メンバー
toku(記)、キスケ
コースタイム
5月27日
4:05 与田切発電所〜5:35 中小避難小屋〜6:25 東尾根取付〜10:40 断壁取付〜13:15 2430mピーク〜15:55 仙涯嶺山頂
〜17:35 南駒ヶ岳山頂〜18:05 赤梛岳山頂
5月28日
4:50 出発〜5:30 田切岳山頂〜11:42 黒覆山山頂〜14:45 与田切発電所
共にマイナーな尾根である、仙涯嶺東尾根と黒覆尾根に行ってきました。今回は、冬季の偵察と藪トレーニングなどが主な目的です。情報が非常に少ない仙涯嶺東尾根には『断壁』と呼ばれる15mくらいの壁があると言う事はわかっていて、そこが本ルートの核心のようです。一方の黒覆尾根は、大昔は登山道だったようで、難しい箇所には古い鎖が残されているようです。この2つの尾根は、与田切発電所を起点にうまく周回することが可能です。
5月27日
今回は未知な部分が多いので、早めの4:05スタート。結果論ですが、これはもう少し早い方が良かった。
林道は思っていたより時間がかかって、中小避難小屋までに1時間半も費やしてしまう。

一番奥が黒覆尾根で、その手前が仙涯嶺東尾根
取付は、水が少し流れる小麦沢を過ぎて少し歩いた地点から。
藪が少なかったのは最初だけで、下部は背丈を超える熊笹にとても苦しめられました。

ご覧の通り、背の高いキスケ君も藪に埋まってしまう。

途中には、こんな岩や

こんな岩がゴロゴロしていて、疲れた私たちを癒してくれました。

藪に苦戦して、なかなか進みません。2430mピークは遥か遠くに。その手前に断壁。
折れそうになる気持ちは、『必ず断壁を登る』と言う強い意志があったので、なんとか頑張れた気がします。

この尾根、断壁以外にも難所が続出してなかなか悪いです。岩登り、木登り、トラバースなどホントに悪い所が多い。
そして、この岩を超えると…。

ついに姿を現した『断壁』。登るのは、真ん中やや右に見えているチムニーの左にあるクラックです。
取付きは非常に不安定なので、その手前で準備をします。取付には2mくらい岩をクライムダウンするのですが、着地点の岩が動くので注意。キスケ君は懸垂しました。

取付から見上げるクラック。右側には古い残置ロープがありました。このクラックを登ったと言うネットでの記録は見つけられませんでしたが、誰かが登ったのでしょうか。
このクラック、見た感じでは簡単そうですが、問題はプロテクションです。持参したのはキャメロットの♯0.3、0.4、0.5とハーケンです。見た感じ、左壁にある細いクラックで支点は取れると判断して取付きました。
先ずは頼りないチョックストーンに1つ目。これは墜落荷重には耐えられないでしょう。
メインのクラックはハンド〜フィスト〜ワイドくらいで、♯3〜5があるとバッチリ効きそうです。または、クラックの奥にも細いクラックがあり、♯1〜2あたりが取れそうでした。
私は2つ目は左壁のクラックに♯0.3を、そして上部の3つ目には同じく左壁のクラックに♯0.5を。この♯0.5だけはしっかり効いていそうでした。んー、冬季に来るなら♯0.5、2、3、4があると安心と思いました。
ちなみに、左右の壁には細いクラックがいくつかありますが、ほとんどがフレアしています。
また、クラックはとても浅くてハーケンを打つ場所は非常に限られると思います。

終了点付近から。上から見て、取付の右の岩が動きます。写真では伝わりづらいですが、両側ともに切れ落ちていてビレイ点はやや緊張感があります。ビレイ点の木もあまりしっかりとはしていません。
断壁が終わってからも意外と悪い場所が続き、なかなか気が休まりません。
上部はハイマツの藪に難儀させられました。
雪は2500mくらいから出てきましたが、雪の処理は特に問題ありませんでした。

東尾根上部の様子。雪が出てきてからは、ほとんど雪を繋いで登れました。
仙涯嶺山頂に着いた時点で行動時間は12時間。2人とも疲れていたけど、翌日もやや未知な尾根なので田切岳付近を目指して進む。赤梛岳山頂直下に適地があったので、この日はそこまで。
強かった風もやんでくれたので一安心。
すると、キスケ君は宣言通りテントには入らずにビバークすると言う。
そんな状況も今後ありえると思いますが、私はとても付き合えなかった。
寒かったらテントに入ってねと言ったが、結局朝までエマージェンシーシートと寝袋だけで耐えきった。
5月28日
さすがのキスケ君も、朝ご飯はテントに入って一緒に食べました。
驚いたことに、あんな状況でもそれなりに寝れたみたいで、体調も問題なさそうです。
さて、2日目の黒覆尾根ですが、上部は急な下りとハイマツの藪漕ぎでそこそこ悪いです。

田切岳を目指してコルへ下降します。ハイマツは背丈を超えるくらいあって、かなりパワフル。
ハイマツの反発で態勢を何度も崩されました。
樹林帯に入ってからは笹藪と覆い茂った木でルートファインディングに難儀しました。
特に黒覆山山頂付近の笹藪は強烈で、これには2人とも心が折れかけました。

背丈を超えた、高密度の笹藪さん。ホント大変でした。参りました。
この黒覆山も次の大持山も山頂の標識がなく、『頑張ったのにご褒美をもらえなかった』みたいな寂しい気持ちになりました。
大持山を過ぎて、傘山への分岐を南に折れてからは、またも藪。疲れた体にトドメの一撃を頂きました。
藪は昔から好きな方の私ですが、さすがにお腹いっぱいです。キスケ君は初めての本格的な藪だったみたいです。
予想より大変だったみたいで、しばらくは藪はNGな発言をしていました。それくらい大変な藪でした。

最後は、与田切発電所付近の林道に出て、この尾根は終了。
おつかれ様でした。
とにかく悪かった仙涯嶺東尾根。冬季は雪により藪の大変さは軽減されるものの、その他の要素は困難を極めそうです。
しかし、これは『登りたい』と思える素晴らしい尾根であることは間違いありません。
もっと経験と実力をつけて、いつか必ずトライしたいと思います。
追記キスケ
今回の山行は過酷でした。いや、今回もか…
断壁の登攀は、緊張しました。クライミングシューズならなんともなさそうなクラックですが、それを登山靴で登らないといけないし、持ってきたカムでは支点がプアで、おまけにビレイ点の木もしっかりしておらず、おそらく墜落には耐えられないでしょう。
多分そんなところで緊張や怖さ感じたんだと思います。
断壁から仙涯嶺まで標高400mなのに全然進まない、5時間もかかり仙涯嶺に着いたが、気の抜けない岩場や木登りとハイマツの薮漕ぎで精神的にかなり辛かった。
本気ビバークもいい経験になった。
ちゃんと寝れたのは3時間くらいか…本気でビバークでそんだけ寝られれば十分か。
黒覆尾根のハイマツや笹の藪漕ぎも相当キツかった。
また悪いところも多くこちらもかなり疲れた。
ひどく大変だったので藪はしばらくはおやすみ…しかし、ザックもマットも体もボロボロにしながら2日で24時間行動して一周出来たのは素直に嬉しいです。
冬に行くならばもっと技術体力をつけないと…