ナセル湖には様々な生物が生息していた。湖畔にはサソリや毒蛇、そしてまれに4mを超えるナイルワニが砂浜で日光浴を楽しむ姿を目にした。また、水中にはナイルパーチ以外にも魅力的な魚が生息している。

浅瀬に小型のルアーを投げ入れると、背後からタイガーフィッシュの群が次々に襲いかかり、鋭い牙でルアーをボロボロにする。アタリがあっても中々針掛かりせず、また、掛かったとしても狂ったように暴れ周り簡単に針から逃れてゆく。反応は数え切れないほどあるが、なぜか手にできないじれったさが熱くさせてくれる。

ある日、傾斜のきつい岩場でタイガーフィッシュを狙っていた時だった。深場から急浮上し、もの凄い勢いで追尾してきてミノーにがっちりと食いついた。スピード感溢れる疾走を力で制し、あっと言う間に抜き上げた。しかし、地面に寝かせた直後に大暴れをして針が外れてしまった。「あっ!」と叫んだ瞬間、タイガーフィッシュはゴロゴロと崖を転がり落ち、それを追って3mほど滑り落ちた。水に帰ろうとする寸前でタイガーフィッシュをキャッチしたが、勢いあまって湖に落下してしまった。必死で岩にしがみついていると、遠くで俺を見守っていたヨセフがボートで救助に来た。ボートによじ登り、左足を見るとスネがぱっくりと割れて大量に出血していた(T_T)。ヨセフは傷の手当をしながら、「お前、アホだろ?」と怒っていた(-_-;)
ナセル湖のタイガーフィッシュはどこかほっそりとしていて、サイズも80cm位までと、あまり大きくはならない。いつか、南部のぶっといタイガーに会いたいな…。
本命のナイルパーチは港を出発した時の期待とは裏腹に、乏しい釣果に肩を落とす日々が続いた。ナセル湖はあまりに広くそして深く、ナイルパーチの密度は高いとは言えなかった。ポイントの見極めは困難を極め、日の出から日没まで狙い続けるが、1mまでの中型サイズにとどまっていた。
ある朝、大きな岩に形作られた岬の先端に上陸した時のことだった。水中に巨岩が沈んでいるのが薄っすらと目に入った。
CD‐14MAGを巻いていると、「ドォン!」という衝撃と共に為すすべもなくラインが湖底へと引き出された。100ポンドを超える大物だと直感し、疾走を止めるため、ラインを親指で押さえ込んだ。だが止まる気配を見せず、やがてラインが岩に擦れる感触が指に伝わり、PE60LB+ナイロンリーダー70LBがあっさりと切れてしまった。
湖底深くまで、こんな大岩が沈むナセル湖。オカッパリで底に突っ込まれると、なすすべもない…。

逃がした魚は大きいとよく言われるが、ラインを切って逃げ去った巨大なナイルパーチのことを思うと気力さえも無くなっていった(T_T)。
旅は終盤に差し掛かり、自力開拓の地アブシンベルまで帰ってきた。相変わらずS字パターンは生きていた。ジョイクロフィッシュ!

ついでにS‐SONGにも! でも、アブシンベルのオカッパリはやっぱりサイズが小さい…。

新たな魚種「アラィア」。雑食性のこの珍魚、フライや相当弱めのルアーでなんとか。パンを撒くと簡単に釣れるんだけどね…。

ランチタイムに吸い込み釣りで淡水フグ(笑)。相変わらずわき腹には激痛が走り、ベッドの寝起きが辛かった。お気楽な釣りでしばしリフレッシュタイム。
そして、本番を開始。この頃、オカッパリでの本命狙いはCD‐14MAG一択!

ある日、湖の真ん中にぽっかりと浮かぶ小さな島に上陸し、わずか数投目のことだった。CD‐14MAGを沖にキャストし湖底まで沈めた。やや早めにトリッキーに泳がせ、丁度足元の浅場に浮上しようとした時だった。そいつは大岩の陰から突如現れ、ルアーを湖底へと引きずり込んだ。
ヨセフが駆けつけて来て「タケ、ビックフィッシュ?」と訪ねた。「たぶんね、でもあんまり大きくないよ!」と笑って答えた。だが、戦い続けていくうちにどうも様子がおかしかった。動きは鈍いが、重量感が半端ではなかった。そして約10分間戦い続けた末、ナイルパーチは疲れ果て浮いて来た。その影が瞳に映った瞬間、時は凍りついた。確実に100ポンドを超えている。あまりの大きさに、ヨセフに向って叫んだ。「ボートを持って来い!沖で抜き上げるぞ!」。ヨセフは慌ててボートの停泊する島の陰に駆け出した。
再び水中に消えたナイルパーチに胸が張り裂けそうになる。心の中で「ヨセフ、早く来てくれ!」と祈り続けた。やがてヨセフが操縦するボートがやって来て、素早く飛び乗った。10mほど沖にボートを走らせ、ヨセフに向って「次に浮いた時に取り込むぞ!」と叫んだ。そして再び蒼い湖面に巨大な影が浮かび上がった。ヨセフが素早く口にギャフを打ち込んで、2人がかりでその巨体をボートに引きずり上げる。「ドサッ」と足元に転がった巨大なナイルパーチを見下ろし、2人で抱き合って絶叫した。

145cm49kg。遂にこの手に抱いた巨神兵。今、長かったナイルの旅は終わった…。
でも、旅はまだまだ続く(^-^)v。それからが超絶好調! S字系、エスフラットのキャスティングでメーターオーバー!

お、重い…(-_-;)。

JOLT‐SWも大活躍。なんか、これまでの不調が嘘のように、周辺の島周りにナイルパーチが溜まってます。1匹釣るとスイッチが入って次から次へと…。

JOLTにもメーターオーバーきたー\(^^)/

食いが立っているのか、表層系にもビシバシ食ってくる。

お昼ご飯はこんなん、ナイルパーチのフライ、とっても美味しい。結局16匹の大爆釣 (^-^)v

この先、もう少し釣行は続くが、もう完全に満足していた。フワ〜とした、何とも言えない幸福感に包まれ、消化試合を重ねる…。

でも、この体高がたまらんの、カッコいい!

綺麗な跳躍、最高の日々だった…。

結局、ナイルパーチ50匹、タイガーフィッシュ11匹、アフリカンキャット1匹、淡水フグ8匹、アラィア3匹、バヤダ1匹でサファリを終了した。
※2017年追記
キャスティングでの釣りに拘ったこの頃だったが、今だったらどうだろうなぁ? もしナイルパーチを一度も釣ったことが無く、時間がホントに限られていたら、何が何でもトローリングでも釣ろうとすると思う。
また釣り番組以外のTV番組だったら、番組を成立させるために、始めっからトローリングでいくと思う。なんなら漁でも構わないほど、「釣りをやらない人に向けたTV番組の撮影」はホントに釣りに集中できない。でも、今度一人で行くなら、淡水なんでやっぱりキャスティングに拘ると思うよ。この頃より、のんびり気分でね (^-^)v
それにしても、巨神兵が飛び出してきたこのポイント。「オカッパリでよく捕れたなぁ」としみじみ思う。リーダーも2mしか入れてなかったし、まあもっと長くてもナイロン70LBなんて擦れたら一瞬で切れるけど…。「ただ、ラッキーだっただけではなかったのか…笑」。
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夜行列車でナイル川沿いを北上して岐路に着く。しかし、トイレがひどく汚い…。エジプトの民よ、うんこは流しましょうよ(-_-;)。こんな写真を撮っている俺もどうかしているが…。

途中、遺跡の街ルクソールに立ち寄った。郊外にある古代エジプト最大の神殿「カルナック神殿」を訪れる。高さ23m、巨大な柱が134本も立ち並び圧巻!

ナイル川の西岸、さとうきび畑の間に突如2体の巨像が現れる。メムノンの巨像。

そして、古代エジプトの王の墓が集中する「王家の谷」。中でもツタンカーメンの墓はあまりにも有名だ。

最後にアフリカ大陸とアラビア半島に挟まれた紅海を訪れた。紅い海はあまりにも蒼かった! ちょっと、エギングもやってみたよ!

巨大なアフリカ大陸をほんの少しだけお邪魔させてもらっただけが、旅は果てしなく長く感じた…。日本に帰って普通の生活に戻り英気を養い、また来年ダルいアフリカに戻ってこよう…。
2008年、‘続’アフリカ大陸の怪魚を追え!「アフリカはつらいよ」に続く…。