奥ノ平谷は台高の蓮川(はちすがわ)界隈でも最強の部類に入る難しい沢で、普通は2日かかる長く厳しく、私らのような素人には敷居の高い沢です。でも今年は非常に水量が少なく、普段はなかなか直登できないような滝がお買い得になって出てるという情報をえました。
もちろん水量が多い方が沢登りの「真価?」という点では高いのかもしれないし、滝も本来の迫力を見せてくれるんでしょうが、美しさは必ずしも水量と比例しないと思うし、私は簡単でも良いので出来るだけ滝を登って沢を進んで行きたい。どんなに迫力があっても、登れない滝ばっかりたくさん出てくる沢はどうも盛り上がらないです。
今回は日帰りで途中の佐助滝まで。水量が多かったり荷物が重かったら(私には)登れないような滝を軽い荷物でほいほい直登して登る、そんな登り方がしたくて行ってきました。
メンバー:kura、toku、しも、G
tokuさんは本日が沢デビュー! 「そんな初心者をそんな上級の沢に連れて行ってもよいのだろうか。」「え、まあtokuさんだから大丈夫だろう。ていうか、自分よりよっぽど登れるよ。」以上、私の心の中での会話。ということでOKになりました。
蓮川林道の終点ゲートの少し手前に車を停めて、奥ノ平谷出会を目指して沢に下っていき、8:50入渓。

最初はこんな感じの穏やかな場所をじゃぶじゃぶと。
tokuさんには良いウォームアップです。
1mほどの小滝を登っては、「滝なんて登るの初めてっす! 楽しいっす!」
うーん、なかなか良いぞ。
しばらく行って最初に出てくる大き目の滝は初音滝。ここは絶妙なチョックストーンをつかんで直登しました。

tokuも楽勝で登ります。
狭いU字溝になってて、水の逃げるところがないので、水量が多かったらどうにもならんのだと思います。

岩をくぐったりして進んで行くと、だいぶゴルジュっぽくなってきて、

戻り滝です。
このすぐ先を曲がったところに魚止滝があるのですが、大抵の人は魚止滝を見にいって、でも登れずに戻ってくるので戻り滝です。
戻り滝は長めの釜を泳ぎ渡って、左のオレンジ色のストリークのあるところを登ります。
そして角を曲がると・・・・・おおお!

何という深みのある美しさであろうか!
思った通りだ。この静寂な感じはこれぐらいの水量じゃないとでない。水が多すぎると釜が波立ってしまって、こんな風にはならないと思います。
そして見た瞬間に「これは登れる」と確信しました。
私は登る気満々でしたが、「リードしたい人は?」と聞いたらtokuが手を挙げたので、トライの順番決めじゃんけん。で、tokuの勝ち。
沢は初心者だけど、初段を一撃したりもする子なので、まあ何とかするだろう。

ロープを引いて釜を渡り、ステミングで登り始める。
やがて左の壁に移って、そのままするすると登ってしまいました。みんな大喜び。
二人はアッセンダーを使って登り、最後に私がフォロー。

フォローするわし
うーむ、ステミングはつるつるだし、最後の抜けもノープロにしてはちょっと悪いぞ。
正直言ってじゃんけん負けてよかった。tokuさん、Good Job!!
魚止滝は左の壁はわりと登られますが、水流の近くを直登してるパーティはそんなに多くと思うないので、わしらが登れたことで最高に楽しい気分になってきました。
このすぐ上の細長い淵のどんづまりの2段8m滝は淵滝というらしい(写真なし)。下段は歩きで、上段は出だしがちょっと悪く、落ちたら痛そうなので私は敗退。tokuのみ直登。
さらに進むと仙人滝手前のゴルジュです。

凄い場所なんだけど、ここの雰囲気は写真ではうまく表現できません。
暗く青く澄んだ淵を泳ぎ渡って、狭いトンネルのようなゴルジュに入っていきます。
その向こうに見えてる白い水しぶきが仙人滝。
仙人滝は今度こそ自分がリードさせてもらおうと思っていたのだが・・・。

私がもたもたしてる間に、しも隊長を先頭にロープもつけずにずんずん登っていってしまい、またも私の出番なしでした。言っておくけどこれも水が多かったら大変なんだぞ。今日はまあ簡単だったからいいんだけどさ。
ちょっと進んでゴルジュが切れたナメの所で休憩です。庭園のような素晴らしい場所です。

ちいさいけど美しい釜を持つ滝があり、

巨大なカツラの木があります。
ゆっくり休んで再びゴルジュ。くねくねと少し進むと法螺貝滝。
果たしてこれは直登できるんだろうか?
とりあえず基部までtokuを行かせる

しばらくオブザベしていたが、これというラインを見いだせなかったようだ。
ということは二段以上か?
しょうがないのでゴルジュを引き返し、さっきの休憩場所の少し上から左を巻いていく。ひとやま越えると法螺貝の落ち口が見えたので、そこに向かって下り気味にトラバース。ちょっと悪いのでロープ使用。

法螺貝は上から見ると、深いトイ状をねじれながら落ちていることがよく分かる。なるほど法螺貝だ。
法螺貝を越えるともう終盤です。いくつか小滝を越えていくと再び、おおお!

鎌滝。 こ、これどうしましょう?
何という空間だろうか。この狭い入り口の奥には、両側の壁が大きくオーバーハングしたまるで球形のホールのような空間が広がっていて、その天井が割れてそこから水がこぼれてきているような形。声を出すとホール内にこだましてエコーのように響き渡る。中に入らないと決して味わうことのできないこの大空間。

とりあえずみんなで泳ぐ。

kuraがちょっと登ってみるが行き詰る。
これの直登はあきらめました。なぜかというとロープが30mしかないからです!!
その後、大きなボルダーが積み重なったような場所を越えて、よく思い出せないけどちょっとだけ難しい小滝を全員で直登して、さらにあんまり記憶に残ってない20m滝を巻いて進んで行くと今日の目的地、佐助滝です。13:00頃。

こんな水の少ない佐助滝は写真でも見たことないです。
水が多いと左の壁もザーザーになるんだけど。
佐助滝の場合は水が少ないとただの汚い壁だな。
今日は簡単に登れそうです。
ここで沢装備をしまって下山にかかります。14:00下山開始。
ここから沢の左岸を通る「摂津道」というなぞの道を探して降りる予定だったのですが・・・。摂津道が見つかりません。赤テープがべた張りという噂だったのですが、相当な時間さまよいましたが全く見つかりませんでした。
そもそも摂津道が地図上でどこを通っているか、実は良く分かってなかったりしたので、見当違いな場所を探してたのかもしれません。ていうか、もっとちゃんと調べとけよって話ですね、これ。すみません、すべて私の責任です。
ここらの斜面は結構急で、正直あんまり動き回るのも危険です。もうどうしようもないので、かなり大変だけど、沢から標高で400mの左岸の斜面を登り切って尾根に出て、「シャッポ尾根」と呼ばれる尾根を下って降りることになりました。
シャッポ尾根は一応踏み跡はありますが、かなり急で、ところどころ壁になってて、ルート取りも難しく大変です。もう時間も遅く、暗くなったらおそらく下れないので時間との勝負になりました。みんなで協力し、励ましあいながら慎重かつ迅速に進みます。
もうヘロヘロになりながら、下に白い川床が見えてあと50mということで再び壁。もう考えるのも面倒なので短く懸垂してどうにかこうにか18:00、朝入渓した奥ノ平谷出合にピッタリ降り立ちました。
下山に4時間! あまりの大変さに、午前中に沢を登っていた記憶はすっかり消去されていました。
予定通りなら今頃前島食堂でニコニコと焼き肉食べてるはずだったんだけどな・・・。
しかし今日の一日は、下りの大変さも含めて年に一回あるかどうかぐらいのホントに面白い登山になりました。
メンバーのみなさん、ええ加減なリーダーを助けてくれてありがとう!
追記 toku
沢は絶対に面白そうだから、ずっとこの日を待っていました。
雑誌やネットを見ていて、沢の冒険的な魅力に自然と惹かれている自分に気づいたのはいつごろだっただろうか。
さて、今回の山行ですが、一番印象に残っていることは、実は沢よりも下山時のチームワークです。
疲れと日没を考えると、みんな多少なりとも焦りはあったと思います。
それぞれ下山ルートのイメージも違うだろうし、こう言う時はパーティがバラバラになってしまう可能性もありえます。
そこをリーダーのGさんがしっかりまとめ、的確な指示を出してくれたので、みんなの気持ちが「必ず安全に下山する」方向に向いたのだと思います。
私も少ないリーダー経験の中で、いろいろと悩んだりしていますが、今回の山行はそう言った面も含めて非常に勉強になりました。
来月予定している山行は私がリーダーなので、この経験を早速活かしたいと思います。