2017/12/3
文科省が「教育振興基本計画」策定でヒアリング ]Vこども危機
=中教審・教育振興基本計画ヒアリンング=
◆ 日教組・全教が文科省案の"愛国心"や政権政党の政策教化に反論
永野厚男・教育ジャーナリスト
教育振興基本計画策定(改定教育基本法第17条で政府に義務化し、地方自治体にも努力義務化)に向けたヒアリングで、中教審の教育振興基本計画部会が公表した『審議経過』に対し、教職員組合から抜本的見直しを求める意見が相次いだ。
審議経過は冒頭、改定教基法第2条が盛った"我が国を愛する態度"など「教育目標」を明記。伝統文化教育の"深度"に踏み込む記述もした。
文部科学省が2017年10月17日、都内千代田区で開催したヒアリングで、全日本教職員組合(全教)の意見発表者は「国家や一部グローバル企業の求める人材作りを強調する一方、子どもたちの育ち・学びの分析・課題整理は極めて不十分。児童生徒の実態から出発したものとなっていない」と陳述。
審議経過の「主権者教育の推進」は、小中高校とも「社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担うことができる力を発達の段階等に応じて身に付けさせる」と記述。
中学・高校になっても、集団的自衛権行使を是とする戦争法(安保法)や"君が代"強制問題等、「国政」の課題を(政府や政権政党の政策への批判的分析を含め)解決する力を育む大切さに言及せず、「地域」に限定するような書き振りだ。
少なからぬ保守系政治家や教育委員会が、"政治的中立性"を名目に、戦争法(安保法)や"君が代"強制問題など多様な意見に分かれるテーマで、政府や政権政党の政策への反対意見を扱うのを妨げている実態には目を閉ざしているのだ。
これに対し、日本教職員組合(日教組)の発表者は「主権者は今ある社会を肯定し、受容するだけではなく、今ある課題の解決に向けて、社会をより良く変えていく形成者である必要がある」と述べ、全教は「主権者教育は国家や社会のその時々の特定の目的のためでなく、国民一人一人の『人格の完成』のために行われるべき」と語った。
導入決定時の文部科学大臣・中山成彬氏(74歳)が、「日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから」と"日教組対策"を明言し、2007年度から毎年度、小6・中3に悉皆で実施している全国学力・学習状況調査。
これに対し全教は、@都道府県別の平均正答率や順位公表により、教育目標に「全国○位を目指す」などを入れる県、A3月から過去問題のドリル指導を繰り返す学校がある、と実態を明らかにした。
また日教組は、「子ども・学校現場に与える負担・ストレスは大きくなっている」と指摘。「数年に一度の抽出調査にし、少人数学級の推進、教育予算等、教育条件整備の改善を進めるために分析・活用を」と、抜本的見直しを主張した。
一方、審議経過が「義務教育について、様々な事情により十分受けていない人々に対し、年齢等に関わりなく、多様な学習活動の実情を踏まえた教育機会の確保等を進めること」と明記し、前川喜平・前文部科学事務次官や現場教員らが尽力してきた、年齢・国籍を問わない夜間中学校の就学促進などを明記した点は、評価できる。
◆ 日本教育学会等、教育専門家を招かない、文科省の偏向ヒアリング
ところで、17年3月告示の改訂学習指導要領に向けた、中教審・教育課程企画特別部会の計4回の関係団体ヒアリング(16年10月6日〜11月4日)では、文科省は全財界(経済団体)を招いた。経済同友会副代表幹事だった北山禎介(ていすけ)三井住友銀会長(71歳)が中教審会長をやっているのだから、財界は呼ぶ必要はないし、呼ぶとしても絞り込む等すべきなのに、である(【注】参照)。
一方、日本教育学会(広田照幸会長)や日本教育法学会(成嶋隆会長)等の学会は、教育研究の専門家ゆえ、文科省は当然意見聴取すべきなのに、教育課程企画特別部会に続き、今回の教育振興基本計画部会でも一切、招かなかった。
"国を愛する態度"等の国家主義教育や、副校長・主幹教諭増員等の管理統制強化の施策に批判的な意見が出るのを、文科省が恐れ教育関係の学会を招かないのだとしたら、多様な意見を認めない全体主義国と同じである。
今回の教育振興基本計画のヒアリングでも教育研究の学会を招かなかった文科省が、今後もし2回目のヒアリングを実施するなら、心改め教育専門家である学会から意見聴取し謙虚に審議経過の記述を修正していくのか、それとも旧態依然とした態度で排除し続けるのか、が注目される。
【注】 16年10月17日の教育課程企画特別部会ヒアリングで、憲法改悪を掲げ政治活動している、日本青年会議所(JC)は、国家グループ"日本の教育委員会"の矢野徳一委員長が「日本人のルーツともいうべき建国の歴史を義務教育課程でしっかりと学ぶべきであり、・・・祖国を愛することのできる教育の実現を望む」「建国の歴史が物語る日本の国柄を子供たちに伝承していく教育を」などと明記した配布資料を読み上げ、神武神話による"愛国心"教育強化まで主張した(中教審の委員らは他団体には質問したり意見を述べたりしたが、JCへの質問・意見はゼロだった)。
なおJCは15年、さいたま市の中学3校で「日本国民は」で始まる憲法前文に対し、「日本国は『××』であり、『××』であるため憲法を制定する」と空欄を穴埋めさせる等の、"改憲出前授業"を実施している。
『週刊新社会』2017年11月21日号掲載記事に、永野厚男さんが加筆したもの
◆ 日教組・全教が文科省案の"愛国心"や政権政党の政策教化に反論
永野厚男・教育ジャーナリスト
教育振興基本計画策定(改定教育基本法第17条で政府に義務化し、地方自治体にも努力義務化)に向けたヒアリングで、中教審の教育振興基本計画部会が公表した『審議経過』に対し、教職員組合から抜本的見直しを求める意見が相次いだ。
審議経過は冒頭、改定教基法第2条が盛った"我が国を愛する態度"など「教育目標」を明記。伝統文化教育の"深度"に踏み込む記述もした。
文部科学省が2017年10月17日、都内千代田区で開催したヒアリングで、全日本教職員組合(全教)の意見発表者は「国家や一部グローバル企業の求める人材作りを強調する一方、子どもたちの育ち・学びの分析・課題整理は極めて不十分。児童生徒の実態から出発したものとなっていない」と陳述。
審議経過の「主権者教育の推進」は、小中高校とも「社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担うことができる力を発達の段階等に応じて身に付けさせる」と記述。
中学・高校になっても、集団的自衛権行使を是とする戦争法(安保法)や"君が代"強制問題等、「国政」の課題を(政府や政権政党の政策への批判的分析を含め)解決する力を育む大切さに言及せず、「地域」に限定するような書き振りだ。
少なからぬ保守系政治家や教育委員会が、"政治的中立性"を名目に、戦争法(安保法)や"君が代"強制問題など多様な意見に分かれるテーマで、政府や政権政党の政策への反対意見を扱うのを妨げている実態には目を閉ざしているのだ。
これに対し、日本教職員組合(日教組)の発表者は「主権者は今ある社会を肯定し、受容するだけではなく、今ある課題の解決に向けて、社会をより良く変えていく形成者である必要がある」と述べ、全教は「主権者教育は国家や社会のその時々の特定の目的のためでなく、国民一人一人の『人格の完成』のために行われるべき」と語った。
導入決定時の文部科学大臣・中山成彬氏(74歳)が、「日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから」と"日教組対策"を明言し、2007年度から毎年度、小6・中3に悉皆で実施している全国学力・学習状況調査。
これに対し全教は、@都道府県別の平均正答率や順位公表により、教育目標に「全国○位を目指す」などを入れる県、A3月から過去問題のドリル指導を繰り返す学校がある、と実態を明らかにした。
また日教組は、「子ども・学校現場に与える負担・ストレスは大きくなっている」と指摘。「数年に一度の抽出調査にし、少人数学級の推進、教育予算等、教育条件整備の改善を進めるために分析・活用を」と、抜本的見直しを主張した。
一方、審議経過が「義務教育について、様々な事情により十分受けていない人々に対し、年齢等に関わりなく、多様な学習活動の実情を踏まえた教育機会の確保等を進めること」と明記し、前川喜平・前文部科学事務次官や現場教員らが尽力してきた、年齢・国籍を問わない夜間中学校の就学促進などを明記した点は、評価できる。
◆ 日本教育学会等、教育専門家を招かない、文科省の偏向ヒアリング
ところで、17年3月告示の改訂学習指導要領に向けた、中教審・教育課程企画特別部会の計4回の関係団体ヒアリング(16年10月6日〜11月4日)では、文科省は全財界(経済団体)を招いた。経済同友会副代表幹事だった北山禎介(ていすけ)三井住友銀会長(71歳)が中教審会長をやっているのだから、財界は呼ぶ必要はないし、呼ぶとしても絞り込む等すべきなのに、である(【注】参照)。
一方、日本教育学会(広田照幸会長)や日本教育法学会(成嶋隆会長)等の学会は、教育研究の専門家ゆえ、文科省は当然意見聴取すべきなのに、教育課程企画特別部会に続き、今回の教育振興基本計画部会でも一切、招かなかった。
"国を愛する態度"等の国家主義教育や、副校長・主幹教諭増員等の管理統制強化の施策に批判的な意見が出るのを、文科省が恐れ教育関係の学会を招かないのだとしたら、多様な意見を認めない全体主義国と同じである。
今回の教育振興基本計画のヒアリングでも教育研究の学会を招かなかった文科省が、今後もし2回目のヒアリングを実施するなら、心改め教育専門家である学会から意見聴取し謙虚に審議経過の記述を修正していくのか、それとも旧態依然とした態度で排除し続けるのか、が注目される。
【注】 16年10月17日の教育課程企画特別部会ヒアリングで、憲法改悪を掲げ政治活動している、日本青年会議所(JC)は、国家グループ"日本の教育委員会"の矢野徳一委員長が「日本人のルーツともいうべき建国の歴史を義務教育課程でしっかりと学ぶべきであり、・・・祖国を愛することのできる教育の実現を望む」「建国の歴史が物語る日本の国柄を子供たちに伝承していく教育を」などと明記した配布資料を読み上げ、神武神話による"愛国心"教育強化まで主張した(中教審の委員らは他団体には質問したり意見を述べたりしたが、JCへの質問・意見はゼロだった)。
なおJCは15年、さいたま市の中学3校で「日本国民は」で始まる憲法前文に対し、「日本国は『××』であり、『××』であるため憲法を制定する」と空欄を穴埋めさせる等の、"改憲出前授業"を実施している。
『週刊新社会』2017年11月21日号掲載記事に、永野厚男さんが加筆したもの






