今年度初エントリー! って、遅いよ(苦笑
今月1日に最終の5巻が発売された「魔法遣いに大切なこと〜太陽と風の坂道」というコミックのことを書いてみようと思います。初エントリーがマンガの話題ってのもどうかと思うけど、好きな作品だし、まあ、いいか(w ちょっと小田さんの話題とも絡んできますしね。
まずは作品紹介から。2002〜2003年に掛けて「魔法遣いに大切なこと」が、
コミックおよび
アニメ作品として発表された。原作(シナリオ)およびアニメ版の脚本を山田典枝、キャラクター原案およびコミック執筆を
よしづきくみちの両氏が担当した。魔法という能力を持った人々が当たり前に存在する世界、魔法遣いの菊池ユメが研修のため東京を訪れたひと夏を描いた作品である。魔法遣いの存在以外は我々の暮らす世界そのもので、魔法遣いの直面する問題、抱える悩みも、本質的に普通の高校生のそれと何ら変わらない。テイストとしては「中学生日記」が近いかも知れない。
コミック版・アニメ版ともに特色があり、同時にひとこと言いたくなる点もあった。ここらへんを語ると長くなるので割愛するが、ヒロインのユメが恋愛に全くと言っていいほど関わっていないことは、特筆に値するかも知れない。本当は裏設定でいろいろあったのだけど、コミック版の本編では全く触れていない。アニメ版は更に徹底している。アンジェラというキャラクターがいて、十代の魔法遣いの女の子の恋愛のエピソードは全て彼女に集約されている。恋心を暴走させて東京タワーを捩じ曲げたりするのだけど、要するにユメはその手のエピドードに当事者として関わる事が無い。これはおそらく、作品の焦点をぼかさないための配慮だろう。ちなみに、東京タワーを捩じ曲げる回のサブタイトルは
「恋のバカヂカラ」である。主題歌は「キラキラ」ではない。
その後、同じ世界で、登場人物の異なる第2作が発表された。2004年1月から今年の3月まで連載された
「魔法遣いに大切なこと 太陽と風の坂道」である。舞台は東京から長崎と横浜に移り、物語も松尾ナミと転校生の富永龍太郎を中心に展開していく。
ヒットした作品の第2部とか続編とかって、往々に好きになれないものだけど、この作品は最後まで楽しんで読む事ができた。
そして、読んでいるうちに、「これは作者にとっての〈再挑戦〉なんだな」と思った。大切な人の死に苦しみ続ける心のために魔法を遣うという構成は、基本的に変わらない。ただ、その展開・表現は、前作よりも洗練されていると感じた。同時に、新しい挑戦として、前回は避けていた恋愛に今回は真っ正面から取り組んでいる。三角どころではない、多角形な恋愛絵図はやり過ぎな気もしなくはないけど、作品のさわやかな世界に救われているか。
先ほど、「ひとこと言いたくなる点がある」と書いた。それが妥当かどうかはさておき、それをもっとも強く感じるているのは、その作品を実際に作った人々だと思う。きっと、いろんな悔いがあったと思うのである。2匹目のドジョウというレベルを超えたところで、もう一度作品が作られるのは時間の問題であった。出版社の思惑がどうだったのかは知らないけど、作品を見る限り、山田・よしづき両氏は前向きに取り組んだに違いない。〈再挑戦〉する人は強い。「太陽と風の坂道」は、前作以上に好きな作品になった。
さて、小田さんの話題である。
ナミが、それまで忌み嫌っていた魔法で、母の死で凍り付いていた富永龍太郎の心を解き放つのが、この作品のクライマックスである。魔法の後、龍太郎は、母親が好きだった歌を思い出す。
その歌が
「風の坂道」なのである。
これには、素でひっくり返った。直前に「BROWIN' IN THE WIND」が出て来たり、タイトルが「太陽と風の坂道」なんだから予想できないことも無いじゃんと言われればそれまでだけど、それでも驚いて、そして嬉しくなった。
何が嬉しいって、好きなアーティストの好きな曲が、好きな作品の重要な場面で使われているのである。感傷的な言い方だけど、ひとつの感動が新しい作品を生み出し、それがまた新しい感動を生み出す、そんな流れの輪を感じたのである。それを嬉しく思うと同時に、そんな流れを生み出す作者達を羨ましく思い、いつか自分もそんな流れに加わっていけたらな、と思った。
「太陽と風の坂道」も完結となると、山田典枝・よしづきくみちの両氏が次にどのような作品を作るのかも気になってくる。「魔法遣いに大切なこと」シリーズかも知れないし、全く別の作品かも知れない。そもそも、次も一緒に仕事をするのか、別々に作品を作るのかもわからない。どちらでもいいと思う。どんな作品であれ、まずは素直に受け止めたいと思う。

「風の坂道」収録アルバムの宣伝をする松尾ナミ選手。
絵を描いた時点で、「伝えたいことがあるんだ」にも収録されているのを忘れてたー(涙

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