今度こそ『屍鬼』の感想。
なおネタバレ等あるかも知れないので、厭な人は読まないでね。
『屍鬼』文庫版1〜5
著・小野不由美 新潮文庫
綾辻の嫁、不由美主上のすげー長い小説。
村は死によって包囲されている――
未だ土葬という因習が残る外場村の、虫送りの祭りの夜にやってきたあやしいトラック。そのすぐ後に、山深い集落で三体の腐乱死体が発見される。それが、すべての事件の幕開けだった。
深夜に村に越してきた謎の家族、連続する不審死、村に伝わる『起き上がり』の伝説。
長編伝奇小説。
感想、綿密な描写と、じわじわと真綿で首を絞めるように村を包囲する『死』の脅威の描写は素晴らしいと思う。とにかく長いし、登場人物が多いので、かなりこんがらがるが、まあそれをおいたとしてもかなりの力作であることは認める。
だけどなぁ、根本のテーマがあんまり合わなかったみたい。
俺は完全に人間側だわ。
敏夫カコイイ。静信ワケワカラン。
もうこんなもんアーカードとか居たら37564ですよ。アンデルセン神父でも可。
四巻くらいから数を増やしてくる屍鬼側の描写に、どうしても感情移入できないんだよなぁ。だってほぼ無理やり起き上がったヤツに残った家族を殺させてんだもん。
ちょくちょく親玉の沙子とか辰巳とかが、屍鬼が人間を殺して血を吸うことを、「人間が家畜を殺して食べるのとどこが違うの?」みたいにいってっけど、それとこれとは話が別じゃね? 言葉通じちゃうしな、いままで自分も人間だったわけだからどうしても極限状態になっちゃうじゃーん。
大体沙子タンは「屍鬼の村をつくる」みたいに無邪気なこといってるけど、村の人口が全て屍鬼に変わっちまったらどうするつもりだったんだか。村の外から調達してくる? だったらそもそも仲間増やさない方が生きやすくね?(もう死んでるけど)
敏夫の例もあるように、一回の吸血で死ぬわけではないようなので、血も死ぬまで吸わないで、いろんな人をローテーションしていけば全然余裕じゃね?
てかそもそも医者が仲間にいるんだから輸血用の血を大量に買っとけばいいんじゃね?
なんか屍鬼の側がうまいことやれば共生できそうな気もするけどナァ。
なんだか巧くまとめられないけど、とりあえず屍鬼の境遇には同情するけど、意思疎通が出来る別種を殺してんだから殺されても文句言えねぇよなぁってとこか。胸に杭を打つのも血ィ吸って殺すのも同じだろ。
せっかくだから次はオマージュ元だというS・キングの『呪われた町』でも読んでみるかな。

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