2018/1/15

NHKの世論調査は世論操作?  ]平和
 ◆ NHK、自衛隊の長距離ミサイル導入で誘導質問
   〜世論調査は世論操作
(週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト

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12月19日のNHK『ニュース7』

 防衛省が2018年度予算案に戦闘機搭載の長距離巡航ミサイル関連の経費を要求したことなどを巡る、NHK世論調査の質問内容の誘導性・偏りが目立っている。
 NHKは17年12月8日から3日間、全国の18歳以上の2178人対象に、電話(RDD)での世論調査を行い、57%の1248人が回答した。
 NHKは長距離巡航ミサイル導入に関し、賛成側の主張は、@離島の防衛を強化するため、A政府は専守防衛に変わりはないとしている、の2点、具体的に根拠まで明記した問いを設けた。
 だが、反対側については「野党側からは反対する意見も出ています」と、一言触れただけで、具体的根拠を一切紹介しない設問だった。


 案の定、12月11日の『ニュース7』などが報じた調査結果は、「導入が必要だ」が39%で、「必要ではない」の17%の倍以上になってしまっていた(「どちらともいえない」は35%)。

 筆者はNHK広報局宛、反対側の主張の具体的根拠は、例えばB(今回の自衛隊の長距離巡航ミサイルは能力上、北朝鮮も射程内に入るので)北朝鮮への"敵基地"攻撃に使えば、報復攻撃を招き市民の犠牲者が多出する、C予算が膨大――等あるのに、今回NHKが、これらを一切示さぬ質問文で世論調査を行ったのは、放送法の政治的中立性に違反するのでないか等、12月12日夜を期限に答えるよう、HPのフォーム等からメール送信した。
 だがNHKは、質問が到着した連絡以外、無回答だった。

 このため電話で13日午前、誠実に回答するよう求めた。
 するとNHK広報局は13日夕刻、
 (1) @は「長距離巡航ミサイルについて説明するために、記した。この表現を除いて質問すれば、聞かれた方は、何の長距離巡航ミサイルか分からない」
 (2) Aは「政府は専守防衛に変わりはないとしていますが、野党側からは反対する意見も出ています」としたのは、「賛成と反対の意見があることをそれぞれ対等の立場で紹介したつもりです」
 (3) 今回の調査で「長距離巡航ミサイル導入推進を後押しするような意図は、まったくございません」
――などとメール回答してきた(NHK広報局は「職・氏名」を一切記載せず、発信専用なので返信もできない)。

 しかし、(1)で@だけを"説明"すること自体、政府・政権政党に有利になる。(1)の"説明"は、少なくともBの前段を明示して初めて中立性が保たれるのに、NHKは気付いていない。
 また(2)で、本当に「賛成と反対」の両方を「対等の立場で紹介」すると言うなら、最低限、Bの後段に言及する必要がある。"敵基地"攻撃はどう拡大解釈しても憲法9条に違反し、いわゆる「専守防衛」にも反し、かつ報復攻撃を招くからだ。
 回答する人は皆、払税者(タックスペイヤー。いわゆる納税者)なのだから、余裕があればCにも触れるべきであろう。
 筆者が「主張の根拠を、賛成側については@Aの通り明示したのに、反対側は具体的に何一つ示していないので、賛成・推進側に誘導するものだ」と指摘したのに対し、NHKは「そのような意図がない」が、「貴重なご意見として賜り、今後の質問づくりの参考とさせていただきます」と答えるに留まっている。

 ◆ 木造船問題で「不安」問うより、沖縄の米軍用機事件こそ問うべき

 NHKは、この自衛隊の長距離巡航ミサイル導入問題を問う直前に、「相次ぐ、北朝鮮から来たと見られる木造船の漂着に、不安を感じるか」という質問も設定した。
 結果は「大いに不安を感じる」が43%、「ある程度不安を感じる」が38%、「あまり不安を感じない」が12%、「全く不安を感じない」が3%だった。

 このことについて、筆者は「警察力や水産庁の取締船で対応するレベルの木造船漂着問題で、北朝鮮の"脅威"を煽る設問を設定し、次に自衛隊のミサイル問題を問うのは、ミサイル導入賛成の数字を押し上げる意図があるのでは?」
 「電話調査で設問の量が限られているのだから、木造船問題より、米軍用機が普天間基地近くの(沖縄県宜野湾市の)保育園に機体の一部を落下させた事件に、沖縄県民が不安・脅威を感じている事案の質問項目を設けるべきでは?」などと問うた。

 これに対しNHKは「木造船の漂着は、日本の広範囲におよび、多くの自治体、多くの方にかかわっている、より身近な問題と考えたから」「8日時点で、米軍は落下物について、米軍のものではないと否定していた」などの理由を挙げ、「電話調査において・・・どのような質問をするかは、総合的に判断して決めております」と回答してきた。
 確かに、北海道松前町沖の無人島(日本領海内)で窃盗事件を犯した木造船の1隻については、厳しく取り締まるべきだが、今回、北朝鮮の乗組員らは直接、人の生命に危害を与えてはいない。
 一方、米軍機の落下物事案は、罷(まか)り間違えば人に危害を与える(死傷者が出てしまう)危険の高い事案であり、現実に住民の生命を脅かしている。
 沖縄はもちろんのこと、横田基地・厚木基地・岩国基地周辺など、米軍機飛行ルートが広がっている全国の人々にとって、木造船漂着問題以上に、まさに「より身近な問題」=不安どころか脅威なのだ。

 NHKは『日曜討論』などで政府寄りの出演者ばかり出演させ、「北朝鮮の脅威」を煽り続けているが、米軍も住民の安全を脅かす"立派"な脅威と言えよう。
 NHKは世論調査で、世論操作をやってはいけない。政治的意見が分かれるテーマで、政府・自民党の違憲の施策推進に有利な質問項目を設定するのは、今回を最後にすべきだ。

『週刊新社会』(2018年1月16日)
※筆者が3面の掲載記事に加筆したもの。


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