もともとは、豊科に行くことはあっても、
南安曇郡とか安曇野とか、穂高って知らなかった。
子どものころ、「安曇野」っていう歌が好きだったけど。
物語に出てくる場所のようで、
実在しないような気がしてた。
穂高も、よく聞く場所ではあったけど、
何度説明してもらっても検討もつかない。
だれかが「大王わさび農場」に行ったと言っても、
全然わからない。
なぜか私の記憶に止まらない町。
それよりも、靄がかかったように、
頭の中にイメージできない場所。
耳で聞いても、聞こえない。
そんな訳で、全然知らない土地だった。
今でも、どこか別世界に感じる。
でも町に入ってしまえば、
自分の故郷のように感じる。
子どもの頃に何度か行っているという母の話と、
父親も叔父も大好きだった土地。
何かあるのかもしれない。
行けば何かを思い出すかもしれない、と思う。
アマチュア写真家の叔父が、
大好きな穂高の写真を一枚も遺していないのも不思議。
桜の花と小学校と常念岳。
それから、かすかに記憶にある、
穂高駅から神社の裏、踏切。
近くのお寺で遊ぶ子ども。
朝靄なのか霧なのか、
霞んだ穂高駅。

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