一ヶ月の滞在が僕にもたらした幸せな錯覚。
増えていく体重と共に東京へ帰る足取りも重くなっていった。
古き友、懐かしき友たちと呑み歩く日々が、僕を夢の世界へといざなう。
そろそろ目を覚まさなければ。
僕は東京にアパートを借りバイトをし、生活の生業の全てを東京で営んでいるのだから。
甘くとろけるような名古屋の生活から一気に現実世界に引き戻されたとき、その厳しさと激しさに身体も精神も悲鳴をあげるに違いない。
8年前、不安と期待に胸を膨らませ闇雲に名古屋を飛び出した。
今、僕には帰る場所がある。
東京にも名古屋にも。
希望も夢も持ち合わせることができた。
そして何かしらの手応えを感じながら、今日千秋楽を向かえ、改めて名古屋を離れ家に帰る。
これは新しい門出なのかもしれない。
見送ってくれる友たちの熱い声援に背中を押されながら、きっとまた新しい舞台に出会い名古屋に戻ってくることだろう。
いや必ず戻ってきたい。
少しづつだけど、前に進んでいる気がする。
振り返ったときしっかり道があるように。
開演30分前に幸四郎さんが一斉放送で全ての人に労いと称賛と感謝の気持ちを伝えた。
やはり彼は本当に凄い。


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