2017/1/10

大規模経営の“強い農業”と沈黙の水田  ]U格差社会
  =2017 起 upstanding 「労働情報」時評自評=
 ◆ グローバル化の辺境からーその絶望と希望
菅野芳秀(山形・百姓)

 山形県南部、置賜(おきたま)地方の長井市で、コメと自然養鶏を中心にした農業をしています。百姓です。いま、国も県も“強い農業”をと言い、補助金を出して大規模経営をつくろうとしています。
 しかし、その農村からあんなにいたトンボが消えています。トンボだけではありません。小鳥も、スズメも、キラキラと光っていた蜘蛛の巣も、ドジョウも、カエルも少なくなりました。いわば沈黙の水田が現出しています。
 なぜそうなったのか。農民の間では「ドクター○○」という農薬ではないかと言われています。この農薬があれば大規模稲作も可能だ、というわけで、その結果、田んぼは死の世界になっていきました。


 あまりのコメの安さと後継者不足、強い農業づくりとむらの危機。また、赤ちゃけた田んぼと規模拡大。さらに生き物を殺してしまう農法と大規模化など、これらはすべて効率化、低コスト化、大規模化がもたらしたものであり、その背後にグローバリゼーションがあります。

 農業は工場生産ではないのです。
 その地域、その地域の地形、自然条件に適応し、共生しながら田んぼや畑で作物を育てていく。そういうものです。
 すべてお金に置き換えられ、風土による制限とは関係なく価格の安い方が勝っていく。それを世界市場で行っていくということでは、農業は生きられない。その基盤である村は消滅するしかないと思います。

 私はグローバリズムには未来がないと考えています。
 世界市場で勝ち残ったもので作る社会システムがもっとも合理的な社会であるとするグローバリズム。
 結果的に食、エネルギー、医療、水……生きていくのに必要なものすべてを巨大企業に預けてしまう暮らし。
 いまその動きは国境を越えて展開しているわけですが、その経済の物差しに乗れないものたちが壊滅的な打撃を受けている。
 この延長線上には人間社会の未来がないと思います。あるのはその終焉です。

 いま、大きなこころざしをもって、それに対抗する物差し、それに揺るがない持続的地域をつくらなければなりません。
 そのように思う我々の実践が「置賜自給圏」です。
 よく国の自給については語られますが、その前に地域の自給があり、地域自給圏の連合として日本列島が再構成されることが必要です。
 そうなった時、この列島はよみがえるでしょう。
 同時に地域自給圏への試みは日本列島だけでなく、グローバリズムの影響を受けている世界中の地域、人びとに届けられなければなりません。
 われわれの取り組みは非常にローカルなものですが、そこには世界性があると思っています。
 夢みたいな話だと笑う方もいるでしょう。しかし、夢が現実を.変える可能性は決してゼロではありません。ぜひ、取り組みを成功させたい。
 それはTPPという最悪の選択を先導してきた日本の中にいる我々の役割。アジアの人たちに対する責任ではないかとさえ思います。

『労働情報 950・1号』(2017/1/1・15)


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