皆さんこんにちは!
山に行けない日々がしばらく続きそうですが、春は基本技術をみんなでしっかり共有すべきシーズンです。会のメンバーは再度読み直し、きっちりと基本の再確認を。
そして、こんな時なのでブログで一般公開!
例会も訓練山行も開催できない中、山岳会への入会を検討している方にも、どんな会なのか伝える機会になればと思います。
東海山岳会クライミング基本システム
(安全なクライミングのための一般基準)
2006年3月制定・2017年3月修正
パーティー・クライミングパートナー・リーダー
・命を預けあうのだから、気付いたことを指摘、または登攀中止の提案などを互いに遠慮なく言い合える関係を作り保つべきである。
・リーダーは常に自分がリーダーであることを認識し、自分のするべき仕事を認識していなければならない。
・新人や初心者であっても、「パートナーの命を守るのは自分である」という意識を常に持ち、他人任せにせず、そのための考えを常にめぐらせていなければならない。
装備の考え方
1.どのような山行でも必ず持っているべき装備
38oテーピング、ナイフ、レスキューシート、ヘッドランプ+電池、最低限の救急用品
2.熟知していない場所での歩行をともなう山行での必須装備
地図(地理院地形図 1:25000以下)、方位磁石
3.マルチピッチクライミングでの装備(沢登りもこれに準ずる)
・ヘルメットを着用する。
・セルフビレイでは安全環付カラビナとディジーチェーンなどを使用する。
・ナイフはいつでも出せるように首から下げておく。
・雨具・ツェルトを持つ。 水・食料を十分にもつ。
・脱出用のギアとして、「ぶよぶよスリング」×2、タイブロックなどを携行する。(プロテクション用としては使用せずにキープすること。)
・歩いて下降するルートでも、途中敗退に備え、懸垂下降を行うのに十分な長さ(本数)のロープを準備する。
・残置できるようにカラビナ、スリングは充分な数を持つ。
4.装備の持ちすぎについて
装備の重量が大きくなることは直接的に危険につながる。よって「安全上あった方が良いもの」でも、それをすべて持っていくことは出来ない。 どんなものでも持っていくことの便利さ・安心感のメリットと、その重量を負担することが引き起こす危険性・デメリットのどっちが大きいかを考えなければならない。
実際のクライミングの安全基準
1.ゲレンデでのフリークライミング(シングルピッチ)
・ヘルメットは岩場に必ず携行する。使用するかはルートの危険性を考えて判断する。
・中間支点のボルト(ハンガーボルト・ハーケン・リングボルト)などを直接手でもってはいけない。
・ロワーダウンの支点、トップロープの支点は、必ず複数の支点(ボルト、カム、木など)から均等加重などでとり、ロープを通すカラビナは2枚をゲートが逆を向くようにセットする。カラビナが岩角にあたってこじれないように長さを調節する。環付カラビナであっても破断する場合があるので、複数のカラビナを使うことが望ましい。システムのどこかが破綻しても大丈夫なように、可能な範囲で出来る限りバックアップを取る習慣をつける。
・終了点がリングのみの場合に備え、安全な結びかえの方法を必ず把握し、練習しておく。(結びかえのために必ず環付きカラビナを持って登る習慣を作る。)
・トップロープの際、スリングにカラビナを介さずに直接ロープをかけてはいけない。
・リードするにあたり、そのルートの難しさ・危険性に対して、力量が十分かどうかを本人もパートナーもいちいちよく考えて、惰性や感情で決定しないようにする。また、本人、ビレーヤーともに、「今落ちたらどうなるか」を常に意識して登る。ランナウトの程度、プロテクションの効き具合、墜落したときロープが岩角と擦れないか、地面の状況などに常に留意する。(「パートナーの命を守るのは自分である。」)
2.マルチピッチクライミング(1.の各項目はマルチピッチにも共通)
・初めていくルートの場合は、パーティーの力量に合ったものかを、パーティ外の人の意見もよく聞いて総合的に判断すること。
・誰がリーダーであるかを明らかにし、リーダーは自分のするべき仕事を常に意識していること。
・パーティの全員が、登るルートの難しさや、壁の中での位置関係、下降の方法をしっかり把握していること。
・他のパーティーよりも先に取り付けるよう、努力すること。
・ショートルートに比べると岩が不安定なことが多いのでリード、ビレイともに注意をおこたらない。
・岩、プロテクションともプアな場合が多いので落ちないクライミングを前提とする。(そのルートで落ちないだけの充分なフリークライミングの能力を持っていなければならない。)
・残置支点は、強度の確認を行う。
・確保支点、終了点等は、必ず複数の支点から均等加重などでとる。
・セルフビレイは、メインロープ+マスト結びと、ディージーチェーンの両方でとることが望ましい。可能なら異なる2組の支点から取る。
・フォローの確保を行う場合、フォローの体重がかかる支点とは、別の支点にセルフをとることが望ましい。
・フォローの確保は、確保支点のカラビナにロープを通して、ボディービレーで行うか、オートロック機能付きの確保器を使用する。ただし後者の場合は必ずあらかじめ解除の練習をしておくこと、また旧式のルベルソなど解除の困難なオートロックの器具は避けることが望ましい。あらゆる可能性を想定して、ピッチの途中でロワーダウンさせる必要が生じる可能性の大小を常に予測して置くこと(ハングした核心部、落石の危険、体調不良、トラバースの部分、蜂の巣の存在など)。
・絶えず時間や天候に気を付けて、登攀スピードを重視する。
3.懸垂下降
・懸垂ポイントの残置スリングなどにロープを通す場合や自ら懸垂支点を作成する場合、スリングと支点の全体の構成をよく観察し、確実に安全であることを何度も確認する。
・必要な場合は、スリング・カラビナを支点に寄付することを惜しまない。
・2本のロープを結ぶ場合、末端をそろえてエイト結びが簡単で便利であるが、太さの異なるロープを連結する場合は他の結び方(ダブルフィッシャーマン等)で行う
・懸垂ロープの末端には、すっぽ抜け防止の結び目を作り、しっかり締める。
・懸垂を開始する前に、岩の形状や支点との位置関係から、どちら側のロープを引けば回収しやすいかをよく考え、ロープの抵抗となるクラックやフレークがないかをよく観察し、下降ラインを決める。(後続にも指示する。)
・未知の場所、落石の危険のある場所、暗い場所や少しでも不安を感じたら、プルージックなどでバックアップを取る。
・セルフビレイを外す前に、一度懸垂のロープにしっかり体重をかけ、システムに問題がないことを確認する。
・懸垂中は、手の保護(ロープとの摩擦、確保器の発熱など)、制動力の確保から手袋を着用する。
・下降器の上側のロープは、原則として手で握らないこと。
・ロープがテラスに乗っていたり、途中の岩角などにひっかかっていた場合、必ずその地点を通過する前に、上から引っかかりを直すこと。(通過した後では簡単には戻れないから。)
・多くの場合、ロープを落とす事は致命的である。落とさないためのあらゆる注意を払うこと。
4.いざという時のために、皆が知っておくべきテクニック
確保器なしで懸垂下降 (半マスト・カラビナ懸垂)
テーピングでの怪我の固定、適切な応急処置
セルフレスキューのロープワーク(カウンターウエイトラッペル、1/3引き上げ、マリナーノットを使用した加重の移動など)
留意
・上記の各事項は、あくまで安全に登山を行うための一般的な基準である。「決まっているからそうする」のではなく、目的や状況、メンバーの力量などあらゆる事を自分で考えて、場合によっては敢えてこの基準にこだわらずに、柔軟な発想で選択し行動する能力が、最終的には求められる。
付記1:マルチピッチ登攀中のセルフレスキューの装備に関する留意事項
(2019年3月)
上記に「脱出用のギア」の記載があるが、引き上げや介助懸垂などを伴う本格的なセルフレスキューを行うことを想定する場合は、記載された内容のギアでは全く足りず、どんなに練習をしていてもセルフレスキューを行うことは出来ない。実際にセルフレスキューを行う場合には、上記の脱出用のギアに加えて、最低でもメンバー全員が「カラビナ2枚+スリング2本(※ニコニコルールとよぶ)」を登攀に使用せずに常時身に着けておく前提で携行している必要がある。(当然、装備表のそれぞれ個数も、登攀に必要な個数に(人数×2)を足す必要がある。)
また、それに加えてプーリーとロープマンなどの小型アッセンダーのセットがあると作業は大幅に容易になり、引上げなどの困難な作業の現実味が一気に増すので、これらも携行が推奨される。
これらのセルフレスキューを前提とした装備は、いつも必ず持たなければならないわけではないが、岩がもろい、ランナウトする、プロテクションが悪い、ほとんど登られてない、実力に対して難易度が高いなど、リスク要素の比較的多いクライミングや、開拓、外部のレスキューが期待できない遠隔地でのクライミング、海外などの場合は、携行が強く推奨される。
