今日は朝からジャルーのところでイダキ製作の手伝いをする。
到着するとすでに数本のイダキの樹皮を落としていた。
朝から働き者である。
一家総出で、手分けして作業をする様は、本当にすごい。
わずか3歳の子供もよく目にする光景なのか、一生懸命手伝うふりをする。
将来のイダキ・クラフトマンとして有望である。
ジャルー一家と過ごすこのひとときは心地よい海風を受けながら、ゆったりと時間が流れる。そして子供の泣き声、母親のしかる声も心地よささえ感じる。
そして何よりも、皆が私たちに声をかけて、彼らの文化を教えるように話をしてくれる。
まず、この子はあなたの誰々だ、とかあの人はあなたの誰々だからポインズンカズン(口を利いては行けない親戚というのがあるらしい)だとか、覚えられないくらいいろいろな人を紹介してくれた。すでに何度もこの地を訪れているので、随分多くの人を覚えてきたけど、一人10代の顔立ちの美しい女の子がいるのに気がついた。とても気さくで、英語も良くできる才女な感じだ。聞いたところに夜と、グルーテアイランドから来ているという。それもバーノン(ジャルーの次男)の許嫁だという。「へえ〜、あのバーノンにもついに彼女ができたか!」びっくりである。ジャルーの教則CD「Djalu」の1枚目でラリーとともに演奏してるあの少年が!
でも彼らはまだ仲の良い兄弟のようにじゃれ合っている。時折みせるバーノンのちょっと男らしい姿(特に狩りをしている彼は目つきが違う)に彼女もまんざらでもなさそうだ。
釣りからの帰りにふとバックミラーを見ると、彼女が寂しげに車窓を見つめている。きっと明るく振る舞っているけど、家族と離れて一人で寂しいのかな?ちょっと心の奥底がが伝わってきた気がした。
釣りに行っていた人を迎えに行き、戻ってくると成り行きでジャルーのイダキ・ワークショップ(しかも最初はマンツーマン!)がはじまった。いろいろなリズムを聴かせてくれてそれをまねるように言われた。次第に複雑なリズムにちょっと当惑したけど、彼の教鞭に熱が入ってくる。やがてこんな話をしてくれた。「日本人は私のいうことをよく聞いてくれる。そして良いハートを持っている。バランダ(白人)は少し難しい。彼らには私がやっていることを理解できないようだ。日本人はリスペクトがあり、熱心だ。NO.1のハートの持ち主だ。グマチの人間は女性がイダキを吹くことを拒否するけど、私は女性でも歓迎する。君たちは女性でもギターを弾くだろ?同じ事だ。学びたいなら皆を歓迎するよ。」この彼の寛大さが今の日本のイダキシーンを発展させてくれたのだと思う。ジャルーに本当に心から感謝している。
いつも感じることだが、訪問者とジャルーたちのようなヨルングの人たちには隔たりがある。彼らは要求されることを嫌う。こちらから一方的に「これがしたい、あれがしたい」と要求するのはまず、彼らと良い関係を築いてからすべきことだ。アーネムランドは観光地ではない。まずアーネムランドに入るきっかけを見つけて、彼らと仲良くなることだ。彼らのことを手伝いにいくと思った方がいい。彼はこうして欲しい、ああして欲しい、と日常的なことはよく要求する。「これを押さえておいてくれ」「それを取ってくれ」「街まで連れて行ってくれ」「コーラを買ってきてくれ」・・・。その要求にできるだけ応えてあげれば、彼らは心を開いてくれる。そこから少しずつ自分がどうしたいか話をしていくといい。
彼らから学ぶことは山ほどある。学べば学ほど良い体験を与えてくれる。
今回の収穫はジャルーから赤カンガルーの曲を習ったこと、アイロンバークのジャルー製作のビルマを得ることができたこと、そして釣りで2匹釣ったこと。ジャルー一家とイダキを切りに行き手伝えたこと、きれいな海でゆったりとした時間を過ごせたこと・・・。
あげればきりがない。
あと明日夜ダーウィンへ移動するまでの1日が最後の日。
もっといろいろなことを吸収したい。

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