わたしはアメリカ人はどうしてここまで強欲なのかいつも疑問でした。お金に対する興味が日本人とは違う、お金に対する執着がものすごくて、お金にしか興味がない、そんなのがアメリカ人の国民性なのかと。
ちなみに投資銀行といわれたゴールドマン・サックスでは従業員の平均年収は7300万円、さらにトップクラスは給料・ボーナス・株式など合計すると軽く700億円を超えます。1年でですよ。
想像がつかないと思うので具体的に。1日約2億円です、1時間約800万円です、1分13万円です(対労働時間ではありません、寝ている時間を含みます)。非常識な給料だと思いませんか?彼らの1分とわたしの一ヶ月の給料は同じです、ハイ。
これは妬み・嫉みではありません、世の中に貴重な価値を提供したヒトが高い収入を得るのは当然です。世の中のヒトは命を救われ便利になり豊かになるのですから。
しかし、カネころがしやっただけの人間が法外な収入を得るのは明らかにおかしい、そう思います。投資銀行というのは虚業でした、世の中に必要な価値など何も提供していません。むしろ今回の事態を引き起こすに至った原因を作っただけです。
世界に時限爆弾バラまくためにお金を出したようなもんです。こんなもん、さっさと規制をかけるべきだったのです。
たとえば税金という方法があります、倒産したリーマンが積極的に始めた商品先物投資です、原油やとうもろこしなどエネルギーや食料の価格が上がり始めたときに、これらに対する投資の利益は100%の税金をかける制度にしておけば、誰もそれ以上の投資はしません。同じように違法または脱法的で実現不可能な信用創造に基づくデリバティブで出した利益は100%の税金をかけるという制度にすれば利益全額が税金ですから誰もお金を出しません。
結局バブル崩壊まで投資銀行だけではなく政治家もみんなカネころがしに乗っかってたのです。「危ないからやめろ」と止めなかったのです。その意味では同罪ですね。
たとえばなし、子供がチャカで遊んでいる、そこへ大人が面白そうだといって一緒になって遊んでいた、全員盛り上がったときにチャカが暴発して大人も子供も何人か死んだ、あわてて「危ない!」って言ってるようなもんです。危ないことはわかってます、死んでますから。それを言うなら子供がチャカで遊んでるのを見つけたときに、遅くても盛り上がる前に言わないと。盛り上がっているときには一緒に楽しんだじゃないか、こんな状況なのです。
だんだん真相がわかってくると、こんな高給取りの会社を税金で救済するというのはおかしい、とみんな思うようになります。その圧力は今でもあると思います。やがて刑事訴追や民事責任を問われる日がきます、銀行救済はやむをえないけれど責任者は責任を取れ、と。
でも、アメリカ人のなかでバブルで給料が上がったのはこういう業界にいたヒトとその幹部だけだったのですね。他の産業の従業員はほとんど年収は上がっていないようです。このことのことを知り、アメリカ人全員がカネの亡者ではないことがわかりました。
このことを知るためにずいぶん回り道をしました。でもアメリカ人全員がそうではないということがわかってよかった、アメリカ人はフレンドリーだし陽気です。辛気臭い日本人の付き合う相手としては最高です。そこでわたしの思考の一端を。
昔、マックス・ウェーバーというドイツの社会学者がいました。なにやら難しい本を書いているヒトです。で、その著作のなかに「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という難しい本があるわけです。
みなさんも高校や大学で聞いたことはあるでしょう、有名な学者ですからね。もちろんわたしも聞いたことはありました、でも読んだこともありませんし、なにやら解説を読んでも???の連続です、解説すら読むのを諦めました。
ところが、です。最近若手の社会学者Yさんと知り合い、そのことを話したら丁寧に教えてくれました。
以下、解説すら理解できなかったわたしが誰にでもわかるように説明します。
ウェーバーはまずイギリスやアメリカやオランダというプロテスタントの国でなぜ資本主義が発展し栄えたのか、一方イタリアやスペイン、そしてルター主義のドイツではなぜ資本主義が発展せず遅れたのか、と考えたわけです。
イギリスはカトリックから別れたプロテスタントの国です。そのなかのカルバンの流れをくむカルバン派=カルビニズムは、もともと神は救うヒトを予定しているので罪を犯したあんたがいくら懺悔しても救われないよ、と考えます。
ここがカトリックと違うところです。カトリックでは神父さんの前で懺悔すると救われ天国に行けると言います。カトリック教会では祭壇を正面にし左右の側面の所々に神父さん一人が入れる小部屋があります、見たことありませんか。信者さんがその外側にひざまずいて両手をしっかり合わせて告解する場所です。外からは内側を、内側からは外側を見ることはできません。
カルビニズムではどんなに懺悔しても救われない、だけど倹約と勤勉に努め、仕事に成功すればそれは神の恩寵の証ではないか、と考えるのです。一生懸命に仕事をしよう、一生懸命に仕事をすれば、自分は神から選ばれ救われているという確信を持つことができる、とこう考えるわけです。
その結果仕事に励み他国より資本主義を発展させることができた、というわけです。ウェーバーのいうプロテスタンティズムの倫理観が資本主義の精神と一致して資本主義を発達させた、ということのダイジェストです。
わたしは、アメリカ人のお金に対する執着が資本主義と結びついているのではないかと考えていたので、ウェーバーに興味を持ったのですが、実は・・・そんなに高尚なものではなかったのですね。
気狂いのようなカネの亡者、人間の欲望だったのですね。ほんの一部のヒトの。しかし、日本のバブルもそうでしたが、崩壊してよかった、という面もあります。

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