メンバー
toku(記)、iwa
9月25日
この日はアプローチだけなので、のんびり出発。
穴毛谷へはいくつかアプローチがありますが、蒲田川左俣林道をしばらく進み、車が通れるしっかりとした林道を使うと一番歩きやすく、かつ一番楽に高度を上げる事ができると思う。
これだと一ノ沢と二ノ沢の中間くらいに出れます。

四ノ沢出合には駐車場から1時間半くらいで到着する。
写真中央がピナクル東南壁で、見栄えが非常に素晴らしい。
これを見たクライマーなら誰もが登りたくなってしまうのでないだろうか。実にホレボレする容姿である。

二股の手前から雪渓あり。登りはアイゼンは使用せず。帰りは使いました。
しかし、この雪渓。スノーブリッジはだいぶ薄く、もう少ししたら崩壊しそうでした。
この時期は一歩間違えばとてもリスキーである。

二股から見上げるピナクル東南壁。今回登る『五月晴れ』はこの壁の右よりのラインを登ります。

二股より左俣に入りますが、ここは雪渓はなくなっていて、まずは右岸を高巻く。
しかし、この巻きがとても悪い。落石と滑落は致命的だ。
ちなみに、写真中央のこれまたカッコイイ岩稜は『第一岩稜』である。
もちろん登られた記録は非常に少ないわけだが、夏も冬も記録はある。いつか行ってみたいですねー。
その後、左岸に移ってからもしばらく悪い。基本的に岩は不安定で、大きな岩も普通に動きます。
そして、東南壁の基部にはピナクルルンゼを行こうと考えてましたが、間違えて一つ手前のルンゼに入ってしまう。
ここは上部の草付き部分が悪く、下りには使いたくない。
その後わかった事だが、ピナクルルンゼは左俣に入ってから3つ目のルンゼである。
トポには2本目となっているので、注意。

テン場まで5時間少々。二股以降がとても悪く、行動時間のわりには疲労感がハンパない。
もう少し楽だと考えていたけど、初日から穴毛の洗礼を受ける。
テン場は少し整地したので、2テンまでなら快適だろう。
追記:iwa
テント場には水はないので沢から持ち上げる必要がある。今回は二人で8Lの水を持って行ったが3L程度余らせた。夏場なら丁度良かったかもしれない。
9月26日

快晴である。気温、湿度よし。風は微風とコンディションはこの上なく良さそうだ。
赤線が今回のラインで、トポでは最終ピッチが核心で10bがつけられている。
ただし、第2登者はここを5.8とコメントしている。はたしてどうだろうか。
1P目 V級 55m tokuリード

スッキリした簡単なカンテ状だが、プロテクションがあまり取れない。スッキリしてるぶん高度感があり、また朝一と言うこともありちょっぴり緊張した。大テラスの一段上の灌木を終了点とする。
2P目 W級 55m iwaリード
まず出だしのルンゼ状の乗っ越しがやや悪い。その後も草付きやスラブなど、やや緊張するところがあるものの基本的には歩きや簡単なクライミングのピッチだ。しかし、今回ジャンケンに負けたiwaさんは簡単な偶数ピッチ。それでは終われないと意地を見せ、終了点の手前にある難しそうなクラックをいく。

そのクラックは右ロープのスッキリしたフェースに走っていて、見栄えもよく難度もなかなかのものだ。
短いことを考慮すると5.9くらいか。しかし、核心の強度はルート中一番で、5.10aあっても良いかもしれない。
5.10aのピッチを前に腕はパンプし息も乱れてしまう。
追記:iwa
登ったクラックはテント場から見てもわかるものだが、クラック取り付きに浮石が堆積していて注意が必要。岩は固いが抜け口で掴みたくなる岩は全部動くので抜けが悪い。短いが強度が高く4級程度のボルダーといった感じです。
本来はクラックのフェースを右手にみて左上している凹角を登るのが初登ルートだと思われるが、草が生えていて登りづらそうでした。
3P目 5.10a 35m tokuリード

個人的には一番良かったピッチ。歩きの要素はなく、クライミングの強度は最初から最後まで平均していて気が抜けない内容になっている。
特にダブルクラック部分は素晴らしく、快適なハンドだ。ただし、抜け口は悪いうえにやや濡れていて緊張した。
初登者のブログでは50mとなっていますが、35mで太い木までいけました。
グレードは5.10aと感じました。
追記:iwa
出だしから一段上がったハング部で軽く触った50cm四方程度の岩が足元に落下して下に落ちていった。体重を掛けたわけでもなく、安定度チェックの為に軽く触れた程度だった。
あと10cmズレて落ちれいたら足をつぶされていたかと思うとゾッとした。
このピッチは慎重に登りきったが、その後の登りに影響を与えるほどの衝撃だった。
4P目 5.7 35m iwaリード

太い木から撮ったこの写真ではよくわからないのですが、ロープがあるところに6mほどのワイドクラックがあります。
ここでキャメロット♯6を使う。でも重いし、特に難しくはないのでワイドに自信のある人ならノープロでも良いかもしれないが、あれば非常に安心感があります。
その上は難しくはないが、岩がやや不安定でいやらしい。
追記:iwa
個人的に膝がバチ効きで両手フリーにできるほどの快適なサイズ。
ここよりもそのあとの草付き+潅木帯に所々出てくる岩が不安定でいやらしい。
次は6番いらないかな。
5P目 5.10b 35m tokuリード
ワイドと言うことでしたが4P目よりは狭く♯6は使えそうにない。
難度もよくわからないが、気持ちを落ち着かせてスタートする。

ここからが核心のワイド部分。
すぐ右上にガバっぽいのが見えていて、それなら悪いのは一手か二手だろうと思い、思い切って右手を出してみる。
しかし、残念ながらスローパで良くはない。さらに頑張ってもう一手。ここもスローパで良くはないけど、何とかマントルまでもっていけた。
あとはやさしい岩とハイマツ帯を歩いてピナクルの頭へ。

お疲れさまです。今回もありがとうございました。
オールフリー、オールナチュラルプロテクション。リード、フォロー共にノーテンションと言う内容で完登でき、充実のクライミングができました。
5P目のグレードは私の体感では5.9と感じました。
ただ、この壁は崩壊があったり大きな岩ごと落ちたりもよくあり得るように思います。
実際、今回も50cm四方くらいの比較的大きな岩がちょっと触っただけで落ちた事もありましたし、それより小さな岩もいくつか落ちました。
グレードはその度に多少の変化がある可能性はあると思います。

懸垂は4回でしたけど、上部がやや複雑なのでルートに忠実に5回でやる方が良さそうです。
上部で少し時間がかかり、懸垂で2時間弱を費やしました。
追記:iwa
登った時のロープスケール的に60m1ピッチで3P目終了点の太い木まで降りられるだろうと踏んで懸垂をしましたが、思ったよりも木が右手方向で無理やり降りる感じになりそうだったので素直にまっすく降下して振り子トラバースをして何とかたどり着いた。
これでかなり時間をロスしてしまった。
※※この際崩落したルート「ノープログラム」部分にでるが、岩が非常に不安定で人の力でもはがれそうな高さ5m幅2mほどの乗っているだけの岩(3P目終了点からみて左手真横にある岩です)がある。
もし、下部2ピッチを登攀中(懸垂時)にこれが落ちたら確実な死が待っているだろう。2ピッチ目終了点もこの直下なので危ないのでこれを避けて少し手前の立木をビレイ点とするのが良さそう。※※

下りはテン場向かって右手のピナクルルンゼより下降。こちらの方が断然楽でした。

ピナクルルンゼと左俣出合付近から見た第一岩稜。カッコ良すぎますね。やはり、いつか訪れてみたい。
あとは相変わらず悪い左俣を慎重に下り、雪渓はアイゼンを付けて安全に下りました。
駐車場に着いた時は、普段のように『帰ってきた』と言うよりは『生きて帰ってこれた』と言うのが正直な気持ちでした。
追記:iwa
今までそれなりに色々なところに行きましたが、アプローチ、岩場、クライミングなど全部が一番ヤバかった。
グレードそのものは先鋭的なものに比べたら大したことないですが、高い総合力が必要なルートだと思いました。
tokuと同じく「帰ってこれた」と思いましたが、不思議とまたあの雰囲気に戻りたくなるもんですね。