2009年6月28日 日曜日
10兆円という金額、財布のなかの1000円札のほうに親しみと現実を感じるわたしにとってピンときません。100万円の100万倍が1兆円、100万円の1000万倍が10兆円です。
宝くじでは1000万円が100万人にあたるだけの金額です。
1000万円は1万円札にして厚さ約10センチですからこの札束のレンガを並べると100万メートル(1000キロメートル)の距離をつなぐことができる金額です。東京・大阪の往復距離に相当します。
1万円札の面積は16センチ × 7.7センチで13.2平方センチ、この札束のレンガを並べると123万2千平方メートル、1109メートル四方の正方形の面積を埋め尽くすだけの金額です。
年金の運用損失が大変な額になりましたね。10兆円だそうです。読売新聞が飛ばしていますが、厚生労働省はまだ発表していません。
〜〜読売オンライン6月27日引用〜〜
公的年金の積立金運用、赤字10兆円…過去最悪に
公的年金の積立金の2008年度の市場運用実績が10兆円の損失となったことが26日、分かった。
単年度の赤字は2年連続で、赤字幅は過去最大となった。08年9月の米証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)に端を発した金融危機による株価下落や円高が要因で、運用利回りもマイナス10%台に落ち込んだ。厚生労働省は「単年度の赤字で長期の年金給付にすぐ影響がでるわけではない」としているが、今後の年金制度のあり方にも影を落としそうだ。
公的年金の積立金の運用は、厚労相からの委託を受けた「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が行っている。国民年金と厚生年金を合わせた積立金は約140兆円で、そのうち約90兆円を市場で運用している。運用割合は6割超が国内債券、2割が国内・外国株式、残る1割が外国債券となっている。
08年度は、第1四半期(4〜6月)のみ1兆円の黒字を確保したが、以降は株価下落などの影響を受けて、赤字に転落。第2四半期(7〜9月)が4兆円、第3四半期(10〜12月)は5兆円と大幅赤字を記録していた。
厚労省が今後100年の年金財政を検証した「財政検証」では積立金の運用利回りを4・1%に設定した上で、厚生年金の給付水準が「現役世代の収入の5割以上」を確保できるとしている。今回のマイナス10%は目標と大きく乖離(かいり)した結果となっており、このまま運用の低迷が続けば、厚労省の計算通り年金資金が確保できず、将来の給付カットにもつながりかねない。「現役世代の収入の5割以上」は政府・与党の公約でもあり、給付カットとなれば、年金不信がさらに深刻化する恐れもある。
ただ、今年度に入ってから、株式市場は回復基調にあり、運用実績は改善しつつあるとの指摘もある。
[解説]株式運用リスク浮き彫り
公的年金積立金の2008年度の運用が過去最大の赤字を記録したことで、資産の一部を国内外の株式などに振り向けている運用方法のリスクが浮き彫りになった。今後も運用不振が続けば、将来の保険料引き上げや給付カットにつながりかねないだけに、株の比率を下げるなど、より慎重な運用方法に変えるべきだという意見が強まりそうだ。
厚生労働省は今年2月、積立金の長期的な運用利回りの想定を、04年改革時より0・9ポイント高い年4・1%に上方修正した。想定が楽観的過ぎ、後になって財源不足に陥る恐れがあるという批判が専門家から相次いでいたが、その懸念が一段と強まった形だ。
政府・与党内では現在、運用成績を高めるために株の比率を増やすことなどが検討されている。こうした動きに、ブレーキがかかる可能性がある。
国内外の株式を運用資産に組み込めば、長期的には債券より高い運用利回りが実現する可能性がある反面、単年度の運用損が生じるリスクが高まる。この点について、必ずしも国民の十分な理解が得られているとは言えない。年金制度への信頼に響きかねない結果だけに、厚労省は、赤字の原因と責任の所在について、十分に説明責任を果たすべきだ。
〜〜引用終わり〜〜
この記事でも指摘されているように、年金の運用損失は昨年度に続きマイナス運用となりました。
どのような状況なのかおさらいしましょう。
運用額 利益・損失 利回り
平成13年度 144.3兆円 2.8兆円 1.94%
平成14年度 141.5 0.2 0.17
平成15年度 145.6 6.9 4.90
平成16年度 148.0 4.0 2.73
平成17年度 150.0 9.8 6.83
平成18年度 149.1 4.6 3.10
平成19年度 138.6 ▲5.2 ▲3.53
平成20年度 116.6 ▲10.0 ▲8.50(推定)
合計 1133.7 13.1 1.15
この8年間の1133兆円の総投資額に対して運用益は13兆円にすぎません、運用利回りは1%です。
これは運用成績だけで、手数料や運用を行なうための人件費、設備費、事務経費、などの経費は含まれません。もちろん当初かかったイニシャルコストも含みません。
これらを計算に入れればとっくに赤字になっているのではないでしょうか。少なくとも市場金利での運用を下回ると推測します。
公務員は業務に関する責任を問われませんし、したがって責任を負うこともありません。
問われるべき責任とは何でしょうか? 企業なら結果責任、収益に関しても、事件・事故に対するコンプライアンスに関しても、結果責任を問われます。
しかし、こういう運用損は高い運用益が出たときにはボーナスをたくさん出し、手数料も多く払います(多分)。
年金積立金の運用は1年という短期では勝負はつきません。運用益が出たときに賞与に加算されるなら、運用損が出たときには賞与カットだけでなく私財をもって損失の補填をすべきでしょうが、それは聞いたことがありません。
資金を運用する者の責任は有限責任ではなく無限責任とするべきです。個人または法人の固有財産をもって弁済をする、ことです。
他人のカネはカネと思えないから運用できます。損失を出しても絶対に自分には降りかからないからです。自分のカネならできないことも思い切ってできます。無限責任ではそうはいきません。自分の財産と同等の注意をしなければ自分の財産で払わなければならないからです。
「有限責任」の結果がこの運用成績です。当事者である厚生労働省は累計での「黒字」を強調するでしょうが、今のままを続ければいつ赤字になってもおかしくはない、むしろ株価を下支えするために高値で買うためにこのような運用になります。政府の経済対策としての運用です。
外国人投資家は今も資金繰りが楽になったわけではありません。時価評価の停止、時価評価の恣意的な運用、負債評価益、これらの国家的粉飾決算によって一時的にいいように見せかけているだけですから、いつ資金繰りがつかない状態になるかわかりません。とくにヨーロッパ発の金融危機が遠くない時期に(?)表面化しそうです。
日本株式における外国人投資家の比率がかって4割といわれていましたが今は3割をきります。資金繰りに窮すれば日本株を売ってアメリカに送金しなければ資金繰りがつかないので、日本株の比率を下げています。
国民の財産である年金積立金で株価を支えるのではなく、本来下げるところまで下げる、アメリカ人投資家は安値でも売らざるをえないわけなので日本の投資家が買うところまで株価を下げるべきなのです。
アメリカの投資家のために高値支えをすることは国富の消尽に繋がる売国的行為です。なぜなら年金積立金は厚生労働省の資金ではなく国民の積立金です。国民の資産を外国人投資家に移転する行為は行なわれるべきではありません。
アメリカ人投資家が売りまくって安くなったところを日本の投資家や自社株買いによって日本人が買い支えればいいのです。今の時期に年金資金で支えることは日本国にとってはマイナスです。
年金積立金の運用は結局素人がやっても同じなら、独立行政法人など作らずに日本国債でも購入しておけばいい、リスクを冒してまで取らなければならない利益ではありません。
卵は同じカゴに入れると落としたときに全部割れる、だから別々のカゴにいれるべきだ、ポートフォリオの基本原理です。今のようにグローバルな時代にはリスクも利益も同じ方向に向きます。どのカゴに卵を入れてもリスクは同じです。
上記の動きを見ればわかります、株価がバブルによって上がっているときには運用益が出るが、バブルが崩壊したときには運用損が出ています。世界の動きの反対の行動を取るというのがポートフォリオだとすれば、今、行なっていることにはなんの意味もありません。世界のリスクとリターンの動きに翻弄されている、というのが実態でしょう。
その結果がサブプライムローンを組み込んだ証券化商品であり、それを保障したCDSです。お互いに無価値となった証券を保有し合っている状態です、まだ損失は実現していないから、と。
そのサブプライムローンの担保である住宅は1ドルでも売れないのに、なぜローン残高の価値を保持していると考えるのでしょうか。不思議です。
年金積立金の運用先にはこのような証券化商品は本当にないのでしょうか。調べたら出てきました、などということにはならないのでしょうか。
毎年、毎月、毎週、毎日、責任と結果を明確にする評価システムを導入しないと官僚がこの国を食い尽くしてしまいます。なんとか官僚の暴走と利権をとめなければならない、これが国民共通の政治的合意だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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