2009年、マッチ箱が崩壊する前年に昔の山仲間と北岳に行きました。といっても、他のメンバーは皆このルートを登攀したのですが当時の私はアルパインルートを登る力はなく、一人でさみしく一般登山道を登りました。その時からずっと登りたいと思っていた北岳バットレス、やっと今回挑戦する事ができました。
メンバー:toku、taka、waka(記)
行動ルートと時間:
7/25 芦安発(5:15)〜広河原発(6:50)〜大樺沢経由〜D沢?に入る(9:30)〜道迷い〜下部岩壁Dガリー大滝登攀開始(12:40)〜四尾根取付着(17:00)
7/26 四尾根登攀開始(4:20)〜終了点到着(8:30)〜北岳頂上(9:10)〜白根御池小屋経由〜広河原着(13:30)
食料(夜・朝):アルファ米200g+フリーズドライの丼2袋(アマノフーズ)、飲料200ml/一人一回分。水は一人2.5L以外+共同の水1L。
1日目
大人気のルートなだけに渋滞で敗退する可能性が高かった為、混雑する時間を避けて登攀し、初日に肩の小屋まで登ってしまう計画で行きました。
しかし予想以上の人・人・人!!3人共かなり睡眠不足で広河原までのバスの中で寝る計画も、人が多くて立ち乗車となり最初から予想外な展開。大樺沢の登山道も渋滞で止まってばかりいました。ザ・夏山!ちょっと参りました。
暑さと疲労で足がふらついてきた頃にやっとC沢に到着。沢で水を汲み足し、予定していたD沢を探してロープが張っていったそれらしい沢に入ります。今年は雪が多いと予想してアイゼン・ピッケルを持っていきましたが、取付きまでは雪渓を避けて行けました。
取付きまでのガレ場。落石注意!
今回は第五尾根支稜に取付く予定で取付を必死で探しましたが、入った沢がD沢ではなかったのでしょうか、思い込みで違う尾根を登ったり薮こぎしたりして体力を消耗してしまいました。
ヘロヘロになってようやくDガリー大滝と思われる取付へ到着。
気を取り直して登攀開始!です。
下部はオールtokuリード。
1P目
簡単なフェイス〜リッジ
2P目
緩やかなリッジ〜緩傾斜地帯
ここから横断バンドを渡るが、どれが正解のラインかわからない。左側の石がゴロゴロしてるガリーを10m程コンテで登って細いバンドはロープを出した。上部に2パーティ程いて、落石がありバンドを渡る時は緊張した。
四尾根へは色々なルートが取れそうで迷う
四尾根の取付まではここからさらに四尾根下部のピッチを登ります。ここもオールtokuリード。
1P目
凹角〜レイバック登り。
私は荷物が重くて体が振れず、周りのフェイスを使ってなんとか登った。
2P目
短いけど難しいクラック。
ここが全体を通して一番難しかった。キャメの3番があると有効。
3P目
フェイス
上部外傾しているところは右からでも左からでも登れる。私は左側のスラブを登ったが、ここもスタンスが細かく怖かった。
ここの終了点のバンドで右に行くか左に行くか、真上のハングを登るか?分からなくなる。3人で右往左往しながら、右側からの巻道を発見し、コンテで登る。登ったらすぐ分かるのに、、だいぶ時間をロスした。すぐ左側のリッジに戻り再度ロープを出す。
4P目
フェイス
下部少し難しいところがあるが、ホールドは豊富。
ここまで登ってやっと、メインルートの取付についた。
時間はすでに17時。目指す肩の小屋まではとても明るいうちに着けない。今日は小屋のビールで乾杯の予定だったのに!少しでもピッチを伸ばしてもう少しいいテラスを探すか迷ったが、ここよりいい場所があるかどうか分からなかった為、今日はここでビバークすることになった。
もしここで敗退!となったとしても、正直もう私には白根御池小屋まで降りる気力もない程疲れきっていた。皆に荷物を持ってもらって一番軽荷だったのに、ひどい登りだった。
二人ともアルファ米200gはペロリと完食でした。オツカレサマ!
ずっと私たちを見守っていた鳳凰三山や八ヶ岳、そして裾野まではっきり見える富士山が赤く染まって、空に天の川が出るまで、私たちは外でご飯を食べたり写真を撮ったり、今日の出来事を色々話したりしながら山の中で過ごす時間をおおいに満喫しました。
tokuさんが綺麗に整地をして丁寧にツェルトを立ててくれたおかげで、3人ともぐっすり寝ることができました。
風もなく暖かめな夜でした。20時就寝。
2日目
ゆっくり朝ごはんを食べる為に2時起床。ツェルトから出ても寒くなく快適。すでに白根御池小屋から四尾根を目指す刺客たちの灯りがチラチラ見えています。しかしtokuさんは焦らず今朝もドリップコーヒーを作る。
やっと明るくなってきた4時半登攀開始。
ここからはルートは明瞭でスムーズだった。
1P目 tokuリード 40m/W
クラック。フェイスも使えるので下部のクラックより簡単に感じた。
2P目 waka 40m/U
フェイス。階段状で簡単だが初めてのリードで緊張した。ここで先行パーティに会った。昨日はここの終了点でビバークしていたらしい。この先は小さなテラスしかないらしく、結果的に私たちは昨日のビバークが正しい判断だったと分かった。
3P目 taka 40m/U
クラックがある緩傾斜。クラックだけど周りのスタンスが多く簡単。
takaはの登攀は全体的に安定していて私よりスピードも速かった。
4P目 taka 30m/U
フェイス。ピラミッドフェースの頭に乗り上げる。ここも簡単で問題ない。
5P目 toku 30m/W+
フェイス。少しバランシーだけど右側にいいホールドがある。マッチ箱へ乗り上げて視界が開ける。

ここからマッチ箱のコルへ20mの懸垂。
6P目 waka 30m/W
コーナ〜カンテ状のクラック
結構ランナウトするので怖い。
7P目 waka 30m/V
カンテ〜フェイス
高度感があって緊張するが楽しいピッチだった。枯れ木のテラスへ。
8P目 taka トラバース 15m
短いが切り立っていて怖い。高度感がある。
9P目 toku 40m/W+
チムニー。少し外傾していて体が外に出るけど、ホールド・スタンスが沢山あるので結構楽しく快適だった。
終了点にて。今回takaさんがたくさんいい写真を撮ってくれました。
これで全てのピッチが終了!終わってしまって寂しいけど、無事完登出来て感無量です。
お花畑に囲まれた大きなテラスで荷物を片づけ一息ついて頂上へ向かいます。
稜線へ出るとすごい風。反対側だったらだいぶ寒かった。頂上で360度のパノラマを楽しみ、肩の小屋でビールで乾杯して帰ってきました。
もっと余裕のあるクライミングができると思っていましたが、、、とんでもございませんでした。
体力がないというのもですが、自然の中で戦う力と経験がまだまだ足りないと思い知らされて帰ってきました。
でも色々勉強することが沢山あって、そして最高の天気に恵まれて、素晴らしいクライミングになったと思います。
リーダーのtokuさんは、私たちの体力・気力の状態を本当によく見ていてくれて、登攀の際の状況判断はもちろんそれ以外のすべての事をよく考えて気を配ってくれていたと思います。
tokuさんありがとう!
次に来るなら四尾根〜中央稜をつなげて行きたいと話して帰ってきました、今回はいっぱいいっぱい過ぎたのでここへ帰ってくるまでにもっと成長しておきたいです。
お疲れ様でしたっ!富士山にカンパイ〜