2016.9.17〜18 taka(記※一部写真とコメントはwaka),waka,き-suke
本来,数リーダーとは先頭を切ってパーティーを成功へと導く。
持ち得る強さと知恵と技術と心のゆとりを携えて・・・。
深夜3時30分。今、私は、右俣を槍ヶ岳を目指して暗闇の林道を歩いている。
夜空には満月が薄い雲の衣をまとい、優しい光を一層と柔らかくしている。
満月の夜に歩くのは好きだ。
時々、昼間ではないかと思うほどに、影ができる。
本当に月明りなのかと、振り返ってみるが、満月だけが静かに、ゆらゆら輝いている。
今回の山行は、槍ヶ岳で満月を満喫とこやりでアルペン踊り!
1週間前の予報で、週末に台風接近でダメかと考えていたが、ここしばらくの天気予報の
的中率の低さ(前日の予報でもあまりあてにならなかった)や、やはり現地へ行かなくては
わからないので、無駄足になるかもしれないが新穂高へ入ろうとの事になった。
この山域はこの時点では早ければ夕方から雨予報・・・・。
明日は大雨になる事確実らしい。
密かに日帰りプランもありと相談していたが
厳しいプランなので、パーティ内の体力弱者が目的達成への鍵となるが、今回は私が鍵・・・。
新米リーダーの足取り重い・・は確実にパーティ内の弱者に当てはまった。
皆、同様に仕事後の睡眠不足を抱えていたが、体力に差があった。
経験豊富なwakaの提案により白出沢までの間に、荷物の分散をし、力の均衡を図った。
その間、空は晴れてはいるが、天気はやはり夕方に崩れる可能性が極めて高いらしい。
とりあえず、天気を確認できる槍平小屋で、今後の行動を決める事にした。
荷物の分散・・という事で小槍アルペン踊り用の衣装を個人持ちに。早速装着!
時間、天気、安全、危険、体力、目的達成、会。
常に、これらの要素を相談しながら、いかに目的達成率をあげられるか考えた。
体力はあるがクライミングを始めたばかりのGO-suke(本来、き-sukeと呼びたいが”行く行く”しか言わない為)
takaの体力弱、天候、wakaの経験
体力弱者の新米リーダーはくだらない話で心パーティ内の心の余裕を計る。
(実際には精神汚染・・・と言われたが・・・)
テント泊装備のままでは明らかに時間的余裕がない。
早々に槍ヶ岳と満月は諦め、下でテント泊へと変更。
実は、車中リーダー会議で、目標時間で10〜11時くらいに肩の小屋に到達して、
いくつかの要素がクリアしていれば登攀もありと考えていた。
そこで考えられたのが、槍平でテント泊装備をデポし、登攀用具と必要最低限の装備でアタック。
どの道、今日、こやりを登攀できなければ今回こやりには縁はなかったと思うしかない。
明日は大雨だ。
槍平出発、7:47分 荷物をデポし、幾分か軽くなった装備を分ける。
タイムリミットを11時に肩の小屋。
go-go助には念を押す。
雨、天候、その他悪ければ即下山!である事を・・・内心、自分にも言い聞かせて。
天候は相変わらず遠く雲はあるが雨を降らせるような感じの黒くて分厚い雲は遠く、青空も見せている。
go-go-go助の足取りは軽やかに、無邪気に進む。
今、そこにある危機は無いが如く。
飛騨沢千丈乗り越え分岐までで9時06分。約10分の休憩を挟み最後の急登に挑む。
特にtakaは急ぎ過ぎてクライミングの体力すらなくならないように、有限の時間とエネルギーを繋ぐ。
天候や体力ばかりに考えが行きがちだが、あたりはすっかり秋風だ。
ナナカマドの赤、沢を彩るアカやキイロは心に安らぎをくれ、脚が少し軽くなる気がする。
2800mまで高度をあげると風も強くなり、私は早めの上着をきた。
wakaは丈夫なのか、上着を着るのは遅かった。go-助はダウンまで着ていた。
後ろを振り返ると、紅葉の先に笠ヶ岳や双六の裏銀座の面々。
カールの紅葉がきれいだった黒部五郎を思い出しながら、飛騨乗り越えまで歩く。
takaが最後に乗り越に出ると、go-助、wakaはそれぞれの思い出を胸に、眼下に広がる景色を堪能していた。
楽しい思い出、つらい過去、それぞれのそれぞれの思い出。
あと一息、テント場の番号を数えながら、@番を探す。
一番を探すころには大槍と赤い屋根の肩の小屋へ目を移すのだが・・・・。
10時41分。肩の小屋で、風を除けながら、ハーネス装着、登攀準備に取り掛かる。
大槍はすっきり見え、雲もまだ遠くにある、風はあるが、登攀に困るレベルではない。
皆の体調もやる気も、大丈夫に見える。特にgo-sukeのウキウキ感と言ったら、
クリスマスプレゼントを開けたくて開けたくて堪らない様に目がキラキラしていた。
「よし、予定こやりに行きます」
ハーネス装着、登攀準備に取り掛かる。
こやりは、肩の小屋からは見ることができない。
ひ孫槍の下をトラバースし、こやり(槍ヶ岳 西陵の上部)の取り付きへ着く
さて、ここから新米リーダーがgo-助を見極めする。
肩の小屋でgo-go-go助となっていたが、アプローチに踏み入った途端に、go-助になっていた。
声で緊張感が伝わってくる。顔は少し引きつっているようにも見える。
新米リーダーが、慎重に足場や手がかりを探し、先頭からgo-助に細かく指示をする。
”私の目的は皆を無事帰すこと”
もろい岩での経験のない彼を帰すことができるか?
初めてということで緊張感があったが、良い緊張感をもって望んでいた。
私の指示は理解し、手の震え等も怖気づくこともなく、慎重に体を動かしていた。
ここで反応が鈍かったり、動きが悪ければ下山だったが、まずまずだった。
アプローチルートは肩の小屋からそのまま大槍の裏側へまわり込み、幾つかのルンゼをトラバースする感じだ。
waka危険認知指数70%にアップ!!!
思った以上に悪いアプローチだった。落ちた数十メートルは落ちるだろう。岩雪崩の上を通過しなくてはならないし、慎重に歩を
進める必要がある。
小槍南面右ルートを1ピッチだけ登ります!
取り付きは割と広く、そこから一段上がったコルの少し下からビレイオンする。
12時10分登攀開始。この時点では浮かぶ雲は遠くにあった。風はあったが視界は良好だった。
カンテ沿いに上り、ハーケンを探しプロテクションを取る。ハンマーをもっていったが今回は必要なかった。
アプローチから見るこのこやりは立派なもんだ。”こ”が付く岩では無い様に思う。少し悪魔の城を想像させる雰囲気があるし。
岩自体はしっかりとして、もろくはなさそうだ。
途中、終了点があったがこのまま通過、時間短縮。
ここからとラバースに入るが、このあたりから気が付くと雲が湧き上がってきてあっと言う間に真っ白になってしまった。
幸い、取り付きは確認できるので、あと少しで山頂なので、上に急ぐ。
終了点で”解除”の掛け声、手繰るロープはまだこの時点では乾いていた。
風は丁度背中側から吹き付ける。悪魔の城さながら、悪魔の吐息で我らを追い返すかの如く。
ロープの盾を膝の上に置き、悪魔の吐息をかわす。
そんな中go-sukeが上る。初めてのアルパインは雲の中でのクライミング。
そんな状況下、終始、落ち着いた感じでグイグイ高度をあげ、1段目を越して一安心。
ただただ、”落ちず登れ〜”それに尽きる。
この頃、ロープからは軽く水シブきが出始めていた。湿度100%の中でロープに結露が発生したようだ。
少し遅れて雨粒が数滴落ちてきた・・・雨即撤退・・・トラバースにさし掛かる前なのでロアダウンは可能。
takaはロアダウンを提案も、危険認知度80%とテンパリ係数も上昇したwakaが、声を張り上げる。
そのまま登攀継続提案。そのまま継続となった。
(この時、go-go-go-sukeはロアダウンを素直に受け入れただろうか?)
視界の悪い中フォローで登る初本チャンのgo-助
go-sukeは落ちずに危なげなく無事フォローで完登。wakaも続く。
周りはすっかりガスの中、全員完登し、少し焦り気味の声で下山支持のwaka!
懸垂下降で準備準備。
悪魔の吐息はまだ続く。垂らしたロープは下に落ちずに横に流れる。
風に煽られ、お城を巻くように落ち(正確には強風の為、横に流れて岩にまきついてゆく)
風で複雑に絡まったロープをほぐしながらtakaが降りる。
1段上の取り付きで3人分の靴を回収し、広いテラスにまで降りる。
途中、待ちきれないwakaの”まだかー”の声。
takaはその間、風に流されたロープを戻しては下し、ほぐしては下っていて時間が掛かった。
ぎりぎりでようやく取り付きに到着し、赤ロープを引く。引きつつも、残りの絡まったロープを解していた。
左手で、go-sukeの懸垂下降側のロープは離さないように。
懸垂下降も慣れていないのと水分を含んでいたのか、滑りが悪そうだった。少し下降ポイントが奥にあるので
あまり、ロープに緩急をつけると切れる心配も想像したが、無事到着。
wakaも白いもやの中から姿を見せ、無事ロープが抜けるのを祈りながら赤ロープをwaka & taka が引き、きsukeがロープを
束ねた。
少し重いロープの結び目もやの中から現れた時にはホッとひと安心。
13時10分下山開始。
雨もそれ以上は降らなかったので、アプローチは少し湿気を帯びていたが乾いた状態だった。
視界は真っ白の状態で20m先は確認できないが、来た道なので、心に余裕はあった。
もし、これが初めての道であれば落ち着かない処か、進まないだろう。
帰りもき-sukeは落ち着いてアドバイスを聞き、慎重に行動してくれた。
最後のルンゼをトラバースを終え、無事肩の小屋に到着。時刻約13時25分。
ここでギアを軽くまとめ、行動食を詰め込み、13時39分に槍平に向けて出発。
風とガスは相変わらずあり、雨が降り出す前に白出沢まで下山することが最後の目標となった。
この時間からの数時間は魔の時間と呼ばれ、ケガが多い時間だ。
き-sukeに注意を促し、下る。私の足は結局、出だしから最後まで上がらずじまいでどちらかと言うと自分の方が心配だ。
事実、ストックに何度か助けられていた。転ばぬ先の杖。必須アイテム。
飛騨沢内はガスが溜まり、千丈乗越も見えなかったが、ガスの中にも広がりを感じた頃、千丈分岐到着。14時33分。
まだ先は長いが、ぱらつく程度の雨で済んでいる。まだ間に合う。
5〜6mmの雨が降ると数時間で滝谷などの渡渉が出来なくなる可能性がある。
この頃、元気だったき-sukeにも疲労を感じられるようになって来た。
ここから槍平らまでは少し急なので疲労の蓄積した足や、肩にはキツイ。
でも、いつ、雨が降るか、わからないので慌てず焦らず急ぐ。
この時、皆の頭はもつ鍋で一杯だ。たっぷり野菜と乾杯!!あと少し。
何とかキツイ坂を下り、15時33分。槍平でデポした荷物を回収と今晩のビールを調達。
肩に再びズシリとくる荷物。小雨降る中、林道へ。
ここからはとにかく歩くのみ。新米リーダーの返事のできない会話に耐えながら・・・・。
18時14分。ここで今日の行動を完了。
き-sukeの体力にも限界があったらしい。本当によく頑張りました。
初めて東海のメンバーとお泊りのきー助。おいしいモツ鍋を作ってくれました。ピンボケ写真でゴメン・・
結局ピークでダンスが出来なかった小槍アルペンダンサーボーイズ
今回初めてリーダーをすることができてとても感謝しています。
判断力、独立性、心情、優しさ、強さ、計画性、協調性。
どれも重要な要素であると感じえた。
色々経験しているからこそ起こるパニック
今ある危機を何も知らないからこそ感じる安心感
何かと足らない新米リーダー
これらがさらにその度合いを増していたら、パーティをまとめる事はできたのだろうか?
大きなナイフを持つモノよ。受け入れるにはどれ程の器がいるのか?
モトより器にははいらぬか。
心が弱いモノには気をつけよ、恐怖で理性を忘れ、他を傷つける
無邪気な心は心を和ませるが、純真なる刃持つモノよ。理性をもって刃を制御せよ
それが出来なくば、刃はもろ刃となりて、その身すら傷つける
無知なるを知らぬモノよ。無知なるを知り、勇気と寛容を携えよ
未知なる道は永遠にある。己のある限り・・・。
いつ襲い掛かるかわからない恐怖を抱えながらどこまでも。どこまでも。
わかないモノにはわからない。
ナニがどれほど受け入れているかも気づかぬモノよ
世界は自然の中にアル。己もまたその中にアル。
こやりを登攀してそれがよかったのか?悪かったのか?
ぎりぎりを攻めた攻防の中での目的達成なのか?無謀な掛けだったのか
それはわからない。たらればはきりがない。
事実は一つある。go-suke を無事下山出来たこと。この喜びはまた格別だ。
いろいろな経験や、アドバイスをくれたwakaに感謝。
体力の限り尽くし、パーティに協力してくれた純真なgo-suke に感謝!!
アドバイスや色々教えてくれた皆さんに感謝!!
こやりの上での踊れませんでしたが、衣装は会装備の
こやり専用装備として追加しときますね!
今回、縁あって、行動をともにし、話をし、目的の一つでも成し得た事はとても大きな喜びの一つ。
時には、今回のように粘っても徒労に終わる事もあるだろう。
目的達成は常に多面的な考えの下、一つの方向へ向かって、パーティ内でそれぞれができる事をそれぞれが行うのが
不可欠であると考える。
その為に、リーダーには自パーティーの為ならばなりふり構わない姿勢も必要なのかも。
永遠に新米リーダー
waka taka き-suke
