2006/9/10

感情移入の達人たち  舞台裏のひとりごと
20年来オーケストリオで一緒に弾いているギター奏者のワルターは、詩人です。
いや、詩を自分で書くかどうかはさておき(書くと思うけど)、
詩人の心を持った作曲家です。

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以前、「モノを見るときの見方」、の話をしていて

私は、少し距離を置いて、それがナンなのか、何でできているのか、
どうしてそこに存在するのか観察するタイプ、

夫は、手にとって質感と重さを感覚的に量り、それで遊び始めるタイプ、

ワルターは、そのものの中に入り込んで、その気になってしまうタイプ、

という結論でした。

(知りたがり屋、遊びたがり屋、その気になりたがり屋、のトリオです。)

そんな感情移入の達人のワルターですが、私たちとの長年のつきあいで
日本を題材にとった作品が、たくさんあります。

ちょっと挙げるだけでも

語りつきの音楽「鶴の恩返し」「ネズミの嫁入り」(ドイツ語、日本語、チェコ語の語りで)
日本語の歌詞による室内オペラ「夕日の耳」(台本・海津勝一郎さんのオリジナル)
オラトリオ「TSUNEMASA」(世阿弥の作品のドイツ語訳による)
尺八との室内楽「オスティナート」「ラメント」「バラード」
ヴァイオリン・パーカッション・コントラバスのための「羽衣の舞」(羽衣伝説による)
新潟民話「稲荷神社の化け榎」「大犬沢の鬼火」(昨年、小出郷にて初演)

彼が日本語を習い始めて数年になります。
このブログにちょくちょくコメントを書いて下さるのーこさんが先生、
そののーこ先生が教材に、谷川俊太郎の詩(「真夜中のミーマウス」だったかな?)
をとりあげ、ワルターが気に入ったのがきっかけで、できあがったのが、
この22日、ハクジュホールで初演をする「A flight of songs」です。

私が選んだのと、彼自身が選んだのと、遊び心がありながら、ちょっと屈折もしており、
また生の声も聞こえてくる全部で9編の詩。

今週はじめ、共演するソプラノの荒巻小百合さんと、チューリッヒのワルターのところで
練習をやりましたが、最初はにじんでぼんやりしているものが、やがて、
霧のなかから浮かび上がってくる・・・、演奏者が面白がるワルターの音楽です。
(一曲、めちゃくちゃ難しいのがあります・・・)

切り詰められた詩の行間にあるものが浮き彫りにされてくるところが、
「いや、なるほどね〜」と間々あって、多分、日本人の作曲家では返って出しにくい、
「狭間の色合い」といったものが出ていると思います。

コンサートでは、日本歌曲(白土文雄編曲)や、カザルスの演奏で有名な「鳥の歌」
(これも白土文雄編曲)などのほかに、もうひとりの友達の作曲家、
前田智子さんが私たちのために書いてくれた「風」という組曲も弾きます。

この前田さんも、また、上に「超」がつく感情移入の達人で、

「鷺娘」(ヴァイオリン・尺八、コントラバス)
組曲「顔」(ヴァイオリン・アコーディオン・コントラバス)
「ミリンダ・パンハ」(ヴァイオリン・尺八・筝・コントラバス)
「櫛」(イザナギ・イザナミの神話から、ヴァイオリン・パーカッション・コントラバス)
組曲「風」(ヴァイオリン・コントラバス)
「ステラ・オブ・あかねM・エンジェル」(ヴァイオリン・ピアノ・コントラバス)
新潟民話「壁の鶴」「水の命」(ヴァイオリン・ピアノ・コントラバスと語り)
「すゑの露」(弦楽合奏と尺八・琵琶・コントラバスのソリストのための)
「無明長夜」(読経とコントラバス)
「すゑの露」(ヴァイオリン・ヴィオラ・尺八・琵琶・コントラバスのバージョンで)
「悲の海は深く」(ヴァイオリン・ソプラノ・コントラバス)

この他にも「日本歌曲」や「サロメ」などの編曲もあり、
知り合いになって8年ほどの間にこれだけたくさんの曲を
私たちのために書いてくださっているのですから、これも、本当に驚きです。

組曲「風」は
「風化」「木枯らし」「月夜の風」「解き放たれた風」、

最後の「解き放たれた風」だけは、前田さんがスイスの山で感じた、
ヤッホー、って叫びたくなる風、なんだそうですが、
「日本の風」、ってこういう色合いなんだ、って思うような曲です。

ヴァイオリンとコントラバス、そしてソプラノだけでの編成のプログラムは今回初めて。
楽しみです。皆様に聞いていただけたら嬉しいです。

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2006/9/12  3:34

投稿者:noriko
長すぎるだなんて、とんでもない。大歓迎です!

クレーの天使、私も見てきました。
並んで隣で見ている見知らぬ人とおもわず微笑をかわしてしまう、心が和みますね。
お茶目な天使達と、画家自身の風貌とのギャップがまた可笑しくって。

2006/9/11  17:09

投稿者:のーこ
前回のコメント、ちょっと長すぎましたね。
すみません。

「クレーの天使」は、谷川俊太郎氏が息子さんの賢作さんのピアノ演奏で、CDを出しています。なかなか素敵です。ベルンの「クレーの天使」特別展にワルターを連れて行けなかったのは今でも心残り。
いつかはベルンのクレーセンターに谷川氏を呼んで、演奏会をしたいですね。賢作さんのピアノと谷川氏の朗読も良いし、ワルターのFlight of songsも勿論素敵だと思います。

2006/9/11  5:16

投稿者:noriko
>感情移入の度合いにより同じ曲でも全く違うものになるんでしょうね
>1度お聴きしてみたいものです

ぜひぜひ、おいでくださいませ!
演奏者の感情移入は、職人のそれと似ていると思います。作曲家の生みの苦しみはありませんが、それでもやっぱり葛藤にまみれてます。


のーこさん
何か書いてくださると思ってました。
初演聴いてもらえないのは残念ですね。

>詩の内容については、本人が辞書と首っ引きで、ほとんど自力で理解していましたが、「笛」と「葉書」はかなり難しかったみたい。

笛、は一曲目ですが、長い詩だし、ちょっと難しいですね。「詩人の独白」という気がします。その分感情移入が難しい。

クレーの天使ね、うん、ぴったり!私も、老後の楽しみにしていましょう。

2006/9/11  4:41

投稿者:のーこ
「夜のミッキーマウス」
懐かしいな。あれは、日本語レッスンを始めるよりずうっと前の話だったような。。。

ワルターの感情移入はとってもヴィジュアルなんです。絵になって、画像になって見えてくる。音楽に姿かたちが表れてくる。で、自分をその絵の中に置く事が出来るんです。自分を取り囲む環境を、作曲を通して、自ら制作してゆく感じがします。彼の曲を聞くと、ビデオでも見るように、私の脳裏に画像が再生されます。果たしてワルターがイメージした絵と同じものか、それを確認するのが、毎回楽しみです。

日本語に曲をつけるとき、彼が最も気にしていたのは、音の高低や、母音の長さでした。日本語は、単語で発音するときと、文の中で発音するときと高低やアクセントが変わるので、それを間違えると、曲になったとき、歌詞が日本語に聞こえなくなってしまう。また、日本語は基本的に4拍子なんですが、それをワルツにするときに、どの母音を伸ばすのが自然か、そんな事を前回の日本行きの前に、徹底して教えたつもりです。

詩の内容については、本人が辞書と首っ引きで、ほとんど自力で理解していましたが、「笛」と「葉書」はかなり難しかったみたい。私も、感情移入が激しいので、自分とワルターの解釈に違いが出てくると、もう先に進めなくなったり、、、色々ありましたね。

ワルター本人も詩を書きますよ。日本語とか、フランス語とか、色々。私は、彼のは、ちょっと、いただけないけど(爆)
詩よりも、絵が上手いです。Paul Kleeとそっくりです。だから、次はPaul Kleeをテーマに作曲してくれないかなぁなんて、思ってて、クレーセンターで買った「クレーの天使」の絵が入ったMoleskinの手帳を、1ヶ月ほど前、彼に与えました。プレゼントじゃなくて、いつか、返して貰うつもりです。五線入りです。私の老後の楽しみ、ね(笑)。

2006/9/10  23:39

投稿者:羅刹龍
感情移入の度合いにより同じ曲でも全く違うものになるんでしょうね
1度お聴きしてみたいものです

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