メンバー
toku(記)、キスケ(途中下山)
1日目 寸又峡温泉〜アザミ沢のコル 13時間行動(全て休憩含む)
2日目 〜光小屋 11時間30分行動
3日目 〜聖平小屋 9時間行動
4日目 〜荒川小屋 10時間行動
5日目 〜三伏峠小屋 8時間行動
6日目 〜北岳山荘 9時間40分行動
7日目 〜早川尾根小屋 8時間行動
8日目 〜黒戸尾根登山口 9時間40分行動
テントを担いで南アルプスを大縦走したい。何年も前から考えていた 。
今回のルートは、前半に破線ルートや登山道ではない箇所も含まれており、それにより、より長くより困難な内容になったと思う。ライン取りとしても、南北をキレイに縦断していて個人的には気に入っている。
宿泊は全てテント泊とし、小屋での補給は水以外はしないものとした。
1日目 曇り/雨

寸又峡の駐車場に車を停めて、長い長い縦走の始まりです。ちなみに、今回は車二台とし、もう一台は下山口の黒戸尾根登山口の駐車場に置かせていただいた。
まず、初日と2日目が大変だろうと予想していたのだが、初日の大変さは想像以上でした。
朝日岳のひたすらの急登も厳しいのだが、『ヒル』の多さには2人とも興ざめである。
基本的に尾根道なのですが、標高1000mくらいまでヒルがいて、全く意味がわからない。普通、そんな上までいるの?
私はでかい個体に4箇所もやられて悲鳴をあげ続けていた。キスケ君はヒル対策のスプレーが効果アリで被害はゼロでした。

朝日岳山頂。
ヒルの被害を受けず、精神的に余裕なキスケ君。セクシーなアンダーウェアで乳首が透けても気にしない。
まぁ、誰もいないしね。
でも、実は私は何とも言えない違和感を感じていたのである。どうも、キスケ君の呼吸の乱れや表情がいつもと違うような。思い過ごしなら良いのだが…。

そして、次の敵は雨とヤブである。
特に『こっぱ沢の頭』〜『三方嶺』あたりはヤブに覆われて道は全くない。一応、破線ルートなのですが、これはもう廃道ですね。
この辺りで私の靴の中はびしょ濡れで、靴下が絞れるくらい。ゴアテックスの靴ですが、古いと防水は期待できないと思った方がいいかな。新しい靴のキスケ君は問題なかったです。いいなー。

やっとの思いで、アザミ沢のコルに到着。18:30でした。
コルには2人用テントはギリギリ張れました。3人用以上なら、大根沢山までの間にいくつか適地があります。
水場はコルから東側に3〜4分。
2日目 曇り/雨
濃いガスなのか小雨なのか、よくわからない天気でスタート。
初日と比べてヤブは少なくて歩きやすい。

三方嶺〜百俣沢の頭までは全く登山道がないのだが、ここは思っていたより踏み跡が明瞭でした。
ただし、大根沢山からコルに下降する箇所のルーファイは難しいと思います。光小屋のご主人さんもそんな事を言っていました。

そんな事より、問題はキスケ君。初日の違和感は的中してしまいました。ひざが痛くてとても苦しそう。
テントやその他の個人装備をもらって様子を見るけど、スピードは上がらない。
もうダメかもしれないと思ったけど、とりあえず一晩寝て様子をみることにしました。
3日目 雨/曇り
キスケ君の足は昨日より良くなったと言う事で、とりあえず進むことにしました。
前半は意外と歩けていたので、わずかな希望は感じられた。

さすがに2人とも明るい会話にはならず、淡々と歩く。せめて、天気だけでも良くならないかと期待するが、この日も全然ダメ。上河内岳を過ぎてからは土砂降りになる。
キスケ君は南岳からの下りは、コースタイムの2倍くらいかかっていた。
テントに入り、これからの事を話し合う。
キスケ君はひざが限界だし気持ちも完全に折れている。残念だけど、ここまでである。
私は悩んだけど、予定通り進む事にした。
4日目 雨(暴風雨)

キスケ君に別れを告げて出発するが、小屋にいてもわかるくらい天気が悪そうだ。
聖岳の手前から強風になり、強い雨も合わさって厳しい。
やっぱり悪かったみたいで、ほとんどのパーティは聖岳登頂を諦めて引き返してきたとキスケ君が言っていた。
ちなみに、キスケ君はこの日は聖平小屋に泊まり、翌日に井川観光協会のバスに乗せてもらい、さらにヒッチハイクをして寸又峡まで戻ったみたいです。

そんは暴風雨に余裕がなかったわけではないけれど、大きなミスをしてしまう。
兎岳避難小屋に着いたら、ザックカバーがないのである。私のザックカバーは普通に装着するとホックが背中に当たるので、それを嫌って雑な付け方をしてしまったのである。
仕方ないので、濡れてはいけない物をスタッフバッグに入れて再スタートする。
こんな悪い日なのに、聖岳〜赤石岳の間では7人と合った。みんな気持ちが強いなぁと感心しながら、自分のミスにかなりヘコみながら歩く。
ひたすら暴風雨が吹き続ける中を歩いて荒川小屋へ。
テントを張って一息ついたら、さらにショッキングな事が…。
私のスタッフバッグは、実は『防水性の高いもの』であって、完全防水ではなかったのです。
生地からも口からも水が入って、シュラフやダウンやあらゆる装着が濡れてしまう。
あー、なんて馬鹿な事をしたのかと反省をするが、これも良い経験と思い気持ちを切り替える。
今回、いろいろと準備を重ねてこの山行に挑んだわけだが、そう言えば無雪期の雨の長期縦走は経験がなかった。
まぁ、経験がなくても対応できないといけないレベルなのだが、こう言う時は自分の弱点が出てしまうのだろう。
シュラフやダウンに暖かさは全く感じられず、寒く長い夜を過ごしながら1人反省をする。
5日目 曇り/晴れ

荒川前岳山頂。
この日のスタートは強風とガスだったけど、前岳を過ぎたあたりでこの日唯一の晴れ間があった。

一時間弱だったけど、ほとんどの装備は乾いてくれた。助かりました。
あとは特に変化のない縦走路をひたすら歩いて三伏峠小屋へ。
ここはテント泊の人は小屋の水が使えないので、歩いて往復20分の水場まで行かなくてはならい。
ちょっと大変だけど、水があるのはそれだけでとても有り難い事です。この有り難さは翌日に実感するになる。
6日目 曇り/晴れ

テントは多かったけど、ほとんどの人は下山するようでみなさんのんびりしていました。
出発時点で水の残量は300ccだったけど、涼しいのと『雪投沢源頭』には必ず水はあると思って補給はしないで進む。
三伏峠から塩見小屋まではぬかるんだ道が多く、とても歩きにくかったです。

塩見バットレス。興味はあります。
そして、塩見岳山頂へ。
実は、私にとってこれはメモリアルな出来事で、これで日本にある3000m峰を全て登った事になりました。
んー、1人だと喜びを上手く表現できない。山頂には誰もいないし。

雪投沢源頭へ。
なんと、水がないのである。しばらく下ってみるけど、水の音がしない。
かなりショックだったけど、三伏峠で水を汲まなかった自分が悪い。またもや反省する。
その先も、耳をとぎ澄ませて水の音が聞こえないかと期待しながら進むも…。全くダメ。
欲しい時に無いのは、世の常でございますね。

やっとの思いでたどり着いた熊ノ平小屋。お水、有り難うございます!
この日はここまででも良かったけど、北岳山荘まで進むことにする。
ずっと樹林のテント場だったので、この日は高所でテントを張りたかった。

塩見バットレス

大きな間ノ岳と、左にチョコンと三峰岳

農鳥岳に突き上げる『滝ノ沢』。豪快な滝が遠めからでもよくわかり、とても興味をそそられる。
また、行きたい所が増えてしまった。
塩見岳〜熊ノ平は目立った山はないけど、所々の展望が素晴らしい!
特に新蛇抜山はオススメです。四方八方を山に囲まれて、奥深い南アルプスにいる事を実感できます。
夜は寒かったけど、満天の星空が見れて良かったです。今までの疲れを癒してくれました。
ちなみに、今回は軽量化の為にシュラフはとても薄いものにしました。モンベル社の♯7で、コンフォート温度が12℃でリミット温度が8℃です。この北岳山荘と荒川小屋以外は問題なく熟睡できました。
7日目 晴れ

待ちに待った快晴の日。富士山もよく見えます。
前半は特に大変だったこともあり、とても感動てきな朝でした。

北岳山荘と、奥に間ノ岳。

北岳と、右に八本歯のコル
北岳山頂に立った時は、以前にwakaさんとtakaさんと行った四尾根の事を思い出していました。
あの時も同じ様な快晴でした。今は1人だけど、やっぱり私は仲間と一緒の方が好きだなぁって思った。
キスケ君とこの景色を一緒に見たかったなー。また、仲間と北岳バットレスに行きたいなー。
この日はのんびりで良いので、広河原山荘でたっぷりと休憩を取る。会の仲間からも応援メールがあり、後半に向けて背中を押してもらえた感じがする。

早川尾根小屋は、昨年あたりから無人になったようです。一瞬、小屋に泊まろうかと考えたけど、やっぱり私はテントの方が好きだ。
8日目 晴れ
この日も快晴で、早朝から気持ち良く歩く。早川尾根は、とても景色の良い尾根です。

早川尾根からの北岳がとても好きです。

甲斐駒ヶ岳。ダイヤモンドAフランケは見えにくいけど、サデの大岩がカッコいい!
いつか行きたい岩場の1つです。

最後の2日が快晴なのは、前半の悪天候を乗り越えたご褒美なのかな。
これからの事をいろいろ考えながら黒戸尾根を下る。
このルートを冬季にやれるだろうか。今年の冬はどうしようか。などなど。
でも、やっぱり冬季にこのルートをトレースしたいと強く思った。
追記キスケ
膝を痛めてしまって途中下山してきました。
その時の記録を僕の視点から描いていこうと思います。
1日目
寸又峡に着くも半日近く運転していた為、眠い。
動き出すとたくさんのヒルにお出迎えで、テンションは下がるが、初日の重い荷物の割には身体的にはキツくはない。
tokuさんは、いつもと違うと思っていたみたいだが割と調子は良かった気がする。自分では気付いていなかったのかもしれない…
初日の行動時間は水場の関係ですこし長くなったが、疲れ的にはそこまで感じていなかった。
2日目
アザミ沢のコルから大根沢山に結構登るその後450m弱下るその途中あたりから膝に違和感があり、コルに着く頃にはだいぶ痛くなっていて下るのが厳しい。まだ有難いことに、下ると痛みは出るが登る分には大丈夫だった。しかし、それも最初だけで信濃俣に着く頃には、歩く事すら痛く苦痛。木のストックを使いながら歩くので精一杯だった。
この日の目的地は、茶臼小屋であったが、tokuさんに本日の行程を光小屋までにしてもらい、早めに休んで回復をはかる。
しかし、光小屋までもいっぱいいっぱいで光小屋に着くのも大分時間がかかってしまった…
膝が腫れていたのでアイシングとマッサージして翌日動ける様に祈りながら寝る。
3日目
さて、ここからはすべて一般登山道になる。膝の負担もすこしは減るだろう。昨日のマッサージの成果か、足の痛みはすこし減ったが、光小屋まではかなり下る。これが結構辛い。
茶臼岳までは、それなりのペースで歩いたつもりだったが、CT程度だったのだろうと思う。
ここから、上河内岳への登りはもう膝は限界を超えていてほとんどまともに歩けない。上河内岳に着いて、聖平小屋から下山する事にする。
上河内岳から聖平まで1時間で着くはず…しかし、右膝だけでなく左膝も痛くなってしまい、すこしの段差でも後ろ向きで降りたりと時間がかかる。聖平小屋まで非常に遠く感じた。
歩いてる最中に、もう厳しい山は無理なんじゃないか…とかそういう事ばかり考えていた。
やっとの思いで聖平小屋へ。
結構な雨に降られてビショビショのテント泊。ここまでの行程はすべて雨。この日の夜は、寝返りを打つたびに膝が痛みまともに寝られなかったが、それももういい。もう体力を回復する必要もない。
4日目
この日はかなりの雨が朝から降っていた。tokuさんは荒川小屋までいくので、送り出し僕は聖平小屋停滞。
聖平小屋では、大雨と風のせいでたくさんの登山者が引き返してきた。あまり人と話す気にはなれず、ストーブの前でじっとしていた。
たまに外に出ると弾幕の様な雨…tokuさんは大変だろう。
僕も、その中縦走したかったなぁっと、思いながら何とか明日寸又峡に下りる作戦を考える。
5日目
この日の朝は、ガスガスで多少雨がパラついていた。
膝はまだ痛む。CTは5時間程度だが今の自分はどれくらいかかるかわからないので出来るだけ早く小屋を出る。
ゆっくりゆっくり歩き聖沢登山口へ。
小屋に泊まった人は井川観光協会のバスに乗れる。これも有難い。
バスで、白樺荘まで行く。
白樺荘からどうしようかなっと思っていたら、焼津に帰る方が困っている様だから乗せてくれると言う。有難い。
寸又峡までは遠回りになってしまうので接岨峡までお願いしたが、寸又峡まで乗せてもらえた。心の底から感謝しました。
3連休の半ばの寸又峡は賑わっていて、自分だけ場違いな感じがした。
下山して一週間以上たった今、膝は順調に回復してきている。
おそらく原因は、体の硬さや筋力いろいろ原因がちょっとずつ悪さをしている気がする。これまでも、膝が痛くなった事は沢山あるが2・3日で治るからと放って置いた。これがダメだったので、日々のストレッチや筋トレをしてクライミング力同様に膝も鍛えていかないといけないと思った。
最後に、メールでアドバイスや励ましてくださった方々、ありがとうございました。