2010年2月16日 火曜日
法律が成立する前には、繰り延べ申請をすれば新規融資は受けられないから使う企業などないとか、政府の民業への介入だとか、といって日本経済新聞・朝日新聞等ほとんどの大マスコミが反対しました。中小企業には借入金返済の一時棚上げという切実な思いがあったにも拘わらず。
マスコミはじぶんたちの報道の検証をせずに、自分たちの利益の都合のいいように情報を垂れ流し続ける存在であることが、次第にわかってきました。
〜〜中日新聞2月16日引用〜〜
http://www.chunichi.co.jp/article/economics/news/CK2010021602000147.html
返済猶予法で申請2万件 2割の実行許可、増加見通し
大手銀行各行は15日、中小企業や住宅ローンを抱える個人の負担軽減を促す「中小企業金融円滑化法」に基づき、返済猶予などの申し込み、実行件数を初めて公表した。同法施行の昨年12月4日から同月末までの約1カ月間が対象で、大手6グループの傘下9行に対する申込件数は、合計1万9560件(約8883億円)にのぼった。件数ベースですでに約2割の返済見直しを実行したが、審査中のものが多く、今後認められる件数は増える見通しだ。
景気低迷で、多数の中小企業などが苦境に立たされる中、相談件数は増加している。中小企業、個人との取引が多い三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそなの4行への申込件数は計1万9128件で、うち3197件を実行した。一方、申し込みを断った件数は、4行合計で38件にとどまっている。
みずほは、12月末の時点で中小企業からの申し込みのうち2406件(約1200億円)は審査中だったが、うち7割は審査を終了して1月以降に実行している。三井住友も、年末で約4700件(約1861億円)が審査中だったが、最終的には9割超の見直しを受け入れる方針という。
申込件数について、法施行前と比較できるデータがある三菱東京UFJ、三井住友の場合、中小企業で2倍程度、住宅ローンで4〜5倍程度の申込件数となり、事前の周知徹底や相談体制の整備などで利用件数が増えた形だ。申込件数が最多だったのは三菱東京UFJで、6504件にのぼった。12月中に見直しを認めたのはうち1667件(約930億円)となっている。
東京中小企業家同友会の担当者は「中小企業の資金繰り支援には効果がある」と評価する一方で「返済猶予してもらった後、銀行の態度がどうなるか不安があり、申し込みに二の足を踏んでいる経営者も多い」と指摘している。
金融機関名 件数 金額(億円) 1件当平均額(千円)
三菱東京UFJ 6504 2663 40,944
三菱UFJ信託 77 58 75,324
三井住友 6155 2457 39,918
みずほ 3849 2148 55,806
みずほコーポ 3 24 800,000
みずほ信託 128 105 82,031
りそな 2620 1347 51,412
住友信託 72 20 27,777
中央三井信託 152 61 40,131
合計 19,560 8883 45,414
〜〜引用終わり〜〜
どうでしょうか、12月4日から12月30日まで(12月31日は金融機関休み)の1か月でこれだけの返済繰り延べ申請があったというのです。
これをしなければ、やがて中小企業は資金繰りに窮して不渡り・倒産ということになっていたことはまちがいありません。
約2万件の返済繰り延べ申請は、その背後に企業経営者家族と従業員と家族がいます。
たとえば、従業員が10人とすれば中小企業は約20万人の生活を支えていることになります。これだけを見ても大きな意義のある施策だったと評価できます。
大企業を中心に景気回復が射程に入っていますが、中小企業にはまだその恩恵は及んでいません。
また、大企業の収益が回復しても中小企業には及びにくい構造があります。大企業は調達を多様化させ、また下請けの中小企業にさらなるコストダウンを要求するために、大企業の収益が回復しても中小企業には波及しにくい、のです。
企業にとっては、一般経費の節減より製造原価を低減させるほうが収益に対して大きな効果があります。
具体的に見ましょう。
(単位:千円)
売上 1,000,000
製造原価 600,000
粗利益 400,000
___________________
管理費・販売費 300,000
営業利益 100,000
という企業があるとしましょう。そこで売上が20%ダウンすると
売上 800,000
製造原価 480,000
粗利益 320,000
____________________
管理費・販売費 300,000
営業利益 20,000
「これはいかん!」と給料や設備にかかる管理費・販売費を20%カットするとします。
そうすると
売上 800,000
製造原価 480,000
粗利益 320,000
____________________
管理費・販売費 240,000
営業利益 80,000
となります。成功したように思いますが、従業員からは不満が出ます。それより原価を20%下げるとその効果は次のようになります。
売上 800,000
製造原価 384,000
粗利益 416,000
____________________
管理費・販売費 300,000
営業利益 116,000
従業員からブーブー文句を言われるより、仕入先に対して20%努力してもらえば、管理費・販売費をカットするより大きい効果が出ます。
中小企業もさらに下請けがあり、同じことが可能ならばいいのですが、多くの中小企業はそういうわけにはいきません。同じ量を製造しても売上が下がるという構造があります。売上が下がることは資金繰りに窮することです。
このような構造と資金繰りを取材で理解していれば、あのような借入金返済の一時棚上げがどれだけの中小企業を救済するか、が理解でき大マスコミのほとんどが反対するということはなかったはずです。
もちろん、中小企業は大マスコミに広告を載せませんし、金融機関は大マスコミを通じて販売促進を行います、そのために金融機関向けのポーズだったのでしょうか。
いずれにしても12月だけでもこのような効果があったことは政策として前進です。自民党・公明党政権では絶対に実現できなかったことです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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