いわゆる観光地みたいなところに強いていくこともないとは思っていたが、たまたま貴重な平日休みが貰え、しかも紅葉シーズン。日帰りで行ける良い所はないかと考えた末、山梨の昇仙峡に行ってみることにした。
出発が少し遅めだったのだが、平日だし大丈夫だろうと高をくくっている。昇仙峡は思ったよりも山の中だったが、何となく昇仙峡観光で食べているのだろうお店が立ち並ぶエリアに来ると、道路でおばさんが交通誘導をしている。すれ違いざま「今日は渓谷へは行けないよ」と大きな声で話しかけてくる。一瞬、「えっ?!」と思ったが、前を行く山梨ナンバーの車は躊躇することなく進んでいくので、これは大丈夫だろうと思って先を進む(ちなみに、現在代車で、八王子ナンバーになっているのだ)。途中、道に人が出ていて、交通誘導みたいなことをやっているように見えるのだが、よく見るとみんな土産物屋で、自分の駐車場に客引きをやっているのだった。
最初に、一番下の市営無料駐車場に到着。車を出るとおっさんが近づいてきて、開口一番「ここから片道1時間半、往復3時間」と話しかけてくる。あぁ、そうですかと適当にあしらうと、別の老夫婦に話しかけ、「だからタクシーを使っていくといいんだよ」と言っている。タクシーの呼び込みか。ちなみに、市営駐車場には立て看板が立っていて、タクシー料金の目安が明示されている。さらに注意書きとして、「もしもタクシー料金に不明な点があればここにご連絡を」と。ぼったくりがあると言うことか!
タクシーより安く、徒歩より楽な行き方としては馬車というオプションもある。しかし、片道1000円で、中間部までも行かないようだ。中間部までは車で行くことにして、馬車の通る道をゆっくりと進む。県営無料駐車場は一杯だったので、やむなく道の端っこに縦列駐車をし、見所と言われる石門、覚円峰、仙娥滝へ歩いていく。しかし、最初のおばさんの「今日は渓谷へは行けないよ」というのは、嘘だったということか。
これが覚円峰。覚円とは、平安時代後期の天台宗の僧侶。この頂上は畳数枚の広さになっていて、ここで修行したという言い伝えからこの名がついたという。元々、甲府から昇仙峡を通って金峰山に至る修験道の道として御嶽道があったが、江戸時代に長田円右衛門らが生活道として整備したのが今の観光ルートの始まりとされている。
仙娥滝。落差30m。見事である。
滝までは山の中なのだが、上部は何と普通の観光地のようになっていて、美術館まである。その辺りは川が護岸工事されていて、普通の街中の川のようである。「これは自然の滝と言えるのだろうか?」とちょっとだけ考えた。土産物屋の主な商品は、水晶など奇石である。この辺りは古くから水晶の産地だったのだが、現在はほとんどブラジル産という。最近のスピリチュアルブームにあやかってか、やたらと「パワースポット」「パワーストーン」という単語が目に付く。
これがパワーストーンの1つ。六晶石。6000万年前に巨大隕石群が地球に衝突したことによって生じた地殻変動で生まれた、驚くべき力を持った石だという。私には、普通の水晶の原石のように見えるのだが。
水晶博物館があり、普段は入場料大人300円だが、その上に大きく「期間限定で入場無料」とプレートが貼ってある。永遠に入場無料なんではないかと突っ込みながら中に入ると、水晶で出来た仏像たち。ちょっと成金趣味な嫌いがある。
場末の温泉にかかってそうな、水晶で作られた裸婦像。
怪しく光る水晶たち。ちなみに、この美術館、最終的にはだだっぴろい土産物コーナーに通じている。温泉街によくある「○○博物館」と、繁華街でひところ流行ったクリスチャン・ラッセンやヒロ・ヤマガタの絵の展示場を合わせたような雰囲気である。
さて、昇仙峡ロープウェイで山頂まで行ってみることにした。ロープウェイ駅の口上書きによると、「風水の専門家によると、金峰山から龍脈が通じていて云々」「山頂を歩くだけでパワーを貰って帰る事が出来ます」となっていて、まぁ、勿論空気のいい、眺めの良い所で心身リフレッシュするのだから、悪いことにはならないだろうけれど、この半分押し付けがましい感じは、今ではあんまり流行らないんではないかと思う。そう、「昭和の観光地」って、どこもこんな感じではなかったのだろうか。そう考えると、懐かしいような何やらで、東京で言えば浅草辺り、私の実家(大阪)では、新世界とか、石切神社に近い臭いを感じる。
ともかくロープウェイで山頂に着いたのだが、これまたびっくり。なんと駅前に水晶のかけらが敷き詰めてある!!
そして、カップル目当ての約束の丘。スタンプラリーもやっている。丘というより小さなコブ。鐘が吊るされていて、これを衝くと幸せになると言われているそうなのだが。。
どこか静かなところはないかと、徒歩約20分の弥三郎岳に行ってみたが、ここは岩山で、山頂からの眺めはとても良く、山登りをした気分になれる。
で、ここから改めてよく見てみると、今自分がいる所はとても山深い所であることが分かる。こんな所に土産物屋、食べ物屋、ホテルなどが立ち並んでいるのは、ある意味凄いんではないかと。純粋に自然を楽しみたい方には、ちとうるさいかもしれないが、ネタとして楽しみたいというのであれば、昇仙峡はとても面白いのではないだろうか。今なら、萌えキャラ「仙娥姉妹」が出迎えてくれるだろう。


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