2010年4月30日 金曜日
「急ぐとも、心静かに手を添えて、外にこぼすな松茸の露」
「一歩前へ、君のはそんなに長くない」
「男ならぐっと突き出せ筒先を 後に退くとは卑怯千万」
男性の方には心当たりのある便器の前の張り紙、です。こういう張り紙を見ると「すいません」とつぶやきます。長くなくて悪かったな、と。
女性の方、朝からすいません。
とはいえ、女性版もあるのです。
「急ぐとも 心静かに 殻を開け そっと潮吹く 磯のハマグリ」
「ほとばしる 磯のあわびに 潮香る 決して漏らすな 羽衣の露」
まぁ、「松茸の露」のパクリレベル、ですね。
高齢者となれば尿道を締める筋肉が衰えます。若い頃には「おしっこ」と言えばすぐに出るし、しかも勢いよく出て、切れもいい。ところが高齢者となると、このいずれもが衰えるのです。
「おしっこ」したいと思っても、尿意はあるがいざ便器の前にいくとなかなか出ない、出始めても勢いがない、切れがないのでちょろちょろ・だらだらとおしっこが出る、というか漏れる感じでしょうか、これが高齢者のおしっこの共通の現象です。
だから、経験的に言えるのは、混雑するトイレで急ぐときには若者の多いところに並べば順番が早くなる、ということです。間違っても高齢者の多い列に並ばないこと!
最悪の場合、2倍の時間がかかります。つまり若者8人の列と高齢者4人の列の待機時間は同じ、ということです。
もっとも最近の列は一列で空いたところに順番に行くという方式が自然にできるようになっています。「フォーク型」というのだそうです。こういうルールづくりが自然にできる、ということは外国に行く人が多いということなのでしょう、ありがたいことです。
銀行のATM、トイレでも、「しまった!」と思う列に並んでしまった経験が1度や2度あるはずです。
ATMではもう終わりかと思えばそうじゃない、また違う通帳を取り出して入金したり、振り込みを始めたり、自分の後ろにどれだけの人が待っているのか想像していない、無視するオバチャンたちがいます。
トイレの場合には、すぐ後ろに立たれるのもイヤなもんです。「早くしろよ」と催促されているように感じてしまいます。フォーク型で並んでいれば最後まで安心して用を足せます。
フォーク型行列、それだけではありません。横入りする人もいません。1列ごとだと気の弱そうな人の前に横入りするようですが、いくつも行列があるので横入りに気づいても注意する人は少ない、フォーク型では全員の待ち時間が増加するので誰か勇気のある人が注意する、ことになります。
少し前、京都駅前から清水寺方面行のバス待ち両親と小学生程度の男子1人の3人家族が横入りしていました。家族3人でそういうことをする、できるというのはトンデモ家族なのでしょう、何食わぬ顔で乗り込んで行きました。
こういうことをされるとみなさん気分が悪くなりますね。言葉に表さなくても。京都市バスの方にお願いです。清水寺などの観光客の人気スポットを周回するバス乗り場はフォーク型で乗り場は一つ、の原則で乗り場の設計をしてください。
便所の前の張り紙といえばもう一つあります。
昔は、「一歩前へ」「こぼさないようにお願いします」などの依頼する表現が多かったのですが、最近は「きれいに使っていただきありがとうございます」などという先にお礼をされる表現が目立ちます。
これを心理学では前提挿入、といいます。「ありがとう」という前に「きれいに使っていただき」という前提を挿入されることで、じゃぁきれいに使おうかとなる(ありがとうなどとお礼を言われたくないから汚くしよう、と考える人は少ない)のです。
経済も日常行動も基本をたどれば人間の欲望、面白いですね。
わたしは、「尿意は睡魔を駆逐する」が好きです。
「悪貨は良貨を駆逐する」。
有名なグレシャムの法則です。金本位制において純粋の金貨(良貨)と銅などの混じった金貨(悪貨)が流通する時、人々は良貨をタンスにしまいこみ、市場には悪貨しか出回らないようになる、という法則です。
飲みすぎてそのまま寝込んでしまっても、ほとんどの大人はオネショをしません。睡魔と戦ってトイレに行きます。
そのトイレには
「急ぐとも、心静かに手を添えて、外にこぼすな松茸の露」と書いてある札にもめげず、外にこぼすのですね。
こういうときには便器の下に赤いミニチュア鳥居をおくといいかもしれません。
臭い話し、最後までお読みいただきありがとうございます。

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