「限界集落」の悲痛な叫び! 宇佐市には問題解決のヒントが…(平成22年10月11日)
国の過疎対策事業には、最初の過疎法が施行された1970年から38年間で約80兆円の公費が投入されてきたが、過疎に歯止めがかかるどころか、地方はいたる所が限界集落になってしまった。
これは若者の雇用の場を創出するというより、道路整備や建物といったハード事業のみに終始した付けが今、回ってきたと見るべきだろう。
こうした限界集落には立派な道路がある反面、車に乗れない高齢者が買い物難民化している笑えない現状がある。
限界集落とは、1991年、当時高知大学教授であった大野晃氏が提唱した概念。住民の減少と高齢化がすすみ、65歳以上が半数以上になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落のことをいう。
国土交通省の2006年の調査によると、山間地域を中心に全国6万2271集落のうち、7878が該当し、なかでも2641集落は消滅のおそれがあるといわれている。
宇佐市は旧宇佐市が東ノ西、宗像など8地区、院内町は五名、小野川内など19地区、安心院町は妻垣、萱籠など25地区の計52地区が限界集落となっている(平成22年3月31日現在)。
ところで限界集落の再生のため、国や自治体が緊急にやらなければならない課題は3つある。
1つ目は情報基盤の整備。光ファイバーなどの高速通信網がなければ、企業はおろか、若者も帰ってこない。宇佐市は現在、この計画を推進している。
2つ目は人的輸送システムの構築。コミュニティバスやデマンドバスを充実し、買い物難民など高齢者の孤立化を解消しなければならない。使われない道路を造るより、人の輸送に予算を支出する方が、廉価だし理解を得やすいと思う。
3つ目は人材の派遣。生活における困りごとやイベント、新しい起業を始めようという場合、専門家や他地区の自治体職員らによる支援体制が重要で、派遣費用等を助成するといったソフト事業を導入する必要がある。
ただこれだけでは根本的な解決にはならない。限界集落の再生のためには、新たな人が定住できるような環境整備が必要だし、またそれぞれの地域が特徴のある自然・風土などを生かし、都市とは違う価値ある場を形成していくことも重要だ。
その点で、安心院町のグリーンツーリズムやイモリ谷、院内町のあまり谷の取り組みはいいケーススタディだし、今後の限界集落問題解決のヒントを与えてくれる。
いずれにしても、過疎は避けられない現実だが、「心の過疎」にならない地域住民の奮起にも期待したいし、私たちもそうした地域をこれからも応援していきたい。

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