これまでに何件かサンドブラストの砂によるトラブルを書いてきましたが
今回はウエットブラストのメディアによるトラブルです。
「O/H後500km走行後エンジンから異音がし始めた」と
エンジンを分解してみるとクランクの磨耗、メタル(親子)の磨耗
訳がわからなく、診て欲しいということで持ち込まれました。
まず、クランクメタルを診て「あ、砂だな」直感しました。
これまでの臨床例で同様なものはありました。

砂がめり込み残り、力が掛かるロアケース側中央部は異常磨耗しています。
分解後洗浄せずに持ち込まれたため、オイルパンには諸悪の元凶が残っていました。

組み付け時のモリブデングリスに混じりおびただしいざらついたものが....」

パーツクリーナーで洗浄して黒いトレイに溜め、上澄みを捨て残ったものは......」

ほら、魔の白い粉!
パンに居れば通り道がすべてダメージを受けているのは容易に想像できますね。
オイルポンプも分解するとこのとおり
トロコイド、ボディともにまんべんなく傷だらけ

合掌!
クランクジャーナルからオイルを供給されるヘッドにももちろん白い粉の魔の手が

カムジャーナルにも傷が入っています。(もちろんカムシャフトにも)

ヘッドのオイル溜まりにも白いものが......」
コンロッドからの飛沫したオイルで潤滑されるシリンダー

おびただしい縦傷

ピストン側面にも普通のかじりによるスカッフとは違う砂特有のおびただしい傷が
酷い!砂により激しく磨耗したクランクシャフト

メタルの形状にあわせ段付磨耗しているのがわかります。

コンロッドメタルもこの有様

オイルが回るところすべて.......
もちろんミッションのベアリングも新品交換したものですがもう使いたくないですね
カウンターシャフトは内部を完全洗浄できませんから交換です。
当店でもウエットブラストはよく利用しますが
メディアが残っていたことは数多くあるなかの一度だけ
バイト君がやって失敗したものが届いたときくらいです。
ただでさえエンジン組み立て時は事前の下ごしらえでしつこいくらいの洗浄はしますのでまず問題はおきません
サンドブラスト(ドライブラスト)と違いウエットブラストは施工後そのまま水で洗浄ができるためきちんと作業していればメディアは残りにくいものです。
(形状にもよります。キャブレターみたいに細く細かい段つきがある通路は残りやすいみたいですね)
今回の場合はウエットブラストから帰ってきてメディアが残っていた
一応スチームなどで洗浄したが通路などに残っていたのでしょう
できることならばパーツクリーナーなどでしつこく洗浄してトレイにメディアが一粒でも落ちていない状態になるまで洗浄したいものです。
当店のエンジンO/Hでは1基のエンジンでパーツクリーナー1ケース(20本)使うのはごく普通です。そんなのケチってあとでトラブル起こしては基も子もありませんからね。