大分遅くなってしまったが耳袋更新。
この話を聞いたのは三月だったはず。それから色々あって(主に面倒だった)今まで更新が伸びてしまっていた。
まあ、気にしない。
ちなみに細部は事情があるため創作が入っていますが(語り口調、細かいシュチュエーション等)、聞いた内容、彼がこの話を語ったということは事実です。
『夜勤』
高校時代の友人Jは福祉関係の仕事に就くため、専門学校を卒業し、今年から仙台に住むことになった。
久しぶりにあって、酒でも酌み交わしながら「最近怖い話を集めてるんだけど…」と水を向けると、いつでもマイペースな彼は、いつもの飄々とした調子でこんな話を語ってくれた。
老人福祉施設に一週間位、研修に行ったことがあるんだよ。
それでこの研修ももうすぐ終わるって頃に夜勤研修が入ったんだ。
その時の話。
夜中に見回りが入るんだけど、ほら、やっぱり夜中に急に具合が悪くなる人とかもいるし。それでロビーにいったら、テレビの電源が点きっぱなしになってたんだよね。
もう放送も終わってて砂嵐の画面になってたんだけど。ああしょうがねぇな、誰か点けたまんまで帰っちゃったんだなって思って。電源を落とそうと思って電源ボタン押したんだけど、なぜか落ちないんだよね。それどころが音量がどんどん大きくなっていって…
ロビー中に砂嵐のノイズが響いたんだ。
結局コンセントを抜いたら収まったんだけど………
これで終わればよかったんだけど、それだけじゃないんだよね。
その後、トイレを見回って、ちょうどそこから出ようとした瞬間
ジャー
って一斉に蛇口から水が流れ始めたんだ。センサー式の蛇口だからさ、何かを感知しなければ水が出ないはずなのに…
あれはいったい何を感じて水がでたのかねぇ………
結構オーソドックスな怪談ながら、自分の見知った人に聞くとなかなか新鮮なものだ。
「それで、オマエは怖くなかったん?」
「ああ、いや。まあ怖いは怖いけど、テレビにしたって水道にしたって、故障かもしれないし、なにより実害があったわけじゃないからねぇ」
どこまでもマイペースな奴なのであった。

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