「地方自治体の情報の発信をFACEBOOKに任せるということの民主主義のリスク」
社会のできごと
2012年8月26日 日曜日
民主主義とは、国家やその他社会集団の権力者が構成員の全員であり、その意思決定は構成員の合意により行う体制です。
日本を含む欧米の先進国は一応民主主義に基づく政治を行い(内容も質もさまざま)世界では民主主義は中心になる価値観であることは事実です。
それに対する例外がイスラム社会ですが、これについては昨年の日記で触れています。ご覧いただけると嬉しいです。
http://wind.ap.teacup.com/ippo-nifo/1095.html
その他にも国名に「民主主義」という名前がついていても「独裁主義」国家があります。北朝鮮の正式な国名は「朝鮮民主主義人民共和国」というそうですが、金王朝による独裁国家であり民主主義もなく、君主国です。実態に合わせて名前をつければ「朝鮮独裁主義君主国」です。
逆にいえばこんな国でも一応「民主主義でやっている」というポーズを取るほどに民主主義は普遍的だ、ということです。
もっとも北朝鮮は国家ではありません。よくて私企業、国内・外交を含めて考えればヤクザ組織だと思うことがあります。やっていることが金王朝による私的利益の追求であり、それに適した組織体だからです。まず大株主(大親分)として創立者(金日成)の子供(金正日)が社長(組長)になり、次に孫の金正恩が社長(組長)になる。その取り巻きには番頭(若頭)がいる。この組織の求心力は創立者のカリスマと権力の側にいることで利益配分を優先的にかつ多く受けられる地位です。ここには国民の生存という民主主義国の根本的な理念はまったく存在しません。対外的にヤクザのように脅す、ゴネる、開き直るという交渉を行うことは周知の通りです。
「オマエらどうなっても知らんで、オレはチャカ持っとんやで」「ええ加減にせんか、そんなもんで納得できると思っとんのか、ボケ」「逮捕するいうんやったら逮捕せいや、そのかわり覚悟しとけや」。これがこれまでの北朝鮮の交渉の原点です。
さて、話題を民主主義に戻します。
民主主義は多数決にしても合意形成にしても時間とカネと手間がかかりすぎるという弱点があります。しかし、わたしは時間とカネと手間がかかっても民主主義は今のところ人類が発明した最高の仕組みだと思います。
〜〜読売ONLINE8月25日引用〜〜
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20120825-OYS1T00282.htm
年賀状住所録200人分、武雄市長 誤ってネット公開
佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長(42)は24日、私的な年賀状の住所録をインターネット上に誤って公開していたことを明らかにした。これまでに悪用された情報は、寄せられていないという。
樋渡市長によると、住所録は、市内外に住む知人約200人の住所と名前。2010年12月、ネット上でデータを保存するサービスを利用し、バックアップ用に住所録を保存した際、「非公開」の設定とせずに、誤って誰でも見ることができる「公開」とした。今月23日に簡易投稿サイト「ツイッター」の書き込みで指摘があり、非公開に直した。
また、公職選挙法では、市長らが、選挙区内の住民に年賀状などのあいさつ状を出すことを禁止しているが、返礼のための自筆によるものは対象外。住所録のほとんどは市外の知人で、市内の知人分は返礼用に作成していたという。
(2012年8月25日 読売新聞)
〜〜引用終わり〜〜
〜〜ガジェット通信8月26日引用〜〜
http://getnews.jp/archives/244945
『Tカード図書館問題』の武雄市長が個人情報を漏洩、公職選挙法違反の疑いとなる情報も
Facebook市長として有名な佐賀県武雄市の市長が個人情報を漏洩した。漏洩した個人情報は氏名、郵便番号、住所などを含む個人情報232件。ファイル名から、武雄市長自身が管理する住所録ではないかと推測される。市長は自身のブログからリンクして公開している『Yahoo!ブリーフケース』の公開ディレクトリに個人情報が含まれる自身の住所録を置いていた。
市長はツイッター経由で個人情報漏洩を指摘され、23日22時40分頃ディレクトリごと削除した模様。
公職選挙法違反の疑いも
ファイルは年賀状の住所録管理・印刷ソフトの形式となっており、その住所録部分には武雄市の住所も多く含まれていた。これらの住所へ実際に印刷し年賀状が送られていれば、公職選挙法の「あいさつ状の禁止」に抵触することになるため、しかるべき機関による調査が必要だと考えられる。
公職選挙法
(あいさつ状の禁止)
第百四十七条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む。)を出してはならない。
武雄市長が個人情報を含んだファイルを置いた場所は、プレスリリースのファイルを公開するためにつくられたディレクトリであり、同じ公開ディレクトリにファイルを置いていた。
あまりにずさんな管理だが、武雄市長の個人情報管理の甘さは、すでに『Tカード図書館』『ツタヤ丸投げ図書館』とも称される武雄市新図書館構想の発表時以降、すでに数多く指摘されていた。
すでに数多く指摘されていた個人情報をめぐる問題
この新図書館構想は、武雄市長と共にTSUTAYA(CCC)が企画したもので、最近ではスターバックスコーヒーも参入を表明しており注目されているプロジェクト。TSUTAYA(CCC)としても運営費が税金から安定して支払われる公共図書館運営事業はぜひとも展開したいと考えているようで、その上で『Tカード』の図書館導入はある意味前提となっているようだ。しかし『Tカード』関連では昨今セキュリティの問題が数多く指摘されているのが事実で、『Tポイントツールバー』がアクセス履歴を送信していた問題や、ドラッグストアでのTカード利用者の購入医薬品名や購入日付の漏洩問題などが発生している。当然、『Tカード』が図書館にこのまま導入され、図書館利用者が『Tカード』を利用すれば利用者の図書貸出履歴はTSUTAYA側へ筒抜けとなるのだが、新図書館構想の発表時セキュリティ専門家がその点を指摘すると、TSUTAYA側は返答に窮し、武雄市側に至っては逆ギレ回答をおこなうという顛末もあった。
さらにその後、武雄市側はセキュリティの議論そっちのけで、問題点を指摘したセキュリティ専門家を執拗にネットで攻撃し、官僚出身である武雄市長はその立場を利用して「職場の上司に報告する」「霞ヶ関そして国会議員に働きかけ、国会で取り上げる」「上京してあなたの職場にこのブログを持って行く」などとセキュリティー専門家に圧力をかけつづけ、ツイッターで脅迫まがいの発言を繰り返すなど、議論の深まりもなく、問題はまったく解決しないまま事態は泥沼化しているというのが現状だ。
【TSUTAYA図書館問題】Facebook市長がセキュリティ研究者に「公開討論を」「お背中流しまーす」と誘うも断られ「卑怯だ」と怒る
Facebookアカウントを市の職員全員に実名で取得させたり、図書館にTカードを導入検討してみたりなど、話題性はあるものの個人情報漏洩に対する危機感は希薄だといわざるを得なかった武雄市の施策。武雄市市長の個人情報漏洩事件を機に、一度立ち止まって個人情報保護の大切さについて考えるとともに、真摯にセキュリティ専門家のアドバイスを受けてみてはいかがだろうか。
〜〜引用終わり〜〜
私は武雄市という地方公共団体を知りませんでした(恥)が、図書館をTUTAYAに運営委託をするというニュースに日記を書きました。一読下さるとうれしいです。
2012年5月28日「武雄市の為政者は図書館に行ったこともないバカなのだろうか」
http://wind.ap.teacup.com/ippo-nifo/1321.html
それは図書館が民主主義を育てるためのインフラである。それなのに、図書館を民間業者に委託して運営費が安くなったとか、利用者情報の二次利用でお勧めの書籍情報が送られてくるとか、ポイントがたまるとか等々メリットがある、というのはおかしい、民主主義の否定につながる、という主旨です。
最後に「わたしには情報漏えいも早晩問題になると思いますが(情報を入手して、どう活用するかを検討するに決まっています。)、それよりも図書館運営の民営化、という愚策のほうが問題であると思います。まあ、民営化がなければ情報の2次利用もありえないわけですが。」と書きました。
情報漏えいの可能性のある民間業者への図書館運営委託、これを導入した市長自身が情報漏えいを行ったというオチです。公職選挙法の適否が問題にされているということは故意で行っていた可能性があるということです。
わたしもFACEBOOKに登録してはいますが個人情報流出というかいろいろなメールやお誘いが来るのが鬱陶しいのであまり利用していません。つまり民間業者に自分のプライバシーの生殺与奪を任せたくないのです。
ましてや、地方自治体の運営そのものをFACEBOOKに置き換えて行くという志向は地方自治体における民主主義を崩壊させるものです。自前のHPを持つのは民主主義に必要なコストです。それをもったいない、というなら民主主義は成り立ちません。節約するところは他にいくらでもあります。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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