「地域研究:縫ヶ原山南面」の第三弾です。
今回は中間部に美しい雪稜を抱くV稜。これだけ里に近い場所なので未登などとは思いませんが、ネット上にはまったく記録の見当たらない「隠れた宝石」です。
持っている情報は、去年自分の目で見た尾根と谷の姿だけ。雪の状態が良くなりそうなタイミングを狙って突撃です。メンバーはG、しも、キスケ。
※V稜という名称は、便宜上勝手に名前を付けて呼んでるだけです。もし過去に登られていたり、あるいは古来からの名称をご存知の方がありましたら是非ご教示ください。

うっすらとピンクの線を付けたのがV稜、緑が去年登ったU稜です。クリックすると大きくなります。
(※この写真はブログ「あさぎやま山行記録」様から許可を得て掲載させていただいております。2015年2月の写真です。ありがとうございました。)
大原集落の駐車場所からしばらく林道を歩き、V稜へのアプローチの谷に入る。

壁に囲まれて秘密めいた駐車場所

谷はびっくりするぐらい広い。前方にこれから登るV稜が良く見えてた

V稜の末端です。このまままっすぐ取付きました。
ここは右股も左股も広い斜面でスキー場に来てるみたいです。
右股は稜線まで雪面がつながってるっぽい。また左股はU稜の途中のコルまでつながってる。
誰か滑ってみてよ。

尾根の下半分は、ところどころ急で難儀するところもありますが、全般に平凡な樹林の尾根です。

おーい、元気にしてたか?今年も会えたな。
1000mを越えて、雪稜の始まりの「3本ヒノキ」の下に平らな場所があったので、そこでハーネスとか着ける。

「一のヒノキ」は右の雪壁から。
ここは私が先頭で行った中では一番怖かった。今日は雪が良かったのでロープなしで行ったが、状況によってはロープとスノーバーは必携だと思う。

これは「二のヒノキ」の右の雪壁だと思う。
偵察では左面に雪庇が出来ることが分かっている。
視界が悪くなってきてるので、稜線に出るところがなかなかに恐ろしい。
(ちなみに「三のヒノキ」はない。)

もこもこの雪稜を行くキスケ

尾根上にもクラックが入ってて、怖い怖い。

高度感もなかなかです。

雪稜はここでおしまい
しばらくは灌木の生えた尾根をラッセルして登っていく。尾根はだんだん顕著ではなくなって斜面っっぽくなってくる。そのうちやたらと雪面に深いクラックが出てくるようになった。
広い範囲で全層的な崩壊が始まってるようだ。
視界は悪く、上の様子は全然分からない。

クラックが出てくるとその裂け目の下側の段をトラバースして、どこか良い場所見つけて上の段に這い上がる、というのを何回か繰り返す。
といっても上が全然見えてないので、基本的に行き当たりばったりで進むだけだ。

だいたい一歩目が悪い。

自分たちがどんな場所にいるのかも良く分かってないので、案外気楽に登っていくことが出来たが、見えてたら正気の沙汰じゃなかったかもしれないな・・
そしてついに雪庇が見えてきた!

で、でかい!
下に立って、腕をいっぱいに伸ばしてもスコップの先端がリップにはるかに届いてないので、楽に3m以上はあるだろう。
かぶっている上に、奥の方がルーフみたいになってるのでそのまま切り崩して登るのは絶対無理に見える。ここはトンネル掘りだ。

しかしこんな天井みたいな場所に穴を掘ったとしても、どうやって登るんだ??と最初は絶望的な気持ちで掘っていたが・・・

そのうち掘り出した雪で地面を上げていくというテクを身に着けてから、段々形になってきた!

そしてついに穴に入り込むことに成功

さらに掘り進む

40分かかって開通しました。荷上げをする。

氷の穴からアザラシが出てきたところ。

温泉につかるニイチャンと洗い場でくつろぐオッサン
ここから頂上まで200mぐらい歩くだけですが、ホワイトアウトがひどいので、何とかギリギリ見えてるうちにさっさと降りることにしました。
下り初めは難しかったが、ちょっと降りると視界も戻り、やや重い雪でしたが何とか無事に降りられました。
縫ヶ原山の「最後の大物」と思っていたV稜を、こんなに楽しく登れて満足しています。
キスケ君が来てくれてよかった。ラッセルだけじゃなく、3人いたからあそこで時間をかけてでもトンネルを掘ろうという気持ちになれたような気がする。
天気には恵まれなかったけど、良い登山が出来ました。
追記キスケ
前日前々日と御在所でクライミングをしていたので、体は疲れてて役に立たなかったどうしようと思いましたが、なんとか自分の仕事はできたようで良かったです。
白馬主稜に行かずとも日帰りであれほどの雪庇崩しが出来るのもなかなかないと思うのでいい経験が出来ました。
尾根もまずまず悪いところが出てきて、それもまたいいアクセントになって面白かったです。
Gさん、しもさんまた面白い計画あったらよろしくお願いします。