「武雄市の為政者は図書館に行ったこともないバカなのだろうか」
社会のできごと
2012年5月28日 月曜日
アマゾンなどで買い物をすれば「あなたにお勧めの商品はコレです」ってウザいメールが頻繁に届くことになりますが、あれは特定の商品を購入した人たちの購買履歴を調べ購買履歴から関連の商品を抽出し「この商品を買った人はあの商品にも興味があるだろう」と仮定して自動的にメールを送りつけるものです。関連購買への誘惑メールです。
何事もそうですが「幸せは電話やメールで向こうからはやってこない」わけです。わたしの場合にはそれを見ることはほとんどありません。
なぜ、こんなことをするのか(?)
アメリカの大規模スーパーマーケットで売上商品を統計分析をすると「おむつが売れると缶ビールも売れる」という関連性があることに気がついた、そこで調べてみるとおむつを購入するついでに缶ビールも購入している若者夫婦が多いことがわかった。で、おむつの隣に缶ビールを置くという店舗づくりを行った、というものです。本当かどうかわかりませんが、一見関係のない商品が消費者のなかで関連付けられている、その意味でマーケティングの教科書に事例として掲載されています。
これって、最近は日本のどこのスーパーでも見かけますね。イチゴの隣に練乳がおいてあったり、アスパラガスの隣に炒め物調味料が置いてあったり。
さらになぜ、こんなことをするのか(?)を考えてみると次のような事実があるからです。
「商品が売れない」、だから「売上が伸びない」
商品が売れないなら売れるようにすればいい、客数に客単価を掛けたものが売上です。1日100人の来店がある、今までは1人2000円の買い物だったが、それを1人2500円にすれば売上は20万円から25万円に25%も増加します。
つまり客数は増やしにくいので客単価を増やそう、ということです。客数を増やすというのはなかなか難しい、チラシを入れたりしても新規顧客はなかなか定着しません。コストを考えると既存顧客の定着にコストを使ったほうがいい、既存顧客に1点余分に買ってもらった方が効率的だ、という現実があります。
そして客単価を増やすには「これを買う」と決めて来店する顧客にも目的以外のものを買ってもらえばいいわけです。だから関連購買が流行るわけです。
つまり「客不足の現実を前にどう売上を増やすか」として出てきたのが関連購買を誘うマーケティングです。店舗に関連商品を置いたり、メールで関連商品の購買を進めたり、ということの現実です。
さて、これを図書館に利用しようというバカ市長が出てくるわけです。
〜〜YAHOOニュース5月28日引用〜〜
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120526-00000457-yom-soci
図書館「次のお薦め」波紋…読書履歴は個人情報
読売新聞 5月28日(月)7時32分配信
図書館の貸し出し履歴をレンタルソフト店「TSUTAYA」の運営会社に託して活用しようという、佐賀県武雄市の構想が波紋を呼んでいる。
履歴情報は、利用者に推薦本を紹介するリコメンドに使われるほか、運営会社の市場調査に利用される可能性もある。図書の貸し出し履歴は思想信条に関わる個人情報で、これまでは「履歴は消す」が原則だった。だが、IT技術の向上で情報分析が容易になる中、履歴活用に踏み出す図書館は増えつつある。
武雄市が市立図書館の運営をTSUTAYAを展開する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」(東京)に委託するのは来年4月から。従来の図書館登録カードをCCCの共通ポイントカード「Tカード」に置き換え、Tカードのもつ機能は原則利用できるようにする計画だ。例えば、本を1冊借りるごとに1円分のポイントが付与され、提携するコンビニなど小売店4万6000店で交換できる。
「あなたにはこんな本がお薦めです」などと、過去の貸し出し情報などから、各人の関心にぴったりの本を薦めるリコメンドも、目玉サービスの一つだ。
ただ、リコメンドするには貸し出し履歴をCCCが蓄積して分析する必要がある。さらに、履歴を匿名化した上で提携の小売店に提供し、市場調査に活用することも検討されている。
こうした履歴の活用は、図書館では長年タブーとされてきた。全国の図書館2357館が加盟する日本図書館協会の「図書館の自由に関する宣言」(1979年改訂)では、「何を読むかはその人のプライバシー」と定め、ほとんどの図書館では本の返却後すぐ履歴を消去してきた。国立国会図書館の場合、閲覧・複写の申請データを1か月後に消去する。
最終更新:5月28日(月)7時32分
〜〜引用終わり〜〜
まあ、図書館を利用したことのない人たちはこのように考えるのでしょう、カネが勿体ない、と。それとも武雄市の為政者はバカな住民が増えてくれるほうが行政はやりやすい、と本当に考えているのでしょうか。
そもそも図書館の運営を民間企業に任せる、ということ自体が日本国民の知的レベルをあげるために図書館がどのような役割を果たすべきか、という観点がスッポリ抜け落ちています。それは民主主義の大切な機能を果たすべき図書館をどう作り上げていくか、という観点の欠如です。
知性をもった国民が自分自身の思考力で情報を処理するこそが民主主義の基礎です。それは現実には虚構ですが、わたしたち日本人はその虚構によりかかりながらでも、よりよい社会を目指していくという民主主義の方向性に同意を与え憲法を作り、その枠内で生活をしているわけです。
その知性と民主主義を守るのが公立図書館なのです。確かに地方都市では税収が減り経費のかかる図書館そのものが成り立ちにくいという事情があるでしょうが、それは選挙と同じく民主主義に必要なコストです。コストがもったないからといって1割程度の経費削減しか見込めない図書館民営化は目先出て行くカネがもったいなくて自分のプライドも精神をなくしていくその日暮らしの施策です。
この議決をした武雄市の市議会議員のみなさんも図書館を利用したことがないのでしょうね。
今はさすがに多くの書籍を自前で購入していますが、学生の頃には余裕がないので図書館に行き開架式の書庫に入って一日を過ごしたりしていた強烈な記憶が残っています。そこでの図書との出会いや時間が自分自身を作ってくれたと思います。
閲覧室での勉強も楽しかったし、知的刺激はこういう体験からしか生まれないと思います。単なる一学生の要求に応えて一生懸命に本を探してくれた職員の方々も本に囲まれる仕事ができる幸せを感じているように見えました。
それをCCC従業員が事務的に貸し出し作業をして、事務処理の過程で入手できる個人情報をビジネスに使おうなど、というのは知性や民主主義を育む図書館の存在価値からすれば薄汚い行為に思えます。
そもそもこの図書館への入館者が多いかどうかはわかりませんが、多くても少なくてもかかるコストはそれほど変わりません。入館者は無料で借りることができるのですから。
それなのに国民の知性や民主主義に直結する図書館運営を民間に委託するなど正気の沙汰とは思えません。ポイントが貯まるから図書館に行くわけではありません。図書館に行き、自分とは異なる知性と出会うことが楽しいから図書館に行き本を読み、借りるのです。
わたしには情報漏えいも早晩問題になると思いますが(情報を入手して、どう活用するかを検討するに決まっています。)、それよりも図書館運営の民営化、という愚策のほうが問題であると思います。まあ、民営化がなければ情報の2次利用もありえないわけですが。
最後までお読みいただきありがとうござます。

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