2012年2月25日 土曜日
フリー・フェア・グローバルを旗印とした新自由主義・構造改革・規制緩和の結果というか実態がまた見事事件として花開きました。日本人は心地よい言葉に弱い、という資質があるようです。もともとの感覚の豊かさ、感性の鋭さがある日本人ですが政治的・経済的感覚の鈍感さも併せ持っているようです。
政治家や公務員官僚や財界人が語る「美しい言葉、心地よい言葉」には要注意です。
ということでAIJに運用委託していた企業年金は大打撃です。わが社は超一流の零細企業なので企業年金などには加入していません。カネがなくなって生活できないようなら首括って死ぬだけ、どうせ死ぬなら社会に警鐘の一つも鳴らして逝こうと思っています(キリッ)。
〜〜47ニュース2月24日引用〜〜
http://www.47news.jp/47topics/e/225970.php
【AIJ投資顧問】年金2千億円の大半消失 金融庁が業務停止命令 企業側に多額損失も
企業年金運用会社のAIJ投資顧問(東京、浅川和彦社長)が企業から運用を受託している約2100億円の年金資金について、その大半が消失していることが24日、証券取引等監視委員会の検査で分かった。金融庁は同日、投資家保護のため、AIJに対し金融商品取引法に基づく1カ月の業務停止命令を出した。
監視委と金融庁は、AIJが損失などの運用状況に関して顧客や金融庁に正確な情報開示をしていなかったとみている。年金資金が消失した原因は不明。資金の消失が確定すれば運用を委託していた企業側に大きな損失が発生し、穴埋めを迫られるのは避けられない見通しだ。
開示資料などによると、AIJの顧客は2011年9月末時点で、127件。福岡県・佐賀県トラック厚生年金基金が運用を委託していたほか、金融関係者によると地方の建設、トラック関係の基金が多いという。
中小企業関連が多いとみられるが、半導体検査装置大手のアドバンテストや産業用機械の安川電機など大企業も運用を委託していたことを認めている。
自見庄三郎金融担当相は24日の閣議後の記者会見で、AIJから「運用状況を投資家に説明できない状況になっている」との報告を23日夕に受けたことを明らかにした。
監視委が1月下旬から検査に入り、今月17日までに消失が判明。具体的な消失額や原因は現在調査中だが、年金資金の引き出しによる混乱が起きる恐れもあるため、金融庁が監視委による行政処分勧告を待たず、異例の業務停止命令に踏み切った。金融庁が現時点で把握しているAIJの運用資産は1832億円(10年12月末)という。
業務停止命令によって、運用実態が解明されるまでは、企業側の年金基金が資金を引き出すことはできなくなる。
関係者によると、AIJは株価指数のオプション取引により「安定的に収益を上げる」と顧客に説明し、受託資産を増やした。リーマン・ショックによる市場混乱の中でも好業績を残す運用会社として投資家の間でも評判だったという。
金融庁は、年金運用などを行う他の投資顧問業者263社に対しても、緊急の一斉調査を実施し、同様の事例がないかどうかを調べる。
(共同通信)
〜〜引用終わり〜〜
大マスコミは報道しませんし、誰も書きませんが、これこそが新自由主義・構造改革・規制緩和の結果なのです。こんな経済を続けていると悪い者が栄える世の中になります。
この現象は今後も続きます。そうしないための選択肢を考えるには、キーワードが2つあります。リスクを回避するためには日本は日本人が幸せになるための独自の道を選択するしかありません。
1、ひとつは新自由主義というイデオロギー
2、もう一つはレバレッジによる効果
まず、新自由主義というイデオロギーです。
簡単にいえば、「規制など取っ払って自由に競争させろよ」、「その結果トラブルが起きれば優秀な弁護士雇って訴訟すればいい」、「それがグローバルに経済を活性化させる原動力になる」、って規制緩和をし、構造改革をしてきたわけです。もちろん規制緩和・構造改革というのは国民生活をプロテクトしている制度や仕組みを取っ払う、ということです。自分の都合のいいように言葉を解釈すれば判断を誤ります。
そして、「運用は個人の自由にやってくれ」といって始めた確定拠出型企業年金ですが、AIJは最初から運用していなかった疑いもあるとのことで運用委託した会社が全部掏っちゃった、後の祭りで訴訟しようが何しようが2000億円のカネは帰ってきません。9割が他消失していると報道されていますから破産状態であることは間違いない。
詐欺をしたAIJの方は他人のカネもらっても命取られるわけじゃないし、まあ、2000億円のためには2〜3年の不自由はしょうがないわなあ、と覚悟しているかもしれません。
国民をプロテクトする仕組みのなかで経済活動を行うヨーロッパ型資本主義、とにかくアメリカンドリームでカネ儲けを優先させるアメリカ型資本主義、の2つの種類がありますが、アメリカが行き詰ったのは、製造業が世界競争に勝てなくなり、基軸通貨ドルの地位を活用して世界からカネを集めたからです。
世界各国がアメリカに製品を輸出し代金をドルでもらった、そのドルでアメリカ国債を買った、さて、使えるカネはどちらにあるでしょうか(?)
アメリカですね。日本はドル国債という紙きれを持っているだけです。
アメリカ人はそのドルを使って輸入された製品を購入して豊かな生活を送ることができました、リーマンショックまでは。何のことはないアメリカ人が借金して使ったカネは日本人がアメリカ国債を買ったカネを金融機関を通じてアメリカ人に貸出し、そのカネをアメリカ人が使っていたのです。
資本主義は資本の蓄積が進めば進むほど、資本の暴発が起きる可能性が大きくなると思っています。その暴発を利益課税などの政策で適切にコントロールすることが必要です。たとえば金融で儲けた利益の80%は国家が課税する、とすれば手元に残る利益は20%にすぎずカネが暴発することを防ぐ効果があります。
カネに関するすべての規制を取っ払ってしまえば社会は大きな混乱に陥ります。アジア通貨危機などでわかったように一国経済を潰してしまうことなど簡単にできます。
企業年金の運用していたか、していなかったかわからないような怪しい投資顧問会社が堂々と出現してカネ集めるのですから事後の対応ではどうしようもない。事前にチェックして規制することが必要なのです。後からいくら違法だといってもカネが帰るわけではありません。
規制があるから国民は安心して暮らせます。規制の枠内で経済活動をする、というのは当たり前のことなのです。
次にレバレッジです。
金融機関は8%という自己資本比率が決まっていて(国際取引をしない金融機関は4%)それを守る限りはどれだけ預金を集めて運用してもいい、とされています。
たとえば100万円の自己資本の銀行はその12.5倍、1,250万円の貸出その他運用をしてもいい、ということです。元手は顧客の預金です。
なぜか(?)
金融機関には信用があるから、だとされます。信用創造機能があるとも言われます。
1,250万円を借りて工場を建てたいという企業に貸出す、そうすると工場を建てるために給料や資材メーカーに払われ、金融機関に戻ってきます。100万円のカネは市場を通じて1,250万円の経済を支えることになります。金融機関は1,250万円分の利息収入があります。元手は100万円なのに1,250万円の利息が得られる(もちろん預金利息を払います)、ボロイ商売です。
100万円あれば1,250万円分の利息が得られる、これがレバレッジの基本の「き」です。では、この8%という信用乗数を下げればどうなるかといえば、もっとボロイ儲けが可能です。たとえば倒産したリーマン・ブラザーズは住宅証券を簿外に移していましたから自己資本比率は実質3%程度、30倍以上の信用乗数です。
100万円の元手があれば3,000万円の運用ができるわけですから利益も大きい。バブルが順調に膨張していればリーマン・ブラザーズも破産することもありませんでした。しかし、信用乗数が大きいということは、わずかな損失で自己資本が吹っ飛ぶということでもあります。
3,000万円の投資が1割下落し、あるいは1割の不良債権が現実化しただけで300万円の損失が発生します。わずかこれだけのことで100万円の自己資本をもってしても穴埋めすることができません。それは同時に「あの金融機関は危ない」となり、誰もカネを貸さなくなりますから、結局3,000万円の運用は維持できなくなります。
利益も損失も信用乗数分巨額になる、というのがレバレッジです。
ヒト・モノ・カネの経営資源のうち一番自由に移動させることができるのはカネでした。レバレッジを効かせて利益を得たいと考えている輩は、右の国から資金を調達して(借りて)左の国に投資をするのに規制があったのではやりにくい、ビジネスチャンスを失います。グローバル化の嚆矢(こうし)は金融です。
しかし、バブルが崩壊すれば巨額の利益は巨額の損失になります。
製造業やサービス業では残念なことにレバレッジを効かせる仕組みはありません。だから投資金融業界の一人勝ちという格差が生まれたのです。そして金融でカネを作った連中は勝ち組、カネ儲けのできなかった人たちは負け組、と言われ、金融をするものとしないものの間で国民格差が生まれたのです。
同時に金融はゼロ・サムゲーム、誰かの利益は誰かの損失、です。バブルが崩壊して金融機関に公的資金が入れられる、ゼロ金利が続く、こうして日本の金融機関は損失を穴埋めしたのですが、本来金利収入を得られる国民の所得を金融機関に移転したものです。金融機関は倒産リスクを国に押し付け肩代わりしてもらったともいえます。
それにしてもレバレッジがなければここまでの格差はありえなかったでしょう。
製造業はコストかけて設備を作っても製品は利益を出すとは限らない、しかも売れる数は国内では限定され、海外では競合が存在します。とびぬけた製品は作れない。金融の自由化のついでに非正規雇用で失業を増やすヒトの自由化、規制はすべて取っ払って危険な食物も安全な食物も味噌くそ一緒のモノの自由化、これらは新自由主義者からすれば当たり前、ということになります。レバレッジがないからまだマシだとも。
要するに日本は失われた20年に何をしたかといえば、新自由主義者たちの儲けのための市場を作り、仕組みを作ってきました。国々と国民、は新自由主義者たちの儲けの道具にされたわけですから、国民が苦しくなるのは当たり前です。
多くの日本人がこの実態に気がつき始めていますが、これを推進したのは自民党の小泉純一郎・竹中平蔵であり、池田大作を守るために政権与党に加わることだけが使命の公明党です。 民主党菅直人・野田佳彦も新自由主義・構造改革という同じ路線です。
アメリカという歴史のない国、文化の薄い国がカネだけで勝負しようとして失敗したのが現在の状況です。東日本大震災における米軍の協力には感謝しますが、本当に感謝されたいのなら日本に借金返してから言えよ、との感情もあります。トモダチ面してるだけのヤツらとは付き合っちゃいけない、ケツの毛まで抜かれる、って。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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