2009年10月17日 土曜日
「モラトリアム」法案が次第に姿をはっきりさせてきましたが、当初亀井静香金融担当相への、コンサルタント・エコノミストのリアクションは、ひどいものでしたね。
今も続きますね、「識者」というヒトを出してきて欠点やウソを喋らせている。
彼らの本質が、中小企業救済にはなく、根拠のない言辞でもって銀行や大企業へすり寄ってカネ儲けをする寄生虫であることを理解させてくれました。ありがたいことです。
大きい枠組みでいえば、元本の返済に窮する中小企業・零細企業は元本の返済を3年間をめどに返済の棚上げをすることができる、利息の返済も棚上げをすることができる(利息返済棚上げについてわたしは反対ですが)、その利息棚上げについては国が金融機関に対して補償措置を行う、その間の当該企業の借入は原則できないが、国の制度を利用してその途を開く、というものです。
いわゆる徳政令のように借金棒引きでチャラにするとか、利息を踏み倒す、とか、ではなく、一定の期限を設けてその間の返済を猶予する、というものです。
中小企業の倒産リスクは2つあります。
1つは、亀井静香金融相が指摘する黒字倒産という言葉に代表される企業収益の問題です。
中小企業の7割が赤字であり(現に金融機関から借入をしている場合に赤字を出せば返済を迫られるので粉飾してでも黒字決算を行う、それを含めても3割の中小企業しか黒字決算をしていない)、赤字が続けば倒産にいたります。
中小企業の7割もの倒産予備軍がいる国に未来はありません。
倒産リスクの2つめは、中小企業の資金繰りです。黒字でも資金繰りがつかなければ倒産にいたります。
もともと、日本の中小企業は自己資本が小さいという特徴を持っています。それを政府系の金融機関が「融資」により埋め合わせをしてきました。民間の金融機関もそれに追随した融資をしてきました。
土地や建物、機械設備の導入に金融機関は融資で対応したのです。本来それは資本支出ですから出資金と剰余金でまかなうべきものです。金融機関はこれに代わるものとして融資を行い、実質的には中小企業に資本金を出し、資本不足を補完してきたのです。
しかし、いくら長期資金といえど、借入と返済を続ければ資金繰りに行き詰るのは自然のことです。資金繰りを改善できるまでの収益を出す力は多くの中小企業にはない、そこを行き詰らない程度に、返済し終わった時期に又貸しするので中小企業の資金繰りはまわっていたのです。
事例で見てみます。
平均すれば毎月1000万円の売り上げ、売上総利益率30%、売上総利益額300万円、販売費・一般管理費250万円、営業利益50万円の中小企業、3か月手形で売上代金回収をし、対応する原材料仕入700万円は3か月手形を振りだす、という中小企業があるとします。経費250万円は現金で出ていきます。
売上は月や季節によりバラつきがあるのは当然です。売上が前月より20%下がるだけで資金繰りはくるいます、さらに不渡りが発生したり、賞与の支払いなど運転資金が余分に必要なときには金融機関から借入をしなければ会社を維持できません。
ここで設備更新投資および運転資金として金融機関から6000万円の借入をするとします。毎月150万円の元本の返済と毎月15万円の利息の支払いがあります。
この元本返済分を3年間猶予されれば「自己資金」は、4860万円できます(150万円 × 36か月 =5400万円、利息180万円 × 3年 = 540万円を差し引く)。
この資金の余裕を作りだして倒産を回避すると同時に、中小企業が自らの強みを生かした新しい事業や既存事業の強化を通じて3年後に再度市場で評価される製品づくり、商品の販売を行う、ということこそが求められることです。つまりイノベーションをどのように行うか、この猶予期間だということです。
イノベーションを行わない「モラトリアム」はありえません、意味がないのです。
返済を猶予され、イノベーションにより強い体質の企業づくりをすること、この道筋を提示できない企業は、マスコミのいうように倒産を3年間先延ばしするだけです。
倒産を3年間先延ばしするというところに落としどころがあるのではなく、3年後に国際的にも通用する中小企業をどう作るか、借金に頼らずに自己資金でやっていける中小企業になれるか、ここが一番大きな問題です。
そのような強い体質を作り上げた後に、毎月150万円づつの元本返済を行うことで中小企業の持ち味を生かし、倒産を防ぐ、ことに本当の目的があります。亀井静香金融担当相も明言しています。
しかし、マスコミは今もこのことを報道しません。「借金踏み倒し」「金融機関の貸し渋り強化」という短絡的な報道を行ってきましたが、返済猶予と同時に進めなければならないのは、自社にとって資金繰りを解決した後に収益をどうするのか、ということです。
一つ一つの企業が真剣に取り組み黒字化すること、これが残された本当の問題です。
これからの社会は、情報・知識・知恵、など人に保有されているこれらの無形の資産が重要になる時代です。
情報・知識・知恵はパワーです。
わたしの、このブログをお読みいただいている方が、経験だけでなく、意識的に身につけられる情報・知識・知恵が中小企業を救う源泉になりますし、日本の危機を救うパワーにもなります。
普通だったら、こんなブログ喜んで読みたくないですよね、小難しく、役に立ちそうにない情報しかない。それでも読んでくださる方がいらっしゃることに深く感謝しています。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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