北鎌尾根と言えば、最も有名なバリエーションルートの一つであり、著名な登山家が遭難死したり数々のドラマを作ってきたルートである。
僕としても、北鎌尾根と言うのはちょっと特別で、会に入った時から冬季の北鎌尾根は目標の一つであり今回はそれの偵察と可能性を見出すために行ってきました。
メンバーは、shunとキスケ(記)です。
記録
17日
新穂高6:10→槍ヶ岳13:30
18日
槍ヶ岳5:50→水俣乗越7:40→北鎌沢出合9:20→北鎌コル12:40→槍ヶ岳17:30
北鎌沢右俣のクライマーズホイホイで2時間程ロスしています。
19日
槍ヶ岳6:00→小槍取付7:00→登攀終了7:40→テント場8:40→片付けテント場出発9:40→新穂高14:10
17日に新穂高登山者無料駐車場に行くと、流石に満車で仕方なく鍋平までいく事になる。
鍋平は比較的ガラガラでしたが、ほとんど寝れてないのと時間には余裕があるので1時間半程車で仮眠。
6時に鍋平を出るが、意外に寒い。それもそのはず、この日は南岳で初霜だったらしいです。
新穂高から槍ヶ岳は遠いし、僕はもう何回かこの道を通っていてあまり面白くない…初めて、一人でここを登った時のようなワクワク感と言うものはもう少しもなく、新鮮な気持ちが失われつつあります。ダメなことです。
新穂高から、槍平小屋までは普通に歩き今回の意気込みやら何やらを話す。shunは、やる気満々そうだ。
槍平小屋でしるこサンドをひたすら食べて、カロリー補給。
その後の急登に備えます。
最終水場で、二人で6リットルくらい水を運び。
いざ飛騨沢へ。
今回、2泊3日の泊まり装備と登攀装備も持っているためザックは重い。
パッキングも40リットルのザックにこだわった為、外付けする事が多くなり重心が外側になりだいぶ辛かった。
50リットルのザックにすればと後悔。
時間には余裕があるので、ゆっくり歩くがshunが早い早い。
ついて行くのが精一杯で、飛騨沢の最後の方はちょっと追いつけないくらいでした。
合宿の涸沢までの荷揚げでも思ったが、shunの体力は目を見張るものがある。
涸沢の時には、負けなかったが今回は完全に負けました。僕もまだまだ、力不足ですね。今年の歩荷大会が楽しみです。
槍ヶ岳山荘のテント場には、13:30に到着。
テントを立てて、暇を持て余した僕らは早めの食事。
中止になった合宿の余ったご飯の寿司太郎とスパムで大盛スパム飯をかっ喰らう。下界では、食えたもんじゃないが、山ではうまい。
ご飯も食べていい感じに眠くなってきたので寝ようとしてたら、shunから小槍の偵察に行きましょう!っと…

小槍アプローチ
小槍へのアプローチは、山頂へいく一般登山道へは行かずヘリポート脇から槍ヶ岳をトラバースするように行きました。
多少悪い程度の岩場で、少々なアップダウンはありますが、ほぼほぼトラバース。
トラバースしていくとバンドに乗ります。バンドになるあたりから小槍が見えてきて、その後大きめなガレ沢をさらにトラバース。
そのまま行くと小槍の基部に着きます。
偵察の段階では、小槍の全貌をみて終わり。
小槍を登っている人が見えました。
shunは、悪いアプローチに少々手こずっているようでした。
それでも、まだ時間を持て余しています。
ホントはもっと遅く出ることも考えましたが、槍ヶ岳のテント場がなくなる可能性があったのでそこまで遅くは出られませんでした。

3日間全て晴れ。夕焼けは綺麗でした。
仕方なしに寝ることにしました。朝方はかなり冷え込み、寒さに慣れていない僕はなかなか寝れませんでしたが、10時間くらいは寝ました。shunは寒くなかったようです。
18日
この日は、この山行メインの北鎌尾根。
槍ヶ岳のテント事情もあり6時に槍ヶ岳山荘を出発。
水俣乗越までは軽快に進みます。
水俣乗越からは、バリエーションルートという事もありヘルメットやハーネスをつけ、装備を整え気持ちも高めます。
水俣乗越から天上沢に降りる所にはフィックスがしてあったが、木が細く信用しない方がいいと思う。
最初が急で落石に注意しながら進む。途中から右側に明瞭な踏み跡があるので、それに沿って進む。
しばらく行くと、だいぶ広くなってきて河原歩きになるので北鎌沢出合まで歩く。
北鎌沢出合からは、北鎌のコルが見える。ここで休憩する。
水を持って行かないといけないが、北鎌沢出合付近は伏流しているらしく水が取れない。
北鎌沢では水が取れるはずだが、もし取れないと困るので天上沢を少し上がって水を補給することにする。
北鎌沢は左俣に行かないようにする。
流れに沿って行くと左俣に入ってしまう。出合では、流れは少なかったが、徐々に流れが増えて行き、もっと上で補給すれば楽だったのにと思いながらすすむ。
およそ2300mあたりでクライマーズホイホイにひっかかり、時間をロス。間違った道があるとは知っていたが、北鎌尾根の記録を読むと右へ右へみたいなことが書いてあるのと、辿った先にピンクテープがある事などがさらに惑わせた。
下部はそれなりに悪いが、北鎌尾根を登るならあまり気にならないレベル。
しかし、上部は非常に悪く、登山者レベルではありえないと引き返す事を決める。
その際に、クライムダウンはちょっと心配だった為、ロープを出し懸垂を2ピッチ行い比較的安全地帯へ。
クライマーズホイホイから抜け出し、北鎌尾根右俣に合流してコルを目指す。2時間くらいロスしてしまい、コルに着いた時には、12:30で疲れも結構あった。
ここから先へ行くと、何かあった時に引き返せなくなる事や、もしもビバークになったら、相当厳しくなるので進退の判断は慎重に。
shunと話し合い体力は、まだ余裕がありそうだ。
これまでも、力強い登りをしていて今のところは、問題はない。
ここからは、ほとんど僕が先頭に立ちルートファインディングをする。
北鎌尾根は、想像していたより悪くて巻道など途中で消えていたりしたが、後で軌跡を確認するとだいたい多くの人が辿っているルートを取っていた。
結構わかりづらい所では、自分が先に行ってから確認してshunを呼ぶという事も多々あった。shunは、体力はあるもののまだこう言った長い時間悪い所の行動には慣れていない為、集中力が途切れない様にこまめに休憩を挟み、危険箇所ではその都度、注意喚起をして進みました。

悪い北鎌尾根
北鎌尾根はアップダウンが多く疲れてくるがなかなか槍ヶ岳は近くならない。shunもそれなりに辛そうだ。
歩みを進め、コルから4時間半程でやっと槍ヶ岳の基部に着くが、ここからも本格的に岩を登る。
山頂直下では、一般的なチムニーを登る。
難しくはないが、落ちられないクライミング。これまでのshunを見てると大丈夫そうだが、念のためロープを出す提案をする。
結局ロープはなしで、問題なく突破し槍ヶ岳頂上の祠の後ろから登場。山頂には、10人弱くらいの人がいました。
北鎌尾根から来る人は、拍手で迎えられると聞いていたが、僕らは特に何もなかった。
山頂では、この下山の時が一番気が緩む時だから、山荘までしっかり気を引き締める様shunに話して下山。
下山して食事。
昨日のスパム飯に続き、すし太郎とシーチキンを混ぜた。シーチキン飯。これもまずまずだったが、昨日のスパム飯の方が美味しかった。
夕方反省会が行われそして、就寝したが昨日同様に結構寒かった。
19日
この日は、小槍を登りひがくの湯でうまい棒をたくさん食べ、5回くらい敗退している国八食堂でご飯を食べて帰るという計画。
5時起きて、6時に出発。
偵察したルートで取り付くが小槍を見た時に先行パーティ発見。30分くらい待って登り始めるが、先行パーティの懸垂もあるので仕方なくピッチを切ることにした。
登攀自体は優しめでしたが、その日朝1番のクライミングという事もあり体がかたい…。支点もボロボロのハーケンや折れてるのもあったりします。
小さめのカム持って行って正解でした。

小槍1P目shun

小槍1P目キスケ
先行パーティが懸垂してる間にshunに登って来てもらい、2ピッチ目。2ピッチ目と言っても10メートルもないが、このピッチ結構脆く簡単に岩が動きます。
プロテクションを考えたり、チェックしたりして登ってカムとピナクルから支点をとりました。
shunもこのセクションは緊張したようでしたが、小槍の頂上に着いた際には笑顔になっていました。

小槍頂上にて

小槍頂上にて、自撮り下手なshunと本田ポーズになる僕
懸垂支点で懸垂の準備。
残置スリング古いものから比較的新しいもの沢山あり、支点もピナクル2点からとっていてある程度安心です。カラビナも4枚あり全て通して懸垂しました。
ただこの懸垂したあとのロープを引き抜いた際に浮石にロープが巻きついてしまい、注意喚起した後に思いっきり引っ張ると岩ごと落ちて来ました。
行きに来た悪いアプローチを通って槍ヶ岳のテント場へ行き片付け。北鎌尾根で拾った携帯電話を槍ヶ岳山荘へ届けて、いろいろ話した後に下山しました。
しっかりひがくの湯にも行けて、お待ちかねの国八食堂にも行けました。

国八食堂にて
今回、shunは体力もあり、悪い所でもよく対処できており頑張っていたと思います。
ただ悪いザレ場での歩き方が、あまり得意ではない様でした。
まあ、これも経験ですね。
僕はと言うと、クライマーズホイホイに引っかかった事は、大反省ポイントでした。そう言ったのが有るってのは知っていたし、地形図を見て北鎌沢右俣がコルに行ってる事はわかっていたのに、踏み跡を見てそっちに進んでしまった。
まだまだ山を見る目が甘かったです。