メンバー iwa、toku(記)
今回で今年の無雪期マルチ計画は終了です。
去年の今頃はiwaさんと「俺たち弱いなぁ」って、毎回言っていました。
今年は「強くなるために」を意識した山行を心がけました。
まぁ、「強い」と言っても、登る力から重い荷物を担ぐ力、長時間行動をする体力と精神力、悪天候やアクシデントに遭っても冷静に行動できるセルフコントロール力・・・など、
いろいろあると思います。
もちろん、すぐに強くはなれないけれど、それを意識した事で1年前より「強くなれた」と実感しています。
今年は、「行った事のない場所」を意識して選択しました。
いろいろとわからない中で試行錯誤することは「強さ」に直結すると思います。
そして、今年最後に選んだのは「明星山P6南壁 フリースピリッツ」。
計画では1泊して「マニュフェスト 10b」もでしたが、2日目はあいにくの雨予報。
去年までなら「一本だけ登るには遠いから、やめとく?」みたいになったかもしれません。
でも、今回は2人とも行く気バリバリ。気持ちは1つでした。
この南壁のちょうど真ん中あたりがフリースピリッツのラインです。右上の小さく見える黒い部分が「鷹ノ巣ハング」。その左下の黒い部分が「への字ハング」。ルートはその間の弱点を登ります。
6:00
駐車場着。売店横の踏み跡はやや急でした。徒渉は飛び石で渡れて一安心。
6:50
1P目スタート。本当は6時ジャストにスタートしたかった。最初の遅れは最後に後悔することになりますが・・・。
しばらくは太陽があたらなくて、結構寒かったです。
7:30
3P目。ここからがクライミングな感じ。4P目の下り気味のトラバースはアンダーと悪いスタンスでやや緊張しました。
9:00
5P目。ここでやっと太陽があたりますが、一気に暑くなります。天気のいい日なら、適期はもう少し先かな??
ウメボシ岩へ向かって左上するiwaさん。この先のウメボシ岩の乗っ越しと慣れていない下りトラバースは怖かった。
6P目は少し間違えて時間をロス。ルーファイ力がなかったです。
10:30
7P目。このピッチと8P目は、最新のトポでは5.8となっていますが、ラストに出てくる5.8よりだいぶ登りやすかった。
7P目のハングの切れ目を登るiwaさん。それなりに立っているので、それなりに緊張しますが。
8P目のクラック 簡単そうだけどクラック以外のホールドは乏しい
11:55
9P目。中央バンドは浮石がたっぷりなので、落石は厳禁。
10P目の右上ランペは簡単だけど、それなりにカムを取りました。ほぼノープロでもいいくらいなのですが、もし落ちたらマズイのがその理由なのです。が、時間短縮を考えるとこう言う部分も考えないといけません。安全を考えると難しいところですが、時間をかけるのも危険につながるので。
浮石がたっぷりの中央バンド。
10P目の右上ランぺ 自分がちっぽけに思えてきます
12:35
11P目。右側の悪いとこへ行ってしまって、またしても時間をロス。ここでは、それなりに時間を費やしてしまった。このルートは弱点を狙ったトラバースが多いので、全体的にルーファイはやや難しく感じました。下からの見た目ではわからないところもあって、今後の課題です。
後でデジカメを見た時にわかりやすいように、奇数ピッチのスタートは手でポーズをとりました。これは11P目のポーズ。
11P目。この上の分岐は左が正規だった。見た感じは同じように思いますが、右に行くと詰まってしまう。
11P目間違えたビレイ点 高度感はあるけど・・・ トポでは「バンドを右上」とありますが実際は小ハング下から左上気味
12P目。バックに雨飾山などの頚城の山々、眼下には小滝川と、まさにパノラマトラバース。私はリード中は絶景を楽しむ余裕はなし。
パノラマトラバースのビレイ点のtoku このピッチは全体的に脆かった
14:30
13P目。5.8ですが、ここが技術てきには一番難しい?疲れているからそう思う?高度感もあって、素敵な最終ピッチでした。
ここはフォローでよかったと思った私は、まだ弱かったです。
この後もロープは出しましたが、フリースピリッツとしては13Pですね。
これで、全ピッチ「オンサイト」できて一応は満足!
2日前のボッカ訓練と睡眠不足もありますが、本当に長く、疲れました。
南山稜を下っている時にヘッデン。車に戻ったのは17:45でした。
もっと、「時間と安全」のバランスを考えないといけません。
翌日の奇跡の天候回復を願って一泊しましたが、残念ながら雨。ずっと下道でのんびり名古屋まで帰りました。ちなみに、片道は約300kmでした。
車中はいつもそうですが、山に対するお互いの気持ちを確認し合う場所になっているので、どれだけ長くても心地いい感じがします。
今回のこと、これからのことをじっくり話し合いました。
さて、もうすぐ雪山シーズンです。無雪期の経験や試行錯誤してきた事を活かして、さらなる挑戦をしていきたいと思います。
もっと「強く」なりたいです。
追記:iwa
ここ2年くらいはずっと「強いってなんだ?」と考えてました。
難しいところに行く?グレードの高いルートを登る?夜になっても登る?
確かにすごいことですが、なんか違うと感じてました。
tokuさんとパートナーを組んで2年ずっと二人で考えてました。
色んなことしましたし、色々話合いました。
未だにはっきりとした答えは出てませんが、少しずつ成長できてると思います。
この2年積み上げてきたものは間違えではないことを信じたいです。
ちゃんとした答えが出るころには立派なアルパインクライマーになってるのかな?
前置きが長くなりましたが、フリースピリッツは技術的にはさして難しくない。
でも全てがそこに集約されているルートだと感じました。
壁の弱点を的確に突くルートファインディング、そしてそれを成し遂げた初登者の情熱。
そんなことを感じながら13ピッチという長いルートを堪能しました。
ただ、残念なのは最後の南山稜に抜ける藪漕ぎと下降路の悪さ。
これがなければ完璧です。
ブッシュがうるさくて腕は傷だらけになりました。
下降路ははっきりした踏み跡が途中までなく、暗くなる前に見つけられるか心配で少し焦りました。
今回の使用ギアはキャメ#3〜#0.3+#0.75、マスターカム#3〜1、ナッツ1セット、ヌンチャク9本、スリング計14本、フリービナ16枚。
最新のトポではカム類は「若干」と書かれてますが、それだとそれなりのランナウトを強いられます。
残置ハーケンもありますがそれほど多くなくカム類は必須です。
ビレイ点は古いハーケン、リングボルトの場合が多くカム、ナッツで補強したいところです。
とまぁ、堅苦しい感じになってしまいましたが、やっぱり楽しいです。
心を空っぽにして思いっきり楽しんで、感じて、それで笑顔で降りてこられるのが一番だと思います。
それが強くなる一番の近道なのかもしれませんね。