+):ベルジュエールのハイライトピッチは、iwaが行きます。コツとしては、クラック内をジャムで行けるところまで行き、しっかりレイバック出来そうな場所まで来たらレイバックで突っ込む感じなのだが、iwaは、「濡れてる濡れてる」とつぶやきながら、早めに外に出てしまい、あとは全力レイバック(私は全力で応援)。叫びながら壁の向こうに消えていった。
いやー、このピッチはやっぱりいいなあ。ヨセミテみたいだ。登っても楽しいけど、人の登りを見てるのも楽しい。
6ピッチ目(5.8):プロテクションの取りにくいチムニーで、私がリードする。ある程度予想してたことだが、やっぱり濡れてました。それでも一段上がって本チムニーに入り、ひょっとしたら行けるかもと思ってさらにもう一段あがると、昔撤去されたはずのリングボルトが、また同じ場所に生えてました。きのこのようなもんだな。あるものは使おう。
そこからさらに2mぐらい登ったところで、残りの数mはどうしても両面がべちょべちょに濡れてる場所を通らなければ行けないことが分かり、ちょっと自信がないのでやめにすることにしました。合計10mぐらいクライムダウンしてビレイ点に戻る。
あとは1ピッチ懸垂して、簡単スラブを登り返し、白熊のコルから歩いて降りました。

白熊のコルにて、反省のポーズ