2010年8月16日 月曜日
英語を中高大と8年もやってきたのに、英語では話せないわたしは、楽天やユニクロの英語公用語化の会社をどう評価すればいいのか、戸惑います。
企業だから自社の10年先20年先を展望して、戦略を立て、それを実行する人材育成をするのだろう、とは考えてみるものの、やはり(?)です。
〜〜現代ビジネス引用〜〜
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/960
大論争 社内公用語が英語って、なんか違うんじゃない? 楽天、ユニクロ、日産
「普通、バカだと思われます」
「会社の幹部ならともかく、一般社員にまで社内で英語を使わせることに、何の意味があるのでしょうか。5年に一度のハワイ旅行のために、お金を払って英会話教室に通ったら、その人は普通、バカだと思われますよね。海外赴任の可能性もない社員に英語を覚えさせるのは、それと同じくらいムダで愚かなことです」
こう呆れるのは、マイクロソフト日本法人元社長でインスパイア取締役ファウンダーの成毛眞氏だ。
今、日本企業に「英語の社内公用語化」という巨大な波が押し寄せている。その先頭に立っているのは、インターネット通販大手の楽天だ。
楽天は6月30日の説明会で、2012年のうちに社内の公用語を英語にすると発表。三木谷浩史社長も説明と質疑応答を英語でこなし、「(英語の公用語化は)日本企業であることをやめて、世界企業になるための第一歩」とぶち上げた。楽天の幹部社員は言う。
「すでに取締役会だけでなく、幹部会議や、全社員が月曜の朝に集まる『朝会』での社長の話も、すべて英語で行われています。資料もほとんどが英語。
社長が『英語ができない執行役員は2年後にはクビにする』と語っており、上級管理職にはTOEIC750点以上、中間管理職には700点以上の英語力が求められている。社員の多くは必死で英語を勉強しています」
楽天は5月、ベルリッツ・ジャパンに依頼して、社内で英会話教室をスタートした。220名の募集枠はすぐにふさがってしまったという。
「うちの若い社員は、英語力の高い者が多い。やはりミドル層の方が概ね不得意ですね。幹部会議でも、皆、まだ会議の中身より英語を話すことに気を取られています。そもそも『グッド・モーニング』なんて同僚に話しかけるのも、内心ちょっと恥ずかしくてね(笑)。
でも、週一度のレッスンと、毎日聴いている英語教材のおかげで、だんだん覚えてきましたよ。自信もついてきた。『取引先が日本企業なのに、なぜ英語の練習をしているのかな』と思うことはあるけれど(笑)」(前出の幹部社員)
ちなみに三木谷社長の英語力は「ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を取っただけあって、非常にうまい。日本の経営者で、メモや台本を見ずにあれだけ話せる人は珍しい」(アメリカ人ジャーナリスト)という。
楽天と前後して「英語の社内公用語化」を宣言したのが、カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。やはり2012年に、国内外の全オフィスで使う言葉を英語とし、社員の目標はTOEIC700点以上。
「柳井正社長が『世界中に年間100店を出店する』『世界で活躍できる店長を年に1000人送り出す』とよく語っており、社内全体がその強い海外志向に引っ張られている感じです。
僕なんか、英語はろくにできないし、会社の仕事で英語力が必要とは最近まで思っていなかったので、TOEIC700点と聞いたときはめまいがしました。でも今は、海外でH&MやGAPに勝つために、必死で勉強しようと思っています」(若手社員)
いやらしいハッタリ
同社では、柳井社長自らが率先垂範して英語を学んでいるようだ。長い親交のあるメーカーズシャツ鎌倉会長の貞末良雄氏は言う。
「5年ほど前にユニクロがアメリカに出店してから、柳井さんは特に英語を熱心に勉強していると聞きました。成果も相当上がっているようです。アパレル業界でそういう高い意識を持っている経営者は、かなり珍しいでしょう。努力家の彼らしいと思います」
他にも日本企業では、日産自動車が、カルロス・ゴーン社長の就任以来、経営会議を英語で行っており、社内メールや資料、書類などは日本語と英語の両方で記している。
「日産はトップが外国人だし、フランスのルノーが大株主。実質的に、もう日本の会社とは呼べません。英語の社内公用語化は当然の流れで、国際化戦略に沿った正しい方針です。ただし、必ずしもすべてがよいとは言い切れません。
社員の中には『英語ができる者が実態以上に評価されているような気がする。それが会社にとってマイナスになっているのではないか』と言う人もいます」(経済ジャーナリスト・松崎隆司氏)
どんな会社でも、英語力が評価されるだけならともかく、英語が不得意な社員が実力より低い評価を受けることになれば、モチベーションの低下につながりかねない。そうすれば、経営に悪影響を及ぼす可能性は十分にある。
その点を危惧したのか、本田技研工業の伊東孝紳社長は、7月20日の記者会見で、こう一刀両断した。
「日本国内で英語を使おうなんて、バカな話だ」
これについて同社広報部は「社長の発言は『英語は必要ない』ということではなく、『臨機応変に使い分けるべきだ』という意味です」と説明するが、「よくぞ言ってくれた!」と拍手喝采した"英語難民"も多かったのではないか。
前出の成毛眞氏は「そもそも日本人の95%に英語はいらない」と語る。
「総合商社や、海外に展開しようとしている会社には、確かに英語が必要な人が多いでしょう。しかし、それ以外の業界で英語ができなければならない人は、せいぜい5%くらいです。
そもそもビジネス英語は、必要に迫られれば、早い人で3か月、遅くても1年でできるようになります。発音も語順もブロークンでいい。たとえば商品を売りたければ、"I want to sell〜"で十分。そういう基本的な言い回しと商品名、それに『売り上げ』『人件費』といったビジネス用語や業界用語を覚えておけば、問題はありません」
成毛氏によると、外資系企業でも、上層部の5%くらいの人は高度な英語力がある。しかし、残りの95%の英語力は日本企業の平均的社員と同じか、むしろ下回るくらいだという。
お茶の水女子大学名誉教授で数学者の藤原正彦氏は、英語の社内公用語化を「結局は自社のグローバル性をアピールするための宣伝ではないか」と推測する。
「20年くらい前、三菱商事やインテルのトップが、やはり社内で使う言葉を英語にしたいと言い出したことがありました。しかし、それは自社の国際性を宣伝し、自分が英語を話せることを自慢するためのいやらしいハッタリにすぎなかった。今回の楽天やユニクロの決定も、同じようなものではないでしょうか」
英語をマスターするのは本当に大変なことだと藤原氏は強調する。読書や思索を犠牲にして勉強しなければ、英語は上達しない。その結果、仮に社員の英語力がアップしても、他の重要な能力は身につかず、会社全体の活力も失われてしまう---というのだ。英語圏での生活が長い藤原氏の意見だけに、説得力がある。
「もう楽天やユニクロには、『言い出したからには、絶対に(英語の社内公用語化を)やってくれ。それで成功してみせてくれ』と言いたいですね」(藤原氏)
実はリストラ策
一方、社内公用語に英語を選ぶことに疑問を呈するのは、経済ジャーナリストの須田慎一郎氏だ。
「確かに現状では、英語が世界のビジネスで多く使われていますが、それが続く保証はない。今後を考えると、私なら中国語を選びます。三木谷さんも柳井さんも頭が古いと思いますね。
また、日本のビジネス社会では、英語が堪能な人とできない人の間に、平均年収で約500万円の差があるとされています。楽天もユニクロも、社員に英語を習得させるのなら、その金額を給料に上乗せすべき。その点を覚悟して公用語化を打ち出したのか、はなはだ疑問です」
社内公用語化はまた、体のいいリストラ策に使われる恐れがあると須田氏は見る。執行役員だけでなく、一般社員も「英語ができないからクビ」を宣告されるとなれば、恐ろしい話だ。
アシスト社長のビル・トッテン氏は、楽天やユニクロがめざす国際化志向そのものを疑問視する。
「三木谷氏や柳井氏は世界市場を狙っているため、英語を社内公用語にすると決めたのでしょう。グローバル化をめざしていれば、そのこと自体はおかしくないと思います。
ただし私は、ビジネスがグローバル化する時代は終わりつつあると思います。石油の時代が終わり、石油エネルギーがなくなる中で、これからの世界のビジネスは、グローバルではなく、ローカルに向かっていく。だから日本人も、英語より日本語を磨いた方がいい。そもそも今の日本人は、日本語が弱すぎます」
こう語るトッテン氏はアメリカ出身で、4年前に日本国籍を取得している。
今後、日本企業の公用語として英語は定着するのか。リーダー的な存在の両社は、「社内の英語化はスムーズに進んでいます。情報の共有にも問題がなくなっています」(楽天広報課)
「現在は、社員がTOEICで何点取れるかを調べている段階で、その結果をもとに、社内公用語化をさらに進めます」(ファーストリテイリング広報チーム)と説明するが、前出の成毛眞氏はこう予想する。
「5年後には、状況はガラリと変わっているでしょう。現在55歳以上の世代がごっそり退職して、会社は人材が足りなくなる。すると経営者は『英語なんてできなくていい。仕事で覚えろ』と言い出しますよ。企業なんてそんなものです」
どの会社も、貴重な社員に余計な負担をかけて、本業の方はジ・エンド---などという結末は避けたいものだ。
〜〜引用終わり〜〜
ということですが、この記事に決定的に抜けている論点があります。いや若干藤原正彦氏が言葉として残していますが・・・、論点にはなっていません。
わたしが考える重要な論点とは、英語はあくまで会話やコミュニケーションのツールにすぎないということと、言語は会話のツールとしてのみあるのではなく、思考のツールでもあることです。正反対のことを言っているように思うかもしれませんが、実はこういうことです。
日本語で話すということは日本語で思考しているということです。日本語で概念を構築し、日本語で論理を組み立て、日本語で表現しているわけです。何をバカなことを、と考えられるかもしれませんが、日本語を話すだけの場合にはそんなことを感じません。
しかし、例えば朝、英語で簡単な挨拶でもしなければならないときに、日本語で「今は朝だな、午前中だからグッド・モーニングだな」、と考えていませんか。
母国語以外でしゃべるときには、普通日本語に頭のなかで訳して言葉を選びます。だから難しいことを言おうとして適切な表現がなく、言葉がでてこない、という結果になる。
しかし、英語のできる人の英語を聞いていると、難しい言い回しなどしないし、難しい表現も言葉も使っていません。なぜなら、そのような易しい表現で思考しているからです。
たとえばゴルフの石川遼選手、簡単な表現でありながら英語をうまく使う、それは英語で思考しているからであり、わたしたちのように日本語で思考したことを英語で表現しようとしないからです。
社内での英語公用語化はまだしも、小学校に英語教育を持ち込むという話しのほうがもっとおそろしいのですが、英語を学ぶということは、英語で思考することを含むのです。日本語もできないうちに、つまり日本語で思考することもできないうちに英語を習う、英語でも日本語でも思考できない人間が育つことになります。意味ない会話を成り立たせるために。
今、企業で何が必要かというと、場面場面で思考し、錯誤し、それを現実に合わせて一つの形にしていくことです。情報を統計や数字や記号としてではなく、どのように組み合わせて、どのような意味を持たせるか、それをどう活用するか、ということです。
この力をつけるほうが重要であり、真っ先にしなければいけないことです。英会話などやっている場合ではありません。これらのことを思考するためには日本語が絶対に必要です。日本語が不自由なら日本語の思考も論理展開も表現も不自由です。だから、企業が本当に長期戦略を考え、自社に資源を蓄積しようというのであれば、日本語や日本語の思考を助けるために、本を読ませるべきです。
しかも、ロジカル・シンキングとか、論理力をつけるなどのハウツーものではない読書、これが想像力を高め、論理力をつけるのです。
このことは日本語を母国語とし、他の言語を話し、論理的に考えられる方なら同意していただけるはずです。
もちろん、英語は話せないより話せるほうがいい、しかし、それは必要なときにやればいい、社内で英語を話しあう必要などまったく想像できません。あるとすれば、外国人が参加する会議で共通の土俵で議論したい、という場合です。それは必要な立場の方がすればいいわけで、全員がそうするものではないように思います。
これは英語を母国語とする人にも同じことがいえます。日本語で話す必要があれば日本語で思考する訓練をすればいいわけです。
この話題、なかなか、適当な記事がなく困っていました。しかし、重要な問題です。これで楽天とユニクロという会社が大した企業ではない、ことがわかってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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