2009年9月29日 火曜日
モラトリアム = 借金踏み倒し、という短絡的な思考がマスコミで意図的に流されているように思います。
モラトリアムについては亀井静香氏の所属する国民新党も具体的な形で法案を出していないために、語られることがそれぞれイメージでしかないというマイナスを生んでいます。
わたしは、基本的に中小企業を救済するためにはモラトリアムは有効であり、かつ必要だと考えています。
マスコミが「評論家」の口から言わせるのは、借りた企業がモラトリアムを盾に返さなかったら貸し渋りがもっと増える、貸した金融機関は資金を寝かせることになり利益が上がらない、貸し倒れ損失が増える、生き残るべきではない企業が存続することになり、新規創業が阻害される、など、ほとんど言いがかり、ないし金融機関や中小企業の実態を把握していない抽象的な理由です。
金融機関は自ら積極的に発言しているわけではありませんが、資金が固定してしまうから銀行経営にもマイナス影響だ、などという根拠のないことが喧伝されています。
亀井静香氏も明言しているように、モラトリアム=借金踏み倒しではありません。
また、モラトリアムの範囲を支払い利息にも広げるという発言がありましたが、利息の踏み倒しではありません。
子供の頃に親から借金して踏み倒した経験のある方もいらっしゃると思いますが、社金踏み倒しでも利息踏み倒しでもありません。
いずれも、元金・利息の支払いを3年間猶予する、そうするとたとえば元金を毎月200万円、利息を10万円ずつ返済していた中小企業は月々210万円の資金繰の余裕が生まれる、この資金を貯めて新しい事業やリストラや生産性の向上のための取り組みをすることができるようになります。
赤字の埋め合わせに使われる可能性もあります、金融機関は与信管理を行うことは当然です。そして問題のある企業に対しては早期の法的処理を勧めるか、信用保証協会の保証付きに切り替えるなどを行い金融機関のリスクを一部負担することもありうるでしょう。
約束した以上、元金と利息を返すのは当たり前、というのはその通りです。しかし、中小企業の実態はその約束を履行することのできないヒドイ状態の企業が多いということです。
亀井静香氏は、このような企業の状態を黒字倒産と言いますが、正確ではありません。黒字倒産もありますが、業績が急激に悪化し赤字に転落した企業も含みます。
今、6%というのが日本の企業の全業種の平均的な営業利益率です。医薬品20%、不動産15%と平均より高い業種、建設3%、卸売2%と平均より低い業種、バラつきはあります。しかし、売上高から仕入れを引き、さらに販売にかかる経費を引いた残りが6%だ、というのです。
日本の代表的な企業トヨタ自動車は連結ベースで営業利益率8.6%です。
中小企業は借入金への依存度が高いので、そこから支払い利息を引けばさらに利益率は下がります。
具体的に見てみましょう。
通常のとき 売上が25%ダウン
売上高 100,000(100%) 75,000
売上原価 70,000(70%) 52,500
粗利益 30,000(30%) 22,500
経費 24,000(24% 24,000
営業利益 6,000(6%) ▲1,500
ということになるのです。
売上が25%落ちると赤字経営になる、これは上場企業を含めた日本の全産業の平均なのです。
当然ながら赤字が2年3年と続けば倒産に至ります。事業の資金繰りだけではなく、銀行その他金融機関への借り入れ返済が生じるからです。
赤字になったうえ、さらに金融機関からの借入金の返済を別途資金調達しなければならない、など現状の中小企業に要求しても実現できません。
借入金・利息を弁済するだけの体力のある中小企業はもちろんモラトリアムの行使をせず、元金利息の返済を続ければいいのです。
強制的に一律にモラトリアムをするわけではありません。
現在黒字の企業は国税庁の発表によれば約30%、赤字企業が約70%です。
頑張っている少数派の30%の黒字企業でさえ、25%の売り上げダウンにより赤字企業になるわけです。そして赤字企業には金融機関は融資をしない、ということになります。
まぁ、ほとんどの企業を潰し、労働者を路頭に迷わせ、失業者の増加と治安の悪化、社会保障費による救済を行うというなら市場から赤字企業を一掃し、新規創業を図ればいいです、しかし、企業のほとんどが倒産していく、このような状況で新規創業の活力が生まれるのでしょうか。
むしろ逆なのです。このような状況では成功する確率も小さく、誰もが大きなリスクを冒して創業しようとは思いません。むしろ、安全を優先するでしょう。
周りを見て、苦しいけどなんとかやってる、と評価できれば、苦しいかもしれないけど、会社にしがみつくよりは自分で創業しようか、となるでしょう。
25%の売り上げなど簡単にダウンします。消費者じしんが購買行動を抑制しています。産業材であってもエンドユーザーが買わない限り同じ規模で生産を続けるわけにはいきません。
あなたじしんの生活を考えてみてください。
20万円の給料で家族4人が暮らしていたものを、20万円の給料は変わらないけれど15万円で暮らすようになり、5万円を貯金に回す、危機の時代には普通に行うことではありませんか。
このような状態では返済余力のない企業に対して、とりあえず返済を猶予する、そして25%の売り上げダウンでも資金繰りはなんとかなる、という状態を作り出すことはむしろ当然だとも思います。
中小企業を潰さず、産業と雇用を確保するために。
その返済を猶予された分企業は資金繰りに余裕ができます、一生懸命に経営努力により、リストラをし、業務を根本から見直すなどを行い、企業の生産性を向上させ、3年後に返済を始めたときには、立派な会社になっている、これが眼目です。
モラトリアムに反対の方は、この実態がおわかりでしょうか。
もちろん、通常の状態なら、このようなことを法律で行うのは適正ではありません。しかし、今は100年に1度という危機の時代です。日本国の企業が世界で成功するためには必要なことだと思います。
むしろ、反対論者は、銀行の資金運用について現状の中小企業融資を引き揚げて、アメリカ国債を積極的に買うことで、利益をあげるという過ぎ去ったビジネスモデルに拘泥しすぎなのではないか、と思います。
つまり日本の資金を日本の危機からの脱却ではなくアメリカのために使う、というビジネスモデルを追求したいのでしょうか。自分たちの高額な年収のために。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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